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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
六部・一章 春のホリデー

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謎だらけ

 ミュラー男爵はエア親子について何か重要な情報を握っている。

 けれども警戒心が強く、こちらが探ってもうっかり口にすることはないだろうことは確かだ、というのが私とヴィルの見解であった。


たとえるならば、子育て中の母熊だな」

「本当にその通りかと」


 他から何か情報を探れないのか。模索する必要があるだろう。

 ジルヴィードも何か情報を握っていそうだが……。

 と、ここで思い出す。


「あ!」

「どうした?」

「いえ、ジルヴィード先生から以前、サーベルト大公の姪であるキャロラインのご子息を探している、なんて話を聞いておりまして」

「サーベルト大公の姪の子どもだと?」

「はい。なんでも十七年前から行方不明だそうで、元々は王妃様の侍女をされていたと――」


 ここで気付く。

 もしかしたらエアはサーベルト大公の姪キャロラインの子ではないのか、と。

 ヴィルも同様に察したらしい。


「ならば、レナハルトとエア・バーレは双子ではなく、腹違いの姉弟、というわけなのか?」

「ええ……。その可能性もあります」


 王妃に隠れて国王陛下とただならぬ仲になったが、関係が露見。王宮を追放されたあとエアを出産、その後、人目のつかない場所に隠れ住むという流れであれば不思議な点はどこにもない。高貴な女性が下町暮らしをしていた理由についても納得できる。

 姪の子の父親はうちの国ソレーユの大貴族だ、なんてジルヴィードは言っていたものの、もしかしたらキャロラインがそう言って真実を濁していた可能性もあるのだ。


「しかし、サーベルト大公は今になってどうして姪の子を探し始めたのか」

「ジルヴィード先生がちょうどこの国にいた、というだけでは不可解ですよね」


 助けたい、という気持ちがあるのであれば、連絡がつかなくなった時点で子どもだけでなく姪のキャロラインも探すはずだ。どうにも不可解な点が多い。


「けれどもジルヴィード先生は子どもだけを探していると話していましたので」

「わからないことばかりだな」

「ええ……」


 わからないことと言えば、ヴィルとジルヴィードがそっくりな点も謎である。


「どうした?」

「いえ、その、ヴィル先輩とジルヴィード先生はどうしてそんなに似ているのか、と思いまして」

「ルームーン国と我が国ソレーユの王家は、何度も婚姻を交わしているからな。ごくごく近い血縁関係にあるのだろう」


 ヴィルの母親は親がルームーン国の出身だったという。

 双方の国の仲は決して良好とは言えなかったものの、婚姻を通して互いにけん制し合っていたようだ。


「ジルヴィードやサーベルト大公の動向も気になるのだが……はあ」


 本来であれば私達だけで抱えていい問題ではない。

 ただ、誰を信用して打ち明けていいものか、わからないでいるのだ。

 ホイップ先生以外の大人に相談して、助言を受けたほうがいい、という意見はヴィルと私の間で合致している。

 私の保護者ガーディアンであるレヴィアタン侯爵も信用に足る人物だ。けれどもヴィルが国王陛下に近しい人間だからと却下してしまった。

 もっと中立的な、どこの組織にも属さない者がいいという。


「父も普段は魔法学校の理事長という立場上、善人のように振る舞っているが、裏では何をしているかわからない。悪人だったと言われても、私は驚かないだろう」

「リンデンブルク大公は正真正銘の、善人だと思うのですが」

「どうしてそうはっきりと断言できる?」

「悪人が子ども達のクラブ活動に毎回参加して、エプロンや三角巾を身につけて接客までするとは思えないので」


 そんな主張をすると、ヴィルは眉間に皺を寄せて「うーーーん」と唸る。そんな彼に私はある人物を推薦してみた。


「その、私の父はいかがですか?」

「ミシャの父親――リチュオル子爵か?」

「ええ。他の貴族の影響もないですし、何より口が堅いので」


 ヴィルはしばし考え込むような仕草を見せたあと、いいかもしれない、と言ってくれた。

 

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