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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
六部・一章 春のホリデー

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事件のあとで

 それからというもの、学期末恒例となる終了式をすることなく春のホリデーに突入してしまった。

 生徒達を寮外に集めるのは危険だと判断したのだろう。

 クラスメイト達と学期を終えた開放感を分かち合えなかったのは残念だが……。

 ホリデー中の宿題についても、しっかり鳥翰魔法で届けられた。その辺は学校側も抜かりなかった。

 ラウライフにいる家族には、春のホリデーには帰ると告げていた。ヴィルも一緒だと知らせていたら、父が戦々恐々とした手紙を返してきたのを覚えている。

 これから手紙を送っても、私とヴィルがセイグリッドで飛んで行くほうが早いだろう。

 突然の帰宅となって驚かせてしまいそうだが、どうか私達を許してほしい。


 療養を終えた私は先生の宿舎からガーデン・プラントまで、転移の魔法巻物で移動するように言われた。

 ガーデン・プラント内は何か被害があるのではないか、とドキドキだった。

 ホイップ先生から温室は無事で、モモンガ達にもケガなどないというのは聞いていたが。

 着地点は台所だった。

 恐る恐る外に出てみると、いつもと変わらない光景が広がっていたのでホッとする。

 数日前から熟成させていたパウンドケーキを持って温室に行くと、モモンガ達が出迎えてくれた。

 魔王が復活しかけて怖い思いをしたらしく、私に次々と抱きついてきた。

 しかしそれも一瞬で、パウンドケーキの存在に気付くと貰うために列を成し始めたので笑ってしまった。

 パウンドケーキを食べたモモンガ達はすっかり恐怖も消えたようで、よかったよかったとひと安心。

 これからホリデーで、その期間中はホイップ先生が管理することになると告げると、モモンガ達は途端に残念そうになる。

 ホリデーに備えて以前からお菓子を作り置きしておいたと告げると、皆、安堵の表情を浮かべていた。


 これからの予定はひとまずミュラー男爵へ面会すること。それが終わり次第、ラウライフに帰る予定だ。

 この辺りはすっかり春の景色だが、ラウライフは雪がたっぷり残っていて、春を探すのが難しい状況だろう。

 ヴィルは驚くに違いない。

 ミュラー男爵には昨日の時点で面会したいという旨を書いた手紙を送っている。

 忙しい御方なので返信が届くまでに数日かかるかもしれない。そんなふうに思っていたが、夕方には届いた。

 なんと、明日には訪問していいという。すぐにヴィルに伝え、予定を固めた。

 夜になるとヴィルがやってきて、料理を振る舞ってくれた。

 水で戻した干したタラとひよこ豆のトマト煮込みに、柑橘かんきつを豊かに利かせたチキンソテー、ソラマメのハーブ炒め、デザートは木イチゴジャムのタルトと豪華な夕食である。


「おいしい葡萄ジュースを見つけたから、買っておいた」

「わあ、楽しみです」


 ヴィルが葡萄ジュースをグラスに注ぐと、高級ワインに見えるから不思議だ。

 作ってくれた料理はどれもおいしくって、感激してしまう。

 特に干しタラとひよこ豆のトマト煮込みは絶品だった。


「大変な状況だったのに、お料理まで作っていただいて」

「ミシャのほうが大変だっただろう」

「いえいえ、私は先生の宿舎でお休みするばかりだったので」


 ヴィルは先生相手に状況を報告したり、黒いダイヤモンドを探しにいったりと忙しかっただろう。

 リンデンブルク大公も国の調査団を引き連れてヴィルの話を聞きにやってきたという。

 王太子の証については、やはりホイップ先生以外は気付いていなかったらしい。

 その辺はホッとすべきか。それとも何もかも打ち明けて楽になったほうがいいのか。

 まだわからないことばかりだ。王家側に報告することにより、エアが窮地に立たされる可能性もある。

 今は黙っておくのが正解なのだろう。


「問題はミュラー男爵相手にどのようにして探りを入れるか、ですね」

「ああ」


 最初は遠回しに聞いたほうがいいのだろう。王太子の証についても、伏せておいたほうがいい、とヴィルは考えているようだ。


「ミュラー男爵は短期間で莫大な財を成している。何か目論みがあるかもしれない」


 腹芸は得意ではないので、その辺はすべてヴィルに任せよう。

 そう、決意したのだった。

 

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