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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
五部・五章 ついに迎えた馬術大会!

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控え室にて

 控え室にヴィルはまだいなかった。本人よりも早く駆けつけてしまったらしい。

 紅茶を蒸らしながら待っておこうと思う。 

 ジェムの中に収納していた茶器をだし、薬草茶を淹れた。疲れているだろうから、疲労回復効果が期待できる蜂蜜もカップに垂らしておこう。

 一昨日焼いたスパイスクッキーもソーサーに添えた。

 馬術大会に備えて、いろいろ用意し、ジェムに収納を頼んでいたのだ。

 薬草茶の香りをかぎながら待っていたら、ヴィルが戻ってくる。


「ミシャ、来ていたのか」

「はい、お疲れ様でした。とても素敵でしたよ」


 ヴィルは嬉しそうに微笑んでくれる。

 ちょうど薬草茶も蒸し上がったので、ヴィルに手渡した。


「ミシャ、ありがとう。喉が渇いていたんだ」


 ヴィルは薬草茶をごくごく飲んでいる。そんなに一気飲みするようなものではないのだが……。


「熱くないのですか?」

「平気だ」


 二杯目を注ぐと、それもあっという間に飲み干してしまった。そんなに喉が渇いていたなんて。

 そういえば野外走行クロスカントリーの前は何も飲んでいなかった。あのとき何か飲ませていたらよかった、と後悔する。


「すまない、緊張していて、水分補給を怠っていたようだ」

「緊張されていたのですね。落ち着いているように見えたので、気付くこともできず」


 馬術大会に参加する婚約者を支えるのが仕事なのに、基本的なことができていなかったなんて。


「お腹は空いていませんか? 空いているのなら、出店で何か買ってきますよ」

「いや、大丈夫だ。今は傍にいてくれ」


 そんなふうに言われると照れてしまう。もしかしたら大人しくしておけ、という意味かもしれないが。羞恥心を隠すためにヴィルに先ほどの野外走行クロスカントリーについての話を聞いてみる。


「今日のコースはいかがでしたか」

「よくはなかったな」


 なんでも明け方に雨が少し降ったようで、水たまりがいくつかできていたようだ。

 ただヴィルの白いズボンには泥は一つも付着していなかった。上手くビアンカと共に走って、汚れないように努めたのだろう。


「強い日差しがさし込む場所もあったから、他の参加者も走りにくかったはずだ」


 落馬した生徒が出た辺りは太陽光がさんさんと輝いていたため、視界が一瞬奪われるような場所だったらしい。


「今の時間はもう大丈夫だろうが」


 ほんの数名の生徒が走る間だけの太陽の悪戯いたずらだったようだ。その時間帯に当たった生徒達は気の毒としか言いようがない。


「現時点で一位だそうですよ」

「そうだったのか」


 記録は気にせず、私が控え室にいるかもしれないと思って大急ぎで戻ってきたらしい。


「勝利を贈るとか言っておきながら、記録を気にしていなかったなんて、恥ずかしい話だな」

「そんなことないですよ。無事、競技を終えただけでも私は嬉しいので」


 それにしても、二位と大きく差を離して一位になっている。


「このままいけば、もしかしたら野外走行クロスカントリー部門で優勝かもしれないですよ」

「まだ何十人といるから、わからないだろうがな」


 野外走行クロスカントリー部門、障害部門、二つの競技の成績を足し、合計で決める総合部門の三つがある。ヴィルはどれかで優勝しそうだ。


「障害は午後からでしたっけ?」

「そうだな」


 学校行事であるため、野外走行クロスカントリーの距離や障害の数など、公式競技の三分の一以下の規模でやっている。そのため一日で終えることができるようだ。


「そういえば果物サンドの販売はどうだったか?」

「おかげさまで完売したようです」

「それはすごいな」


 ヴィルも暇があれば接客するつもりだったらしい。もう売り切れたと聞いて、少し残念そうにしていた。

 嬉しそうに話を聞いていたヴィルが、ふとした瞬間に真顔になる。


「ミシャ、何かあったのか?」

「え?」

「顔にでていた」


 果物サンドの話題になり、ルドルフとリジーについて思い出してしまったのだ。

 別に隠すつもりはなかったので、事情を打ち明ける。


「あいつら、まだ諦めてなかったのか」

「ええ……」


 リンデンブルク大公が後始末をしてくれるというので、心配いらないだろう。


「そうだな、父に任せていたらあの男もただではいられない」


 ひとまずこの件は忘れることにして、ヴィルは競技に集中していただきたい。

 

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