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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
五部・五章 ついに迎えた馬術大会!

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クロスカントリー

 野外走行クロスカントリーのコースには観客がズラリと囲むように集まっていた。

 生徒は家族全員招待していいことになっているので、かなりの人混みとなっている。

 コース以外にも、メイン会場となっている校庭には座席が用意され、野外走行クロスカントリーを見ることができる巨大水晶が設置されていた。通信魔法を用いて走行している様子を映し出すようだ。

 婚約者が参加者となっている生徒は出発地点の近くに特別席が用意され、そこから応援できる。

 特別席にも大きな水晶が置かれる他、個人に小さな水晶が配られ、自分の婚約者の走行をリアルタイムで見ることができるのだ。

 私も水晶に映し出そうとしたら、ジェムが膝の上に乗って映像を映し出してくれた。


「あら、いいの?」


 問題ない、とばかりにジェムはピカッと輝く。

  水晶で見るよりも鮮明な映像を映し出していた。ジェムに感謝しつつ、ヴィルの応援しよう。

 すでに始まっているようで、時間差を付けながら次々と走りだしているようだ。

 魔石馬を操って走る生徒が通るたびに、ワッ!! と歓声と応援する声があがっている。

 野外走行クロスカントリーというのは長距離を走りつつ、十カ所ほどの水たまりや丸太、溝などを魔法の補助なしで飛び越え、速さを競う競技だ。

 この競技には〝最適速度〟というものがあり、早すぎても遅すぎてもダメだという。また優雅さも採点の対象となり、魔石馬や生徒の服に泥がわかりやすく付着していたり、焦った様子を見せたりなど、振る舞いやゴール地点での状態も重要になるようだ。

 特別席に行くと、三十名ほどの女子生徒達が座っていた。

 婚約者の応援に本気になっているようで、映像を流す水晶を食い入るように見ながら「やれ! やれ! 走れ!」と熱が入った様子でいる。


 順調に進んでいるように見えたが、途中の深い空濠からぼりに足を取られて落馬してしまった。


「きゃああああああああああ!!!!」


 落馬した生徒の婚約者だと思われる女子生徒が、顔を真っ青にさせながら悲鳴をあげる。

 すぐに助けが入り、魔石馬も連れ出される。

 落馬した生徒は普通に歩いていたので、大きなケガはなさそうだ。

 先生がやってきて、落馬した生徒のもとへ案内すると言われたため、女子生徒は飛びだしていった。


 馬術は危険が伴う競技だとわかっていたが、ああして落馬する場面を見ると心配になってしまう。

 どうか無事にゴールできますように、と祈りを捧げることとなった。


 三名ほど出発を見送ったあと、ヴィルの番となる。


「リンデンブルク監督生長ハイ・プリーフェクトだわ」

「まあ、なんて勇ましいの」

「素敵ですわ」


 他の生徒が走り出すときは無反応だったが、ヴィルは出発地点にやってきただけで賞賛の声があがる。


「あら、リンデンブルク監督生長ハイ・プリーフェクトの婚約者はいらっしゃっておりませんの?」

「出店を出されているみたいで、忙しいのでは?」

「まあ! こんな日まで働かないといけないなんて、自費生フォリナーって大変なのね」


 私の影が薄いからか、存在を認知されていないようだ。

 普段ももしかしたらヴィルの輝きに呑み込まれて、周囲の人からは見えていない可能性がある。

 まあ、目立っていいことはないので、自分自身の存在感のなさに感謝しておこう。


 出発を知らせる旗が揚げられると、ヴィルは魔石馬を走らせる。

 ヴィルの愛馬であるビアンカは調子がいいのか、毛並みはつやつやで瞳もきらりと輝いていた。

 最初の障害は薔薇の生け垣だ。馬術大会のために育てられたものらしく、白い花が美しく咲き誇っている。

 ヴィルは上手く魔石馬を操り、見事に飛び越えた。

 続けて先ほど落馬した生徒が出た空堀が見えてくる。

 どうか乗り越えられますように――!

 ドキドキして見ることができない。

 ぎゅっと目を閉じてしまったが、わあ! という歓声を聞いて成功したのだとわかった。

 その後もヴィルは順調に走っていき、無事にゴールする。

 タイムは現時点で一位だった。

 好成績よりもヴィルがケガなくゴールできたことに安堵する。

 もちろん、一位でゴールできたことも嬉しいが。

 控え室に行ってもいいようなので、向かうことにした。

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