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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
五部・五章 ついに迎えた馬術大会!

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妨害工作

「言われたとおり、ミシャが出店する店で使う品の買い付け先を調べて、全部買い取ってきたんだ! でも、別の果物を用意していたみたいで――いや、本当だって!!」


 聞き捨てならないような会話が聞こえてくる。

 注文していた瓶詰めの果物が買えなかった件について、不思議としか思えなかった。

 どうやらリジーの妨害が入っていたとは……。


「どうした?」


 ヴィルかと思ってびっくりしたのだが、振り返った先にいたのはリンデンブルク大公だった。これまであまり意識していなかったが、親子は声が似ているようだ。


「何かあったのか?」

「いえ、それが――」


 その問いかけに答えるように、ルドルフの声が響き渡る。


「だったらリジーに証拠として見せるから。店主に無理を言って購入した、ミシャが買うはずだった瓶詰めの果物のすべてを!!」


 そんなルドルフの訴えを聞いたリンデンブルク大公は、険しい表情を浮かべる。


「どういうことだ?」

「会話を盗み聞きしていただけですので、事情をはっきり把握していたわけではないのですが、私達が果物サンドに使うはずだった瓶詰めの果物を買い占めたのは、ルドルフ先生だったようです」


 もちろんリジーの指示のもと、という情報も付け加えておく。


「この一件については私に任せるように」

「はい、わかりました」


 ルドルフは盗聴されているとは気付いておらず、怒っているものと思われるリジーを窘めていた。


「まったく、生徒の手本とならなければならない者がこのような行為を働くなど、呆れた話だ」


 リジーとルドルフの妨害工作について、まずはホイップ先生に報告すればいいのか、と考えていた。けれどもリンデンブルク大公に任せていたら、間違いないだろう。

 ルドルフにはそれなりの処罰が与えられるに違いない。

 それにしても、リジーがあのまま引き下がるとは思えなかったのだが、まさかルドルフを使って嫌がらせを企むとは思いもしなかった。

 ルドルフもルドルフで、リジーから酷いことを言われてあっさり捨てられたというのに、いまだに言うことを聞くなんて、お人好しとしか言いようがない。

 もしもこのままルドルフが免職処分となった場合、野放しになった彼が新たなトラブルに巻き込まれる可能性もある。

 リンデンブルク大公にこの後のルドルフの処分について聞いてみた。


「あの、ルドルフ先生はどうなるのですか?」

「通常であれば、即座に免職処分となるだろう」

「おそらくですが、彼はリジーの言いなりになっていただけで、彼自身が私を妨害しようなどと考えているわけではないと思うのです」

「なぜ、この男を庇う? 元婚約者だからか?」


 ルドルフが元婚約者であることなどリンデンブルク大公に報告した覚えはない。

 きっと私については調査し尽くされているのだろう。


「違います。彼はこのとおり酷くお人好しで、主体性のない人で、他人の言いなりになってしまう悪い癖がありまして」

「何が言いたい?」

「つまり、外の世界に野放しにしていたら、新たな火種を産みそうで、恐ろしいのです」


 まだ魔法学校の教師見習いとして所属させておいたほうがマシだと思っている。


「たしかに、そのような男かもしれん。ただ、生徒を害するような教師をここに置いておくのもまた問題だ」


 免職になった場合、ルドルフをリンデンブルク大公家に置いて、しばし監督させておく。

 そう、リンデンブルク大公は約束してくれた。


「心配しないように」

「ありがとうございます!」


 ホッとしたのもつかの間のこと。どうしてルドルフのために頭を下げなければならないのか、と腹立たしい気持ちになってしまった。

 もういい、彼のことについては忘れよう。

 このあとヴィルの野外走行クロスカントリーが開始されるので、会場に行かなければ。そう思ってリンデンブルク大公と別れたのだった。

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