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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
五部・四章 馬術大会に向けて

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エアの悩み

 朝、エアが「おはよう!」と挨拶をしてくれたのだが、いつもより嬉しそうな様子に気付く。


「エア、何かいいことでもあったの?」

「馬術大会におじさんが来てくれることになったんだ」

「まあ、そうだったの。よかったわね」

「ああ!」


 少し前にエアから馬術大会に後見人であるミュラー男爵を誘ったほうがいいのか、と相談を受けていた。なんでも会いたい気持ちはあるものの、忙しい人だし馬術大会に出るわけではないから招待するのは気が引ける、と悩んでいたのだ。

 そんな彼に私は考えていることをすべて伝えた上で誘えばいい、と助言したのである。


「おじさん、喜んでた。こんなに嬉しそうにしてくれるんだったら、もっと早く誘えばよかったなって。馬術大会の日に予定があっても、それをキャンセルして俺のところに来てくれるような人だから」

「次からはすぐに誘えばいいわ」

「そうだな!」


 エアとミュラー男爵の関係も変わりつつあるのだろう。これからもいい方向に進めばいいな、と思った。


「それにしても、おじさんと母さんって、どんな関係だったんだろう」


 私が触れないようにしている話題を、エアはズバリと口にする。


「血縁関係にはないし、俺ともそんなに頻繁に会っていたわけじゃないし、何かあるとしたら母親絡みなんだよなあ」

「おじさんについて、エアのお母さんは何か話していたことってあったの?」

「いーや、なかったと思う。たまにおじさんが花を持って見舞いにやってきていたんだけれど、母さんは早く帰るように言うばかりで……」


 話を聞いていると人目を忍ぶような関係だとしか思えないのだが、エアの目から見た二人には気まずさしか感じなかったという。


「いろいろ考えすぎて、おじさんが俺の本当の父親なんじゃないか、なんて考えも浮かんできてさー。でも俺、おじさんにまったく似ていないんだよなー」


 たしかに、エアとミュラー男爵はまったく似ていない。ただ、似ていない親子なんて星の数ほどいるわけで……。


「その辺もおじさんに聞いてみたいんだけれど、聞いたらおじさんを傷つけてしまいそうで」


 怒られそうで、とか言わない辺り、エアは偉いと思った。


「少し前まで、おじさんが思い詰めたような表情を浮かべる姿をよく見ていたんだ。なんか心に大きな傷を抱えてそうで、気の毒でならなくて」


 その心の傷がエアの母親に由来するものであるのならば、安易に話など聞けるわけがない。そのため、エアは自らの疑問に蓋を閉じていたのだ。


「まーでも、最近のおじさんは前よりも雰囲気や空気がやわらかくなっているから、今はそれでいいやって思うようにしているんだ」

「そうだったのね」


 ただ、エアの母親とミュラー男爵の関係についてはエアの中で大きな疑問なのだろう。

 何かいい調査方法などないのか、と考えた瞬間、あるアイテムについて思い出す。


「そういえば購買部に、〝親から引き継いだものを調べられる検査キット〟というアイテムがあるの。それを使ったら、親子でない場合は調べられなかったはず」

「へえ、そんなものがあるんだな! でも、そういうのって高いんじゃないのか?」


 ご名答である。

 購買部の中でもガラスケースで在庫が管理されている、高価なアイテムなのだ。

 値段は記憶していないが、けっこう高いな、という感想を抱いた記憶だけは残っている。


「私、購買部で使えるアイテム引換券を持っているの。それを使えばいいから」

「でも、ミシャが欲しい品があるんじゃないのか?」

「いいえ、ないわ」

「なくても、今後使うかもしれないだろう?」


 エアは次々と正論をぶつけてくる。

 こうなったら最終手段だ。私の熱い想いをぶつける。


「私が気になっているのよ。夜も眠れないくらいに」

「ええ!? なんでミシャがそこまで気にするんだよ」

「だって、普通じゃないでしょう? 他人の子を養子にしたいと言ったり、熱心に支援してくれたり、学費が高額な魔法学校に入学させてくれたり。絶対、エアのお母様とただならぬ関係にあるのよ。そうに違いないわ」


 ここまで言っていいものか、と思ったものの、すべてぶちまけてみた。


「ミシャもそこまで気にしていたなんて、知らなかった。俺だけの問題じゃなかったんだな」

「そうなのよ」

「わかった。ミシャがそこまで言うのならば、お言葉に甘えて、アイテムを使って調べてみよう」

「そうこなくっちゃ!!」


 そんなわけで、私とエアはお昼休みに購買部へ行く約束をしたのだった。 

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