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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
五部・四章 馬術大会に向けて

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慈善市に参加しよう

 慈善市当日――朝から鳥翰魔法が届く。差出人はノアだった。

 なんでも昨晩から熱があるようで、それでも外出しようとしていたようだが、寮母メイトロンに発見されて阻止されてしまったらしい。

 お医者様の診断を受けたところ、風邪だという。薬を飲んでゆっくり休んだら治るくらい軽度のものとのことで、心配しないようにと書かれていた。

 そんなわけで、今日はエルノフィーレ殿下と一緒にマシュマロヌガーの販売を頑張るしかないようだ。

 ジェムはこぼした水のように薄く広がっていた。


「ねえジェム、今日、慈善市に行くけれどどうする?」


 人が多い場所だというのも伝えておく。お留守番かと思いきや、やる気を示すように球体に戻った。


「え、行くの?」


 もちろんだ! とばかりにチカチカ輝く。

 ただ、王都の人込みにバランスボール大のジェムを連れてったら目立ちそうだし、慈善市の売り場ではスペースを占拠しそうだ。

 ダメ元でお願いしてみる。


「ねえジェム、小さくなれる?」


 ジェムは返事をするようにぽん! と飛び跳ねると、拳大くらいの大きさに縮んだ。

 そして私の肩に飛び乗ってくる。

 重たいのでは? と思ったものの、重量は感じなかった。


「ジェム、偉いわ」


 褒めると嬉しそうに左右に揺れていた。


 馬車乗り場に向かうと、エルノフィーレ殿下が侍女と一緒に佇んでいた。

 ノアの事情を説明すると、冬のこのシーズンはよくあることだろうと言ってくれる。

 王都の中央街行きの馬車がやってきたので、エルノフィーレ殿下と一緒に乗り込んだ。


「ミシャ、そういえばマシュマロヌガーの在庫はどうしたのですか?」

「現地に送っているので、到着しているはずです」


 購買部から荷物を送ることができるのだが、便利なことにイベントなどにも対応しているのだ。

 ジェムの中に収納することもできるのだが、口から出てきた食べ物に驚かれるかもしれないと思い、荷物として送ることに決めた。


 現地にはすでにたくさんの出店者がいて、ドレスを着た貴族から商人らしい人達まで幅広い人達が参加するようだ。

 私達のスペースにはすでにマシュマロヌガーが入った籠が届けられていたのだが、それだけではなかった。


「まあ、アリーセから差し入れですって!」


 いったい何を送ってくれたのかと開いてみたら、猫の絵が刺繍されたエプロンが四枚入っていた。そこには〝ヴァイザー魔法学校公認・料理クラブ〟という文字もある。

 一枚は予備だと書かれてあった。


「素敵なエプロンですね」

「ええ、本当に」


 なんとアリーセは部員全員分のエプロンをオーダーメイドで注文したらしい。

 魔法学校の制服は汚れなども弾き飛ばすことから、エプロンなどかけていなかったが、次回から着用したい。


 箱にはそれだけでなく、猫柄の布で作られた三角巾も入っていた。

 これを王女殿下に着用していただくのか、と思ったものの、エルノフィーレ殿下は気にする様子もなく手に取っていた。


「清潔感のある格好で、いいかもしれませんね」


 どうやら問題ないようで安堵する。


 私も三角巾とエプロンを手に取ろうとした瞬間、料理クラブの販売スペースに誰かがやってきた。

 まだ開店できるような状態ではないのだが――なんて思った瞬間、まさかの人物に驚く。

 リンデンブルク大公だった。


「り、理事長、どうかなさったのですか!?」

「ノアが病欠すると聞いて、代わりにやってきた」


 まさかノアの代わりに父親であるリンデンブルク大公がやってくるなんて。

 大丈夫ですと言ったものの、手を貸すと言って聞かない。エルノフィーレ殿下は淡く微笑んでいたものの、内心動揺しているに違いない。

 まさか売り子をするつもりなのだろうか。いやいやまさか。

 きっと監督するために、どこかで見守るだけだろう。


「この仕着せを着用するのか?」


 リンデンブルク大公はあろうことか、かわい過ぎる猫のエプロンと三角巾を手に取っていた。 

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