選択授業について
私の将来の夢である国家魔法師は、国内で起きた魔法が絡んだ事件の解決に奔走する魔法のエキスパートであり、また魔法使いとしてはエリート職でもある。
臨機応変に魔法に関わる事件の解決に奔走するため、広い範囲の魔法を学ぶ必要があるのだ。
先ほどホイップ先生が指導した〝魔法薬草学〟――これは魔法薬師になるために必要な科目だ。
ヒール薬草探しに出かけたクラスメイト達を待つ間、ホイップ先生から「国家魔法薬師にならない~?」なんてスカウトされたものの、私がなりたいのは国家魔法師である。お断りをすると残念そうにしていた。
これ以外にも、専門的な授業がある。
戦闘に必要な魔法を習得できる〝攻戦魔法学〟、〝防戦魔法学〟――これらは魔法騎士になる人が必要とする科目だ。
あとは卑金属の加工を行ってさまざまなアイテムを作成する〝錬金術学〟、〝魔導工業学〟――この授業は言わずもがな、錬金術師になるために必要な科目だ。
他にも魔力で体を強化させて戦う〝魔法体術〟、精霊や妖精の使役を学ぶ〝妖精・精霊召喚学〟、ありとあらゆる魔法生物について学ぶ〝魔法生物学〟、〝魔法倫理〟など、多種多様な専門授業があるのだ。
二学年は選択授業の他にクラス全員で魔法について学ぶ〝総合魔法〟と〝魔法史〟の授業があるため、あれもこれもと選択授業を取ることはできない。
多くても四科目くらいが限界だろう。
国家魔法師に必須な科目は〝防戦魔法学〟と〝魔法倫理〟だ。
それ以外にどの授業を取ろうか悩みどころである。
同じ国家魔法師を目指すエアは、すでにどの授業と取るか決めているようだ。
「俺は必須の〝防戦魔法学〟と〝魔法倫理〟の他に、〝攻戦魔法学〟と〝魔法体術〟にしようかなって思ってるんだ」
国家魔法師は魔法を扱う犯罪者を相手に戦うこともあるので、魔法騎士レベルの戦闘能力を持っていたら採用側も頼もしく思うだろう。
「国家魔法師の試験を落ちたら、魔法騎士の試験も受けられるしな」
「その手があるわね」
「まあ、魔法騎士を目指している奴には、何を甘いことを言っているんだって言われるかもしれないけれど」
魔法騎士はクラブ活動もあって、真剣に目指している人は一学年のときから入部し、従騎士の位を授かれるのだ。
「俺は別に魔法学校の卒業後から従騎士をはじめても構わないからな」
とにかくエアは一刻も早く保護者であるミュラー男爵から独立したいようだ。
「俺さ、おじさんのお荷物になりたくないんだよ。きっと俺がいるから、結婚とかしてないと思うし」
「そんなことはないと思うけれど」
ミュラー男爵はエアを心から大切に思い、支えたいと思っているような人だ。エアがいるから結婚しないなんてことはないだろう。
「そうだわ! ミュラー男爵を馬術大会に誘ったらいかが?」
「おじさんを?」
「ええ」
馬術大会は保護者に限り、招待することができるのだ。
「俺、参加しないのにわざわざ来てもらうのは悪い気がするけれど」
「そうだけれど、招待してもらったらミュラー男爵は嬉しいはずよ」
「でもさー、忙しいだろうから」
「いいからいいから!」
忙しかったり興味がなかったりしたらこないだろうし、ダメ元で送るだけ送ればいいのだ。
「私もレヴィアタン侯爵夫妻をお誘いしたら、とっても喜んでくれたわ」
「そうなのか?」
「ええ。招待してもらえるのって、特別で嬉しいことだと思うの」
「だったら、手紙を送ってみようかな」
「ええ!」
ミュラー男爵とは年末にあったホリデー以来会えていないらしい。
言葉を交わすいい機会になりそうだ。




