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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
五部・三章 新しいことを始めよう!

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ランチを

 それからとんとん拍子で話が進み、見事、料理クラブの活動は認められた。

 なんと、クラブ舎は予備で用意されている貴賓をもてなすお茶などを用意する簡易厨房を貸してもらえることとなった。

 簡易厨房と言っても侮るなかれ。ピカピカで立派な設備に飲食も可能とする広い調理スペースもあって、活動するには充分過ぎる場所だったのだ。そんなクラブ舎が顧問であるリンデンブルク大公によりもたらされた。

 そう、リンデンブルク大公は料理クラブの顧問を引き受けてくれたのである。

 ヴィルが頼み込んだらあっさり了承してくれたらしい。きっと名前を貸してくれるだけだろうと誰もが思っていたのだが、こんな立派なクラブ舎まで用意してくれるなんて。

 リンデンブルク大公を顧問にしようと提案してくれたヴィルに、盛大に感謝したのは言うまでもない。


 レナ殿下の勧誘について、ヴィルに聞いたところ国王陛下に相談してくれたらしい。

 その結果、毒が盛られていた件については言わないでほしい、という返答があったようだ。

 クラブ活動自体は問題なく、応援もしてくれるという。

 私やヴィル、校長先生にリンデンブルク大公までもが知っている情報をもっとも近しいレナ殿下に知らせないなんて、あんまりではないかと思った。

 けれども知ったら知ったでレナ殿下は心置きなく学校生活を楽しむことができなくなるだろう。この辺は国王陛下の親心なのかもしれない。


 何はともあれ国王陛下の許可が取れたので、登校時にレナ殿下を料理クラブへと誘ってみる。


「あのね、私、エルノフィーレ殿下が作った料理クラブに入部したんだけど、他にもヴィル先輩やノア、エアにアリーセも所属していて」

「へえ、それは楽しそうだね」

「そうなの。それでよかったらあなたもどうかと思って」

「私も、か?」

「ええ! きっと楽しいと思うの」


 突然の勧誘にレナ殿下は驚いた表情を浮かべていたものの、活動内容を聞いたあと入部を決めてくれた。


「料理などしたことがなく、あまり貢献できるとは思えないのだが」

「大丈夫よ。私とヴィル以外、料理未経験者ばかりだから」


 それを聞いて安心したらしい。


「今日の放課後、第一回の活動があるの。軽くオリエンテーションをしたあと、スモアっていうマシュマロを使ったお菓子を作るのよ」


 急なお誘いだったが、活動時間が三十分くらいだと言うとレナ殿下も参加してくれるという。


「顧問はどの先生なんだ?」

「リンデンブルク大公なの」

「それはそれは、大物を捕まえたな」

「そうなの。ヴィル先輩のお手柄よ」 

「さすがだ」


 今日、ヴィルはソフト軟禁から解放されて登校しているはずである。

 昼食も一緒に食べる予定だ。


「放課後を楽しみにしておこう」

「ええ!」


 レナ殿下も部員として加わり、料理クラブのメンバーは七名となったのだった。


 ◇◇◇


 お昼休憩を知らせる鐘が鳴ってしばらく経つと、教室がざわつく。

 何かと思ったらヴィルがやってきたようだ。

 私と目が合うととてつもなく嬉しそうな笑みを浮かべ、手を振ってくれる。

 いつも通り中庭に集合とか言っていたのに、迎えにきてくれたようだ。

 私は慌てて壁に張り付いていたジェムをぺりぺり剥がして小脇に抱えると、ヴィルのもとへと急ぐ。


「あの、教室までやってくるなんて、どうしたんですか?」

「一刻も早くミシャに会いたくて」


 その言葉を聞いたクラスメイトが、顔を真っ赤にしてきゃー! と悲鳴を上げている。

 ヴィルはそれを気にも留めずに私の手を取り、エスコートし始めたのだ。

 注目をこれでもかと浴びてしまい私も恐怖の意味でのきゃー! という悲鳴をあげたかったが、あまりにも嬉しそうにしているのでぐっと堪えた。


 中庭にはヴィルが用意したと思われるお弁当のバスケットを抱えるリス軍団がいた。

 なんでもヴィルの教室から中庭に運んでくれたらしい。

 誇らしげな様子でいる彼らに、お礼用に用意していたクルミをあげた。

 本日のお弁当は積み重なったパンケーキである。ヴィルが魔法で温めると、焼きたてのようにほかほかになった。そんなパンケーキにバターを載せ、上から蜂蜜をたっぷり垂らす。


「うう、おいしそう! いただきます!」


 ナイフとフォークで切り分けて頬張る。バターのしょっぱさと蜂蜜とパンケーキの優しい甘さが口の中いっぱいに広がった。


「幸せ~~~~~!!」


 ヴィルがじっと見つめていることに気付いてしまい、恥ずかしくなる。


「あの、ヴィル先輩も召し上がってください!」

「私はこうしてミシャを見ているだけでお腹いっぱいになる」

「またまた、お戯れを言ってから」


 そんな会話をしつつ、パンケーキを堪能したのだった。

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