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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
五部・三章 新しいことを始めよう!

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夜が明けて

 朝――今日も契約している鳥のさえずりで目を覚ます。

 ジェムが毛布みたいに私の上に被さっていたので驚いたが、ブランケットを蹴り飛ばしていたようで、寒かろうにと思って温めてくれたのだろう。

 感謝の気持ちを伝えると、ジェムは球体に戻り、礼には及ばないと言わんばかりの態度で控えめにチカチカ光っていた。


 窓を開いて小鳥たちに木の実などを与えていたら、窓辺にバスケットが置いてあるのに気付く。なんとヴィルが作ったお弁当で、王城から魔法生物に運ばせたらしい。

 お弁当が冷めないよう、保温魔法がかかっているようで、触れると温かかった。

 中にはカードが入っていて、国王陛下に謝ることができたと書いてあった。

 やればできるではないか! と心の中で絶賛する。

 なんでも週明けには登校する許可がもらえたとのことで、仲直りの成果ではないかと思った。

 と、お弁当と手紙に感激している場合ではない。レナ殿下がやってくる前に朝食作りをしなければ。

 一品目は芽キャベツのチーズオーブン焼き。

 半分にカットした芽キャベツに塩コショウ、チーズを振って焼くだけ。

 二品目はカブとベーコンのスープ。

 材料を一口大に切り分け、煮込むだけのシンプルな一品。

 三品目はオムレツのオランデーズソース添え。

 とろとろフワフワに仕上げたオムレツに、特製のオランデーズソースをかけた一品。

 パンは買い置きの丸パンをバスケットに入れて、食卓においておく。

 料理はワンプレートに盛り付けて完成だ。

 ちょうどいいタイミングでレナ殿下がやってくる。


「ミシャ、おはよう」

「おはよう」


 今日もレナ殿下は爽やかである。挨拶を交わし、家の中へとお招きした。


「今日の料理もおいしそうだ」

「たくさん召し上がれ」


 楽しく会話をする中で、ふと思いつく。

 レナ殿下も料理クラブに誘ってみてはどうかと。しかしながらすぐに気付く。

 そういえばレナ殿下は国王陛下に毒が盛られていて、解毒効果を付与できる魔法が使える私が料理を用意していることなんて知らない。

 いい加減、彼女が知っていてもいいのではないかと思っているのだが……。

 ただ、この問題については私が軽率に喋っていいものではないだろう。

 レナ殿下をお誘いするのは、ヴィルに相談してからのほうがいいのかもしれない。


「ミシャ、どうしたのだ?」

「あ、いいえ!」


 なんでもない、と誤魔化せるような沈黙ではなかっただろう。

 何か別の言い訳がないかと考えたところ、ちょうどいいことがあったので打ち明けてみた。


「えーー、ほら、今日、試験の成績は貼り出される日だから、どうだったかなってドキドキしてしまって」

「そういえばそうだったな」


 あんなに勉強をしたのは魔法学校の受験以来である。

 成果が出ていたらいいなと思った。

 と、そんな話で誤魔化すことができたので、額の汗をこっそり拭ったのだった。


 登校すると、すでに成績表が掲示板に貼り出されていた。

 一学年の生徒数は二百名。

 ここに貼り出されるのは上位百五十名のみ。つまりここに名前がない者達はワースト五十位のメンツに仲間入りしてしまうのだ。

 正直、成績が下の下、ギリギリで合格したであろう私の名前があるとは思えない。

 けれどももしかしたら、という希望と共に確認してみる。

 第一位はレナ殿下のようだ。あっという間にたくさんの人に囲まれ、賞賛の声が集まっている。


「うわ、すごっ、アリーセ四位じゃないか!」

「エアじゃない」

「ミシャ、おはよう」

「おはよう」


 偶然私を発見したらしく、一緒に名前を探してみることにした。


「なあ、ミシャ、俺達の名前、あると思うか?」

「あったらいいわね」


 お互い、一緒くらいの学力で入学したので、あるとしたらさほど順位に差はないだろう。


「エア、後ろのほうから探さない?」

「そっちが早いかもな」


 ドキドキしながら順位と名前を見ていく。

 百五十位から遡ってみると――。


「あ、あった!!」


 なんと、エアは百四十位だった。


「待って! すぐ隣に私の名前もあるわ!」

「本当だ!」


 私は百三十九位だったようだ。まさか仲よく並んでいたなんて。


「ミシャすごいじゃないか!」

「エアあなたもすばらしい成績だわ!」


 お互いの頑張りを称え合う。

 まさかの好成績で試験を終えていたようだ。

 もちろん、私達にしてはだけれど。


「よーし、次はもっと順位をあげるぞ!」

「もっともっと頑張らなければいけないわね」

「ああ」


 思いのほか、成果が目に見える形で残った試験となったのだった。

 

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