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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
五部・二章 とんでもない騒動

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王宮へ

 廊下の掲示板がある辺りに人だかりができていた。何か貼りだされているのか、と思って近づく。するとそこには一ヶ月後に開催される乗馬大会の参加者募集のポスターが貼られていた。

 ポスターに描かれているのは、すでに卒業した去年の優勝者らしい。

 馬に跨がり、勇敢な姿で描かれている。

 乗馬大会と聞いて普通の馬で参加するものだと思っていたが、ユニコーンのような姿をした魔法生物、魔石馬に乗って競技を行うようだ。

 詳しい情報は生徒手帳に共有されているというので、帰ったら読んでみよう。

 帰宅後、モモンガ達を労い、お菓子を配ったあと、椅子に座ってぐったりうな垂れてしまう。

 試験疲れとジルヴィードとの会話疲れが一気に襲ってきたようだ。

 ジルヴィードとのやりとりを思い出すだけで頭が痛くなる。

 百歩譲って婚約破棄するのはいい。だって、私はヴィルとつり合っていると思えないから。もしも運よく結婚できたとしても、茨の道となるだろう。

 いくらヴィルが私がいいと望んでも、周囲は絶対に認めないだろうから。

 結婚は同じ家柄の者か、男性の場合はそれ以上の家格の娘とするのがもっともいいとされている。

 格下の娘と結婚していいことなんて何もないのだ。

 そもそも価値観や礼儀作法だって、私とヴィルの間には大きな差があるはずだ。

 料理の食べ方一つにとっても、育ちを垣間見ることができるのだ。

 ヴィルは寛大なので、これまで気にしない素振りを見せていただけなのだろう。

 考えれば考えるほど、私とヴィルの間に障害があるように感じてならなかった。


「はあ」


 深く考えるのはやめよう。まだ乗馬大会まで一ヶ月とあるのだ。時間が経ったら何かいい案が思いつくかもしれない。

 今日は夕食を作る気にはなれなかった。お腹も空いていないし。

 王宮に行って食事を作ってこよう。そう思ってジェムと一緒に転移の魔法巻物を展開し、移動したのだった。


 料理長は私を見るなり、今日もヴィルがいないことを不思議がっていた。


「もしかしたら彼は、しばらくこないかもしれません」

「どこか悪いのかい?」

「ええ……」


 私が遠い目をしながら窓の外をじっと見つめたため、料理長はそれ以上聞いてこなかった。


「今日の献立はなんだったか?」

「白インゲン豆のグラタンに、たらのホワイトソースソテー、白パンに梨のコンポートです」

「おお、いいな」


 国王が食べる料理にしたら品数が少ないものの、最近これだけボリュームのある料理の数々を食べられるようになったのである。


 料理長含め、五名ほどの料理人の補助を受けながら料理を完成させる。

 あとは給仕係に任せるのみである。

 仕事が終わって安心したのもつかの間のこと。国王の側近の一人から呼び出しを受けた。


「あの、いったい何用ですか?」

「リンデンブルク大公子息、ヴィルフリート様がお話があるようで」

「ヴィル先輩が?」


 どうやらヴィルはいまだ解放してもらっていないようだ。

 側近のあとに続いて向かった先は、王族のみが入れるという警備が厳重なフロアであった。私も入るのは初めてである。

 ヴィルは立派な二枚扉の向こうに、優雅に腰かけているように見えた。

 側近は「ごゆっくり」という言葉を残していなくなる。


「ミシャ、呼びだしてすまなかったな」

「いえいえ」


 なんでも厨房に行こうとしたようだが、扉は魔法で閉ざされていて身動きができなかったらしい。


「国王陛下が私をここに軟禁するよう命じたのだとか」

「軟禁と言いますが、事故に遭ったあとなのでただの療養では?」

「もう元気になっている!」


 そうは言っても、周囲の人々は気が気でないのだろう。


「学校側からも試験免除の書類が届いて」

「手回しが早いですよね」

「そうなんだ」


 何もかもだめだめだめの連続だったようだが、私を招くことだけは許されたという。


「ミシャもだめって言われたら、本気で扉を破壊しようと思っていた」

「わあ」


 こんな物騒なことを言うヴィル相手に、婚約破棄なんてしていいものなのか。

 不安になってしまった。

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