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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
五部・二章 とんでもない騒動

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試験三日目

 早朝――全校生徒に向けて学校側から鳥翅魔法が届き、今日は試験があることが知らされた。

 私はすでに起床していたものの、かなり早い時間だったので、届いた手紙に起こされた人もいるだろう。

 朝食は芽キャベツのサラダにホウレンソウを混ぜたクリーミー・マッシュポテト、チーズ・オムレツに昨日焼いたスノーベリーのスコーンを添えた。

 いつもの少し早い時間にレナ殿下がやってくる。


「ミシャ、おはよう」

「おはよう」


 出迎えるために外にでると、そこまで寒くないことに気付く。

 ガーデン・プラントでは小さなアイリスの花が咲き始め、水仙のつぼみも大きく膨らみつつある。

 そんな草花を見ていると、もうすぐ春が近いんだな、と思ってしまった。

 レナ殿下と一緒にアイリスの花を摘んで、食卓の花瓶に活けた。


「昨日はノアを連れて行ってしまい、すまなかった」

「いえいえ。教室ではゆっくり会話もできないだろうから」

「そうなんだ」


 レナ殿下やノアはクラスの人気者で取り巻きが多く、二人きりで言葉を交わすというのは難しいらしい。


「久しぶりにゆっくり話せたよ」

「よかったわ」


 レナ殿下がノアに打ち明けたかった話とは、やはり異性装についてらしい。


「ノアも同じように悩んでいたみたいなんだ」


 なんでもノアは上半身の発達が著しく、肩幅や腰回りが急成長しているのだとか。


「私服のほとんどがきつくなって、仕立て直したばかりだったらしい」

「そうだったのね」


 上流階級がまとう服はとてつもなく高価なので、仕立て直したと聞いただけで白目を剥きそうになる。


「身長もぐんぐん伸びているみたいで、もしかしたら卒業するまでには抜かされているかもしれない」

「そ、そう」


 ヴィルとリンデンブルク大公はかなり背が高いので、ノアも彼らに近いくらいの身長になりそうだ。


「そもそも私達の婚約自体、無理があったんだ」


 レナ殿下が男であるために、ノアも女で在り続けなければならない。


「私がこれだけ辛いのだから、ノアはそれ以上だろう。そう思っていたのだが――」


 なんと驚いたことにノアは違ったという。


「なんでもノアは女装を楽しんでいるらしい。どんな格好でも似合ってしまうから、苦ではないと。本当だろうか?」

「たぶん、その、本当だと思うわ」


 ノアは自分の美貌と女装に絶対的な自信を持っている。きっと苦ではないのだろう。


「もしも限界がやってきたら、二人揃って退学してもいい、とノアは言ってくれたんだ」


 ノアはレナ殿下へ同世代の人目があるから気になるのだろうと指摘した上で、退学するのも一つの案だと言ってくれたという。


「他にもノアはさまざまな提案をしてくれたんだ」


 背が気になるのであればシークレットブーツみたいなものもあるし、女性的なシルエットが気がかりであれば服の着こなしを研究する。


「正直、想像していた以上にノアは頼もしかった。婚約者がノアでよかった、と改めて思ったよ。悩みを抱えているのは一人じゃない、というのがどれだけありがたかったか」


 そんな話を聞いていると、二人ならばどんな苦難も乗り越えられそうだな、と思ってしまった。


 その後、レナ殿下と早めに登校し、時間ギリギリまで試験勉強を行う。

 ホームルーム開始を知らせる鐘が鳴るのと同時にホイップ先生がやってきた。続いて教室に入ってきたのはルドルフだけ。ジルヴィードの姿はなかった。


「ジルヴィード先生は今日はお休みみたいなの~。みんな、食べ過ぎには気をつけてねえ」


 なんでも食堂の料理を三人分も食べてしまい、お腹を壊したのだとか。

 本当か? と疑ってしまう。

 ジルヴィードを問い詰めようと思っていたのに、当てが外れたわけだった。


 その後、試験開始となる。

 飛行試験は最後だった私までやったので、再試験はしないらしい。

 ブリザード号ではなくジェムが変化した箒だったがよかったのか。あとで先生に聞きにいかなければ。

 三日目は午前中に魔法式と総合魔法の筆記試験、午後から実技魔法の試験を行った。

 試験範囲を丸暗記する勢いで頑張った筆記試験はまあまあの出来である。

 私が苦手とする実技魔法は、自動筆記の魔法だった。先生が読み上げる言葉を魔法で記録させるものである。

 練習の成果がでたようで、こちらもなかなかいい仕上がりだった気がした。

 以上で試験期間は終了である。

 開放感がとてつもない。ぐーっと背伸びをしていたら、校庭を歩くジルヴィードの姿を発見した。


 

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