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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
五部・二章 とんでもない騒動

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事故について

 王宮からの連絡は校長先生を通して届いたという。国王が急遽、用事があるとのことできてほしい、という内容だったのだとか。


「試験中だったが、国王陛下の呼び出しは無視できなかったゆえ、向かうこととなったのだ」


 王家の紋章入りの馬車も用意されていて、ヴィルは乗り込むばかりだったという。


「途中から雪が降ってきたかと思えば、どんどん酷くなって」


 暴風雪に晒された馬車は強い横風を受け、右に左にと走行が安定していなかったという。


「すぐに御者へ運転を止めるように言ったのだが、聞く耳など持たず――」


 このときからヴィルは違和感を覚えていたという。

 まともに走行できない中でヴィルの訴えに耳を貸さず、走らせ続けるという状況はありえないだろう。


 森を抜け、城下町へ繋がる石畳の街道へでてきた。


「馬車の扉から飛び出そうか、と思った瞬間に大きな音と衝撃に襲われた」


 すぐに馬車同士がぶつかったのだと気付いたという。


「そのときに頭を強打し、意識を失ってしまった」


 そんなヴィルが目覚めたのは、強い痛みを感じたからだという。


「気付いたときには外にいて、誰かが私の額に布を押しつけていたのだ」


 御者か誰かが介抱してくれているのか、とそのときのヴィルはぼんやり思っていたようだが、別の誰かが「血は採れたか?」という声ではっきり意識が覚醒したという。 


「瞼を開くと、四十代くらいの男が顔を覗き込んでいたんだ」


 ヴィルの意識が回復したとわかると、慌てた様子で逃げだしたという。

 男達の片方は馬車を操縦していた御者だったようだ。


「男共はずらかれ、とわかりやすく逃げようとした」


 しかしながら、ヴィルの頭の回転のほうが早かった。


「拘束の魔法巻物を貰っていただろう?」

「ホイップ先生の、ですか?」

「ああ、そうだ」


 ホイップ先生はヴィルにも、私に何かあったときは犯人に攻撃を加えずに拘束の魔法巻物を使って捕まえておくように言っていたのだ。

 それを投げたところ、蔓のようなものが足下から伸び、男達を二人まとめて拘束したという。

 さすがホイップ先生と言えばいいのか。ああいう魔法は通常、対象は単体である。けれどもヴィルが捕まえたいと思った二名を逃さずに捕まえることに成功したのだ。

 ホッとしたのもつかの間のこと。ヴィルは額からの痛みに加え、出血していることに気付く。すぐに回復魔法で傷を塞いだが、貧血のような状態になっていて立ち上がれない。しだいにくらくらと目眩を覚え、視界がぐるぐる回っていた。魔法を展開させたり、使い魔を呼べる集中力もなかったという。

 街中での事故ならばまだしも、事故現場は街道だった。雪は酷く、走っている馬車は見当たらない。男達の味方がやってきたらどうすればいいのか、と思う中で運よく商会の馬車が通りかかったという。


「偶然にも、父の顔見知りの商人だった」


 ヴィルは商人に助けを求め、事故を起こし見捨てようとした御者の男達も運んでもらったという。


「男達は騎士隊が拘束したのだが――すぐに自ら命を絶ったらしい」

「なっ!?」


 なんでもその男は城勤めの御者ではなかったという。共に身元不明の男性達だったようだ。彼らは王家の家紋入りの馬車を盗み出し、悪事を働こうとしていた。

 けれども目的もわからないまま、事情聴取もできずに犯人死亡という形になってしまったそうだ。

 話を聞いていただけでゾッとするような事故だった。


「犯人達はいったい何が目的だったのでしょう?」

「わからない」


 ヴィルを誘拐して身代金を要求するつもりも、仕留めようとするつもりもなく、ただ事故を起こした。


「私のもとに届いた王家の家紋入りの手紙は、本物と極めて似た素材で偽造させた物だったらしい」


 どこかの誰かが、そこまでしてヴィルをおびき寄せようとしていたのだろう。


「気色悪い事件だ」

「そう、ですね」


 ひとまず無事でよかった。私はヴィルの肩をぎゅっと抱きしめ、安堵の息を吐いたのだった。

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