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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
五部・二章 とんでもない騒動

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想定外のトラブル

 まさかヴィルがそんな目に遭っていたなんて。血の気が引くような思いとなったものの、ここで気を失っている場合ではない。

 ノアは涙目だった。耳と鼻先を真っ赤にし、迷子の子どもが親を見つけたときみたいに抱きついてくる。

 私がしっかりしなければ。そう自らを奮い立たせる。

 ノアはぶるぶる震え、ついには泣きだしてしまった。


「うう、ううううう」

「ノア、大丈夫だから」


 泣き崩れそうになるノアを叱咤し、いったい何があったのか詳しく聞き出した。


「ヴィル先輩が事故に遭ったって、どういうことなの?」

「今日、試験の途中で国王陛下から呼び出しを受けたんだ」


 王家の家門入りの馬車に乗り、ヴィルは国王がいる王宮へと急いだという。


「その途中でさっきの雪が降って、馬車同士がぶつかったみたいで」

「そう、だったの」


 話に聞いただけでもゾッとする。

 なんでもノアの元に父親――リンデンブルク大公から鳥翰魔法で事故を知らせる手紙が届いたらしい。


「事故のあと、王宮に運ばれたみたいなんだ」

「だったら様子を見にいきましょう。王宮へ繋がる転移の魔法巻物を持っているの」

「え、でも、許可とか大丈夫なの?」


 ノアはガーデン・プラントに入るさいに、きちんと許可を取ってからやってきたらしい。


「私、国王陛下の料理係をしているからいいのよ。学校側も好きなタイミングで行き来していいって言われているから」


 王宮へ出入りできる許可証を見せる。そこには同行者は一名のみ連れてきてもいい、とあるのだ。


「学校側への許可は、念のため取っておいたほうがいいかもしれないわね。ホイップ先生に鳥翰魔法で手紙を送っておきましょう」


 緊急事態である。ホイップ先生ならば許してくれるだろう。

 近くにお買い物メモがあったので、何も書いていない面にホイップ先生宛てにヴィルが事故に遭って王宮に運ばれたので、見舞いにいくという旨を書いた。

 それを鳥翰魔法でホイップ先生のもとへ送っておく。


「これで大丈夫! ノア、行きましょう」

「う、うん」


 ノアは涙を拭い、私が差しだした手を握ってくれた。ジェムも珍しくついてくるようで、縄状になって私の腕に巻き付いてきた。

 魔法巻物で転移魔法を展開させ、王宮へと向かう。

 着地した先は厨房である。すっかり顔見知りとなった厨房の料理長が、私とノアの登場に驚いていた。


「おお、今日は早いな」

「ええ、ちょっと用事がありまして」

「そうか。一緒にいるのはいつものリンデンブルク大公の坊ちゃんじゃないんだな」


 いいえ、リンデンブルク大公の坊ちゃんです。と言いそうになったものの、喉から出る寸前でごくんと呑み込んだ。


「彼の妹なんです」

「たまげた! こんなにべっぴんな妹さんがいたんだな!」


 べっぴんな妹さんでなく、べっぴんな弟さんだが。

 と、今はのんきに調理長とお喋りしている場合ではなかった。


「料理長、またのちほど」

「ああ、待っているよ」


 ヴィルのケガの状態によっては、国王の食事は冷凍保存している作り置きをお出ししていただかないといけないかもしれない。けれども説明はあとだ。とにかくヴィルのもとへ急ごう。

 と、ノアと一緒に厨房を飛びだしたのはよかったものの、現在ヴィルがどこにいるのかわからない。


 厨房がある階層を行き来している人達はヴィルが運ばれたことなんて知らないだろう。

 国王のところにいって――と考えていたら、私の腕に巻きついていたジェムが球体に戻って振り返る。

 まるで自分に任せろ、と言わんばかりの眼差しだった。


「もしかして、ヴィル先輩の居場所がわかるの!?」


 ジェムは返事をする代わりに、ヴィルが以前贈ってくれた火の懐炉カイロを取りだす。それをくんくん嗅いでコロコロ転がり始めた。

 まさかの犬方式の捜索方法である。

 どんどん上の階へ上っていき、許可証が必要な扉を抜け、普段足を踏み入れないエリアに到着する。

 そして――ヴィルが運び込まれたという救護室に到着した。 

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