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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
五部・二章 とんでもない騒動

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帰宅後

 着地地点がガーデン・プラントのど真ん中だったら全力疾走ダッシュで家まで戻ろう。なんて考えていたが、ホイップ先生はきちんと転移先を家の中に設定してくれていた。

 叔父の雪なんて一粒ですら触れたくなかったので、感謝したのは言うまでもない。

 それにしても、酷い暴風雪である。一時間と経っていないのにすでに周囲は雪が積もって真っ白に染まっている。

 ふと、温室で働くモモンガ達は大丈夫なのか心配になった。

 一応、温室の中は温かいが、この雪と強風だ。不安になっていやしないか。

 一昨日作って熟成させていたカステラがあるので、持って行ってあげようか。

 叔父が降らせたであろう雪の中を歩きたくないが、モモンガ達への心配のほうが勝ってしまった。

 家にある傘を握ろうとしたら、手のひらにジェムがぬるりと滑り込んできた。


「え、何!?」


 私が驚きの声を上げるのと同時に、ジェムが巨大な傘へと変化する。

 それだけでなく、傘のつばからくらげの足のような物が垂れてきた。


「もしかして風避け?」


 ジェムは正解だとばかりにチカチカ光った。まるで本物のくらげみたいである。

 カステラが入ったかごを片手に、ジェムが変化したくらげ傘を握って外に出た。


「――わっ!」


 風と雪、それから寒さに襲われることを覚悟していたものの、ジェムの傘がすべて防いでくれているようだ。

 まるで家にいるときのように暖かい。


「ジェム、この傘すごいわ!」


 褒めるとジェムは嬉しそうにじんわり発光する。外が薄暗くなりつつあったので、そのまま光ってもらうことにした。


 温室まで向かうと、モモンガ達が私達を出迎えてくれた。


『今日、早い!』

「雪が降っていたから、帰るように指示があったの」

『そうなんだ』


 温室の中は思っていたよりも温かく、モモンガ達も寒くないという。


「寒かったら私の家の中で待機してもらおうと思っていたんだけれど」

『平気』

「そう、よかったわ」


 寒いと思って、カステラを入れたかごに火の魔石を入れて温めておいたのだ。

 湯気があがるくらい温まったカステラを前に、皆瞳を輝かせている。


『わあ、おいしそう!』


 いつもより甘い香りが漂っていて、食欲をそそるらしい。

 配ってあげると喜んで食べていた。


「寒かったら、いつでも家にやってきていいからね」

『ありがとう!』


 ひとまず大丈夫そうなので安心できた。

 帰りもジェムのくらげ傘のおかげで安全に戻れたのだった。


「よし、スープを作りますか!」


 気が滅入ってしまいそうな暴風雪っぷりだが、憂いを吹き飛ばせるくらいの最高のスープを作ろう。

 野菜を細かく切り刻み、レナ殿下から貰った豪華なハムで出汁を取って、いつもは薄切りにして使っているベーコンは分厚く切って入れた。

 ぐつぐつ煮込んでいる間にスコーンを作る。時間があったら作ろうと思っていたのだ。

 実家から届いた荷物の中に乾燥スノー・ベリーがあったので、それをたっぷり生地に練り込んで仕上げよう。

 小麦粉に溶かしバター、牛乳、砂糖、塩、ふくらし粉、油を入れて混ぜ、生地がまとまってきたら手で捏ねる。

 生地がいい感じになってきたら乾燥スノー・ベリーを加え、折りたたむようにして捏ねる作業を繰り返す。

 最後に生地を厚く伸ばし、縁に小麦粉を付けたカップで型抜きしたものを焼いたらスコーンの完成。

 大枚をはたいて購入した瓶入りのクロテッドクリームがるので、それと数日前に作って置いていたスノー・ベリージャムを付けて食べよう。

 スコーンを焼いている間にスープも完成した。

 ふと、窓の外を見ると暴風雪が止んでいたのに気付く。やはり長くは続かなかったか。

 ホッとするのもつかの間のこと。

 扉がどんどんどん! と勢いよく叩かれてギョッとする。

 ガーデン・プラントは許可のない者の侵入は許されていないのに、いったい誰なのか? 魔法の杖を武器に扉に近づくと、声が聞こえた。


「ミシャさん! 僕だ! 開けてくれ!」


 ノアである。これまでにないくらい焦った声色だった。そんなに動転して、どうしたというのか。

 すぐに扉を開くと、彼は私の胸に飛び込んできた。


「ノア、どうしたの!?」

「お兄様が! お兄様が!」

「ヴィル先輩がどうしたの?」

「事故に、遭ったんだ」


 その言葉を耳にした瞬間、視界が真っ白になりかけた。

 

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