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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
五部・一章 思いがけない再会

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試験二日目

 二日目は飛行魔法だ。

 初日こそ一ミリ程度しか飛べていなかったが、その後ヴィルと魔力の使い方について学び、なんとか使いこなせるようになったのである。

 試験前の運動場には、飛行魔法をする生徒達で上空は満員だった。

 ぶつからないよう体育教師のアイン先生が飛行しつつ、大きな声で空の交通整理をしていたようだ。

 私はガーデン・プラントの上空で練習させてもらっていた。

 飛行魔法を使った実技は五種類の中からランダムに選ばれた一種類を行うようだ。


 一つ目は旋回。円を描くように正確な飛行を行う。

 描いた円が美しいものであればあるほど、高得点となるらしい。

 二つ目は高速飛行。定められた距離を高速度で進んでいくもの。

 速ければ速いほど高得点だという。

 三つ目は急上昇。地上から一気に空に向かって飛び上がる基礎的な魔法だ。

 高ければ高いほど高得点だという。

 四つ目は蛇行。ヘビが地面を這うように右に左にと移動しつつ飛行するもの。

 美しい曲線を描いて飛ぶと高得点になるようだ。

 五つ目は宙返り。空中に飛び上がって体を前方に回転させる。

 体が逆さまになるので、五種類の中でもっとも難易度が高いとされている。


 どれも得意とは言えないのだが、宙返りがどうも苦手だった。どうか当たりませんように! と祈るばかりである。


 飛行魔法の試験はクラス全員運動場にでて、三人ずつ交互に行うというものだった。

 今日はアリーセと一緒の組である。


「アリーセ、飛行魔法の調子はどう?」

「練習したことをやるしかありませんわ」


 さすが優等生である。私もこれくらい強い気持ちでやる必要があるのだ。

  五組目なので、順番を待つばかりだ。

 レナ殿下は一組目で、豪勢な船型の飛行道具を乗りこなしている。

 宙返りがあったようだが、お手本のような回転を見せていた。


「わあ、きれい」

「さすがですわね」


 続いてノアがでてきた。彼の飛行魔法を見るのは久しぶりである。

 いったいどんな飛行道具を選んだのかと思いきや、妖精のような美しい翅を装着していた。

 その状態で、華麗な旋回を見せている。


「うわあ、本物の妖精さんみたい」

「本当に」


 学年いちの美少女と誉れ高いノアだったが、その二つ名に相応しい飛行を見せていた。

 続いてエルノフィーレ殿下の番が回ってきたようだ。私と目が合うと、控えめに手を振ってくれる。


「エルノフィーレ殿下とずいぶん仲よくなりましたのね」

「リジーの騒動を通じてね」


 お気の毒に、という顔で見られる。

 いろいろあったが、エルノフィーレ殿下と打ち解けられたのでよかったとしよう。

 エルノフィーレ殿下は気球型の飛行道具に乗って、見事な急上昇を決めていた。


 四組目にエアが登場する。その瞬間、アリーセは祈るように手を組んだ。

 健気に応援しているのだろう。私もエアに向かって「頑張れ!」と声をかけた。

 エアは自慢のスカイ・ボード〝フレイム号〟を掲げて反応してくれた。

 久しぶりにエアが飛んでいる姿を見たが、かなり上達していた。

 あざやかで巧みな蛇行を披露し、先生から「よくやった!」と声をかけてもらう。

 五組目、私達の番である。


「ミシャ、頑張れー! アリーセも負けるなー!」


 エアからの熱烈な応援が届く。アリーセは頬を染めつつ、嬉しそうに手を振っていた。

 私はブリザード号を高く上げて声援に応じる。


 そしてどきどきしながら先生がランダムで選ばれる技を待っていたら、まさかまさかの宙返りが当たってしまった。


「ううう……!」

「ミシャ、大丈夫ですの?」

「緊張で吐きそう」


 宙返りも練習をしていたのだが、五回に一回しか成功していなかった。

 ギリギリ回転できるくらいの高さまでしか飛んでいなかったのだが、何度落ちそうになったか。

 失敗のたびにジェムがクッションと化して助けてくれたのだ。

 以前、ルドルフから逃げるさいに使ったジェムのクッションへの変化は、この練習時に習得していたものなのである。


 試験ではある程度の高さまで飛ばないといけない。

 落ちても先生が助けてくれるというが、落下の恐怖もある。

 成功しますように、と神頼みをするしかなかった。


 まずはアリーセが高速飛行を行う。

 絨毯型の飛行道具を上手く操り、素早い飛行を見せていた。


「いいぞ!」


 先生から声をかけてもらい、なんの危うげもなく着地していた。


「アリーセ、すごいわ。とっても上手かった」

「ええ、ありがとうございます。ミシャも、安全第一に」


 頑張れと言わないところが彼女の優しさなのだろう。

 こうなったらやるしかない。気合いと共に魔法の箒であるブリザード号に跨がる。


「――飛び立て、空中飛行フライト!」


 三メートルほど飛び上がっただろうか。先生から「そのくらいの高さで!」と指示が飛んでくる。

 これまでこんな高さで宙返りなんてしたことがなかった。


「始め!!」


 合図と共にブリザード号を操縦する。

 一気に素早く回るだけでいいのだ。やれる、私はやれる!!

 そう思っていたが、ぐらり、と体が変な感じに傾く。

 失敗だ! と思ったが、急にぐっと体がブリザード号のほうへと引き寄せられた。


「え!?」


 気付いたときには、体は逆さまの状態から元の位置に戻っていた。

 疑問符はてなが浮かんでいたが、地上に着地した瞬間、ブリザード号の柄に目がついていることに気付いた。


「あ!!」


 よくよく見たら、私が握っているのはブリザード号ではなく、ブリザード号に変化したジェムだったのだ。


 なんてこった……と空を仰ぐと、曇天が広がっていることに気付く。

 先ほどまで晴天だったのに。

 それからハラハラと雪が降っていることにも気付いた。


「雪だわ」


 そう呟いた瞬間、先生が教室に戻るように叫ぶ。

 急に風が強くなり、吹雪となった。

 

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