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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
五部・一章 思いがけない再会

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思いがけない再会

 ルドルフに見つからないように顔を隠さなくては、と思ったものの、参考書を手に取った瞬間、ジルヴィードとバチンと目が合ってしまった。

 そして彼はあろうことか、ルドルフの肩を叩いて私のほうを指差す。

 ルドルフは私に気付いたようでハッとしたのちに、迷子の子どもが母親を見つけたかの表情を浮かべていた。

 即行でバレた! ジルヴィードめ、と恨んでしまう。

 けれども一番前の席なので、見つかるのも時間の問題だったかもしれないが。

 私が落ち込んだり気にしたりしていたら、ヴィルに迷惑をかけてしまう。

 きっとルドルフの目的はリジーだろうから、私に何か言ってくることもあるまい。

 変な顔で見てきたのはきっと、王都暮らしが長くて同郷の私を見つけてホッとしたからだろう。


「次の授業は急だけれど、サーベルト先生の宝石魔法についての特別授業になるみたい~」


 それを聞いてギョッとする。専門的な授業は二学年からだと聞いていたのだが、たまに特別授業と称して基礎以外の魔法を習う機会が訪れるのだ。

 なんでも一限目を担当する先生が急な腹痛で授業どころではないとのことで、ジルヴィードが教壇に立つことが決まったらしい。

 一限目、二限目と続けてあるので、うんざりしてしまう。


「では、みんな頑張ってねえ」


 ホイップ先生は微笑みを振りまきながら去って行く。

 残されたジルヴィードはそのまま授業を行うようだ。

 助手だというルドルフも残ったようで、やっぱりそうなるのか、と落胆してしまった。


 エルノフィーレ殿下のほうをちらりと見ると、ジルヴィードを猛烈に睨んでいた。

 おそらくエルノフィーレ殿下に報告せず、ジルヴィードは勝手に教師になったのだろう。

 なんというか、本当に自由な男性ひとだ。

 ルドルフは見目だけはいいからか、女子生徒からの熱い眼差しを浴びている。

 その男の見た目に騙されるな~! と念を送っておいた。


 ジルヴィードは意外にも、真面目に授業を行っていた。


「宝石魔法は属性によってさまざまな術の発現を可能とするんだけれど、ここにある光属性の宝石を使って術を発動させると、このように輝く。ただ、魔法の使用後は宝石がなくなってしまうから、とてつもなくお金がかかるんだ」


 ジルヴィードは全員分の光属性の宝石を配り、魔法を試すように指導する。

 いきなり素材を渡されてできるものなのか、と思ったがクラスメイト全員が成功した。


「通常、属性つきの魔技巧品などは先天属性が同じ人に限って最大限に機能を発揮する、って感じなんだけれど、宝石魔法は使用者がどんな属性でも同じように魔法が使えるんだよ」


 魔法の使用者を選ばない、というのが最大の利点なのだろう。

 便利な魔法だーと思いつつも、先ほどの宝石が一つ金貨一枚だと聞いてゾッとしてしまう。

 教材に金貨一枚もお金をかけるなんて……。


 休み時間になった途端、私は教室を飛び出す。

 ルドルフに声をかけられないための対策であった。

 向かった先は女子トイレ。ルドルフが絶対に入ってこられないような場所である。

 ここで休み時間が終わるまで時間を潰させていただいた。

 その後も授業は滞りなく過ぎていき、二回目の休み時間となる。

 もちろん、私は女子トイレに向かって猛ダッシュだった。


 授業開始を知らせる鐘が鳴るギリギリの時間に戻ってくると、アリーセからお腹を壊しているのではないか、と心配された。


「あの、大丈夫。サーベルト先生の助手が故郷の顔見知りで、いろいろあって気まずくって、声をかけられたくなくって」

「まあ、そうでしたのね」


 アリーセは深く聞かずにさらりと流してくれた。今は誰にも触れられたくないので、ホッと胸をなで下ろしたのは言うまでもない。


 ただ、授業でルドルフとの接触を回避できて、完全に油断していた。

 お昼休みになり、ヴィルと中庭で落ち合うために移動していたらルドルフと鉢合わせしてしまう。


「ミシャ!!」


 ルドルフがこちらに向かって走ってきたので、思わず回れ右をして駆け出す。


「待ってくれ! 話がしたいんだ!」


 私は話すことなんて何もない。そう思いながら窓から飛び出す。

 ここは二階だったがジェムを信じて叫ぶ。


「ジェム、クッションを、お願い!!」


 私よりも早くジェムは着地し、大きなクッションに変化してくれた。そのおかげで無事、私はケガもなく着地する。

 窓を見下ろしたルドルフが「ミシャーーーー!!」と叫んでいたが、逃げることを優先した。

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