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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
四部・四章 調査、調査、そして調査

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調査へ

 街には貴族御用達の酒場がいくつか存在するらしい。

 会員制のお店もあるようだが、転移魔法でこっそり侵入することもできるという。


「お上品な酒場とお上品でない酒場があるけれど、リジーはどっちにいると思う~?」

「えーその、お上品でないほうにいるかと思われます」

「わかったわあ」


 なんて会話をする中で、ヴィルが私にこっそりナイフを手渡す。


「あの、こちらは?」

「酔っ払いが絡んできたら、迷わず抜くんだ」

「いやいや、物騒な」

「物騒ではない。あいつらは何をするかわからないからな」


 あろうことかヴィルはジェムにも同じようなナイフを手渡している。

 そして真面目な顔をしてジェムに語りかけていた。


「私は命を賭けてミシャを守るつもりだが、もしものときには、ジェムがミシャを守るんだ」


 ジェムは神妙な表情で話を聞いて頷いていた。普段、私が話しかけても頷くなんてことはしないのに、いったい何事なのか。

 ヴィルから受け取ったナイフをジェムはすぐに鞘から抜いて、刃が剥きだしの状態で持ち歩こうとしていた。


「こら! ジェム、危険だからせめて鞘にしまいなさい!」


 私が怒るとジェムは素直にナイフを鞘に収め、ごくんと呑み込んで収納していた。変なところで物わかりがいい子なのだ。


「いくわよお」

「は、はーい」


 ホイップ先生の転移魔法で上品ではない酒場へと移動した。

 下り立ったのは貴族街の端にあるお店。古びた建物で、辺りに街灯がないのもあって少し怪しい雰囲気だ。


「ここは場末の酒場って感じで、会員制じゃないし、誰でも入れるようなお店みたいねえ」


 ちょうど客がやってきたようだが、露出が激しい女性とすでに赤ら顔の酔っ払いのおじさんのふたり組だった。

 私達の近くを通り過ぎるさい、酔っ払いのおじさんが声をかけてくる。


「おう、姉ちゃん、どえらい美人じゃないか!」


 酔っ払いのおじさんはホイップ先生に絡み始める。

 なんて怖いもの知らずな……。


「どうだ? これから一緒に飲まないか?」

「あんた、何言っているんだよ! 誰もいないじゃないか!」

「へ!?」


 酔っ払いのおじさんは私達がすぐ傍にいるのに、キョロキョロと辺りを見回す。

 どうやらホイップ先生が姿消しの魔法を展開させたらしい。よくよく確認したら、足下に魔法陣が浮かび上がっていた。


「いや、たしかにいたんだ! どえらい美人が!」

「酔っ払って、幻でも見たんだろう?」

「ち、違う! 本当だ」

「そんな人、最初からいなかったよ。この世に存在しないものでも見たんじゃないのかい?」

「この世に存在しないだって!? ま、まあ、たしかに、美人の耳はとんがっているように見えたが……」

「それって淫魔じゃないのかい? 欲求不満の男の前に現れるんだよ」

「なるほど!」


 淫魔扱いされたホイップ先生は深い笑みを浮かべていた。何も言わないのが逆に怖い。


「姿隠しの魔法を使っているの~。変な人達に絡まれるのは時間の無駄だから、このまま入りましょうねえ」

「は、はい」


 やっぱり酔っ払いのおじさんの発言に怒っているようだ。

 なるべく触れないでおこう、と心に誓った。


 ホイップ先生のあとに続いて入店する。

 お店は地下にあった。灯りは各テーブルにキャンドルがあるくらいで、とてつもなく薄暗い。客入りはかなりあるようだが、これでは顔の判別が難しいだろう。そう思っていたら、ヴィルがある魔法を展開してくれる。

 目の前で魔法陣がぱちん! と弾ける。すると視界が一気にクリアになった。

 ヴィルの魔法〝暗視〟だという。これで個々の顔が確認できる。

 店内は各テーブルで盛り上がりを見せていた。

 客の身なりは乱れているものの、仕立てのいい服を着ている印象だ。


「おそらく客層のメインは成り上がりや新興貴族なのだろう」


 貴族との縁を繋ぎたい気持ちはあるものの、なかなか社交場に呼ばれない者達が集まっているという印象だ、とヴィルは語る。


 店内でひときわ盛り上がっている集団がいた。酒の一気飲みで盛り上がっているらしい。

 あろうことか、その中心にいたのはリジーだった。

 捜索は時間がかかるかもしれない、と思っていたのにあっさり発見される。


 

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