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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
四部・四章 調査、調査、そして調査

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突然の展開

 それからツィルド伯爵夫人はたっぷり時間をかけて来店していたお客さんに声をかけ回っていた。

 その間、店員は一度もフロアに現れず、紅茶も冷え切っているというのに新たに注文などできない状況だった。

 正直、お店のサービスは最低最悪。途中でやってきた楽団も演奏の音が大きすぎる上に、賑やかな曲ばかりでまったりできる雰囲気など皆無となった。

 こんな状況になったら会話の盗み聞きすらできない。

 もう帰ろうかと提案したものの、ノアが「まだ粘れるから!」と言って聞かなかったのである。アリーセもなぜか、手ぶらで帰れないと闘志を燃やしていた。

 私達は途中から開き直って試験勉強を行う。

 とても集中できるような状況ではないものの、意外とサクサク進んだ。


「ノアさん、勉強、大丈夫?」

「アース寮、ですよね?」

「ああ、そうだよ。勉強に関しては熱血な個人指導教師テューターがいてさ、なんとかなっているんだ」


 その話を聞いて安心する。入学当初、個人指導教師テューターがいなくて授業についていくのが大変だったな、としみじみ振り返ってしまった。


 入店から早くも三時間ほど経っただろうか。

 ノアやアリーセがいてよかったと思う。ひとりだったら心が折れていただろう。

 まあ、透明化させたジェムもずっといるんだけれど。いそいそとついてきた割には入店一分で暇を持て余し、店内をくるくる回っている。三時間ずっと、だ。誰とも接触せず遊んでいるので自由にさせているのだ。


 そろそろ限界か、なんて思っていたら、再度ツィルド伯爵夫人が会場のお客さんに語りかける。


「長らくお待たせしました。本日の目玉のご紹介です!」


 はて、本日の目玉とは? 皆、同じ方向に首を傾げていた。

 フロアの壁だと思っていたところが、観音開きの扉みたいに開いていく。

 その先にあったのはショップだった。


「え、お店?」

「なんの?」

「遠くてよく見えませんわ」


 ツィルド伯爵夫人は通販番組の司会のように、販売する商品について説明し始める。


「この国の太陽の日差し、強いですよね? 私、日傘が手放せなくって」


 周囲から「わかるわ!」なんて声が聞こえてきた。

 隣国ルームーンは一年を通して穏やかな気候かつ、曇り空が多くて太陽がさんさんと降り注ぐ日が少ないらしい。そのため、冬の日差しでもきつく感じているそうだ。


「今回ご紹介する新作は、太陽の日差しすべてを遮断させる、魔法の美容エキス入りの日焼け止めなんです!」


 急に目の前にもくもくと靄のようなものが浮かんで、細長い瓶の幻術が浮かび上がった。

 この世界には巨大なディスプレイなどないので、こうやって幻術で商品見本を作ってアピールしているようだ。


「こうして肌に塗ると、毛穴やシミなどもスーーーっと消えていって、カバーしてくれるんですよ。さらに、魔法の美容成分の効果によって毛穴やシミを消す効果もあるんです!」


 そんな日焼け止めがあるのならば、ぜひとも購入したい。

 雪国出身で雪の照り返しなどで肌が焼けることがあったものの、太陽で焼けるのとはわけが違う。雪焼けに比べて日焼けは肌が真っ赤になって、ヒリヒリして痛いのだ。

 そういえば王都にやってきてから、そばかすがうっすらでてきたように思える。そういう年頃なのかと思っていたが、太陽の強い日差しのせいなのだ。


「各テーブルにサンプル品を配りますので、どうぞお試しください」


 これまでどこに隠れていたのか、と思うくらいのウエイターが登場する。

 手早くサンプル品を配っているようだ。

 小瓶にでも入れてくれるのかと思いきや、手のひらに少しだけ垂らすようにしていた。

 私達のテーブルにもやってきて、どこにつけますか? と聞いてくる。


「こちらのハンカチーフにいただけますか?」


 アリーセがそんなことを言うので私やノアもあとに続く。

 皆、「わあ!」とか「まあ!」とか、効果を実感しているようだった。

 私達はまだ誰も手をつけず、じっとサンプルを眺めている。


「まずは少量塗布して、皮膚に悪影響がないか調べたほうがいいかもしれないわね」

「わたくしもそういうふうに思っていました」

「僕も」


 魔法の美容成分が含まれていると聞いて、魔法学校出身の私達はついつい警戒してしまうのだ。


 さっそく私が――と思って手を伸ばしたら、ツィルド伯爵夫人が再度喋り始める。


「本日、私のサロンに入会した方々に、特別な情報を教えて差し上げます」


 特別な情報とは? なんとも怪しい話をし始めたものだ。

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