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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
四部・第二章 人間関係のあれこれ

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エルノフィーレ殿下の事情

 エルノフィーレ殿下は胸を押さえ、呼吸を整えている。

 そして深く長いため息をついてから、リジーについて話し始めた。


「彼女は今、ジルヴィードと一緒におります」


 昨晩、ジルヴィードはリジーを突き放すようなことを言っていたのに、なぜ行動を共にしているのか謎すぎる。


「あの、リジーはどうしてサーベルト大公のご子息とご一緒に?」

「それは――」


 エルノフィーレ殿下の声が小さくなっていく。唇を強く噛みしめ、気持ちを堪えているように見えた。

 拳はぎゅっと握られ、かすかに震えていた。そんなに握りしめては、手のひらに爪が食い込んで痛いだろう。

 言いたくなければ無理しなくてもいい、と伝えるために拳に指先を重ねる。

 すると、エルノフィーレ殿下はふにゃ、と幼子のように表情を崩し、私にすがりついてきた。

 そして、このように動揺していた理由を口にする。


「ジルヴィードとリジーの結婚が決まりそうなんです!」

「ええ!?」


 想定外の情報に思わず声をあげてしまう。


「どうして突然、そのようなことになったのですか?」

「そ、それはわたくしが、レナハルト殿下やリンデンブルク大公子息の心を射止めることが、で、できなかったから……」


 なんでもエルノフィーレ殿下がこの国へやってきた理由は、こちら側の想定通り政略結婚を行う相手を探すためであった。

 ルームーン側が望むもっとも相応しい相手はレナ殿下だが、残念ながらノアという婚約者がいる。

 もしもレナ殿下の心を動かせなかった場合は、ヴィルを誘惑して婚約までこぎつけるように、と言われていたようだ。

 その期限が昨日の歓迎パーティーだったようだ。


「ゆ、誘惑だなんて、わたくしには最初から無理……だった」


 政略結婚を目論む大臣にも、エルノフィーレ殿下は訴えていたらしい。

 さらに双方の国は二代にわたって婚姻をしているので、血が近くなりすぎているのではないか、とも意見したようだ。

 けれどもレナ殿下の婚約者はいとこであるノアで、エルノフィーレ殿下と結婚しても血の濃さは変わらないだろう、と言い返されてしまったらしい。

 ぐうの音も出ないというのは、このような状況なのだろう。

 エルノフィーレ殿下は最後まで反抗していたようだが、ジルヴィードの一言でヴァイザー魔法学校への留学を決めたという。


「ジルヴィードが、歓迎パーティーは一緒に参加してくれる、と言ってくれたんです。たったそれだけで、わたくしは舞い上がってしまって……」


 その一言で確信する。

 エルノフィーレ殿下はジルヴィードに恋をしているのだ、と。

 リジーと婚約させると聞いて、さぞかし衝撃を受けたに違いない。

 相手がまともな女性であれば、ショックはあれどもどこか諦めがつく。

 けれども相手はあのリジーだ。ずっと恋心を抱いていた相手を、リジーに奪われるなんて納得できないだろう。


「わたくしの政略結婚が上手くいきそうにないから、国との繋がりを作るために、ジルヴィードがリジーと結婚しなければならないと聞いて……」

「そう、だったのですね」

「ジルヴィードも、別に構わないと言うものだから」


 ジルヴィードもサーベルト大公からの依頼を続けるために、リジーとの婚約関係は都合がいいと思ったのかもしれない。


「ジルヴィードはわたくしの大きな執着心に気づいているんです」


 なんでも彼はエルノフィーレ殿下を焚きつけるように、ありえないことを言い放ったという。


「リンデンブルク大公子息を射止めて婚約までこぎつけたら、リジーとの婚約はなかったことにする、と」 


 あろうことか、ジルヴィードはリジーと婚約してまでエルノフィーレ殿下に政略結婚をさせようとしているらしい。

 どこか腹黒そうな奴だとは思っていたが、そこまでするとは。


「ジルヴィードはリンデンブルグ大公子息は顔が似ているから、誘惑もしやすいだろう、とわたくしに言いました」


 なんて酷い奴!!!!! と叫びたくなるのをぐっと堪えた。 

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