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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
四部・第二章 人間関係のあれこれ

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衝突!

 朝――レナ殿下と朝食を共にし登校していたら、突然私の胸に飛び込んでくる女子生徒が現れる。


「ええ!?」


 驚きつつも抱き留めたのだが、その相手がエルノフィーレ殿下だったのでさらにびっくりしてしまった。

 腕の中にいるエルノフィーレ殿下は静かに震えている、というよりしゃくり上げていた。明らかに泣いている。これはとてつもない緊急事態だろう。


「どどどど!?」


 どうしたのですか!? が言葉にならず、困ってしまう。

 そんな私の困惑とエルノフィーレ殿下の異変を察したレナ殿下が、「こちらへ」と誘導してくれる。

 行き着いた先は学校内にある貴賓室だった。

 瀟洒しょうしゃな絨毯や家具、カーテンなどがあるお上品な空間である。


「こ、こちらは?」

「王族専用の部屋だ。気にせず使うといい」

「あ、ありがとうございます」


 レナ殿下と一緒にエルノフィーレ殿下を長椅子のほうへ誘う。


「私はいないほうがいいのだろう?」


 そうレナ殿下が囁くように言うと、エルノフィーレ殿下はこくりと頷く。


「ミシャ、ホイップ先生には言っておくから」

「は、はあ」


 あろうことかレナ殿下は私とエルノフィーレ殿下を残し、去っていった。

 ぱたん、と教室が閉ざされると、エルノフィーレ殿下はワッと声をあげて泣く。


「ど、どうされたのですか?」

「ジルヴィードが! ジルヴィードが……うう!」


 サーベルト大公家は王家の身内。すなわちエルノフィーレ殿下とジルヴィードはごくごく近しい関係なのだろう。

 彼はどうしたというのか? まさか無神経で酷いことを言われたとか?

 ひとまず私にすがって泣くエルノフィーレ殿下の背中を優しく撫でてなだめる。

 十五分後――ホームルームを知らせるチャイムがなると、ハッと我に返ったようだ。


「授業!」

「大丈夫です。レナ殿下がホイップ先生に話してくれたようなので、ひとまずここで過ごしましょう」


 エルノフィーレ殿下の瞳は真っ赤で、いつもはきっちり美しく結い上げている髪も解れている。このまま急いで教室に戻ったら、何かありました! と主張しているようなものだろう。


「薬草茶を飲みませんか?」

「薬草、茶?」

「はい。心がホッとしますよ」


 紅茶のほうがいいでしょうか? と聞く前に、エルノフィーレ殿下はか細い声で「お願いします」と言ってくれた。

 私の背後で透明化していたジェムを実体化させる。するとエルノフィーレ殿下は目を丸くし、驚いていた。


「使い魔がいたのですね」

「ええ」


 そんなジェムの中から茶器や薬草など取りだしたので、さらにびっくりさせてしまった。


「この子、収納魔法が使えるんです」

「便利ですね」


 エルノフィーレ殿下は国を渡るさい、大量の私物を持ってやってきたらしい。

 とてつもなく大変だったと語る。


「魔法でいっきに運んでいるものだと思っていました」

「国自体は魔法が発達しているのですが、王家の人々はなぜか魔法に頼らない古典的な生活を好んでおりまして」

「いろいろご事情があるのですね」


 鎮静効果のあるレモンバーベナに、体を温める効果のあるシナモンスティックを入れた薬草茶を作ってみた。

 シナモンは好き嫌いがあるものの、エルノフィーレ殿下は「いい香り」と言ってくれた。


「とてもおいしいです。ありがとうございます」

「いえいえ」


 だんだんといつものエルノフィーレ殿下に戻っていくので、ホッと胸をなで下ろす。

 しかしクールな彼女があのように取り乱すとは、いったい何があったのか。

 ここでふと気づく。いつもエルノフィーレ殿下の傍に侍っていなければならないリジーの姿がないことに。

 なんとなく触れてはいけない問題のような気がしたものの、勇気を振り絞って質問してみた。


「あ、あのリジーはどちらにいるのでしょうか?」


 リジーの名前をだした途端、エルノフィーレ殿下の眦に再度涙が浮かんだ。

 どうやらリジーが絡んだ問題のようだ。

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