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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
一部・第二章 待望の魔法学校への入学!

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ガーデン・プラントに戻り……

「寮まで送ろうか。どこの寮なんだ?」

「いえ、そのー、私は寮ではなく、小屋というか、クラブ棟に住んでおりまして」

「クラブ棟に?」


 薬草クラブという、特殊な環境に身を置いている理由を、ざっくりと説明した。


「なるほど。そういうわけだったのか」

「はい」


 レナ殿下は深く追及はせず、ガーデン・プラント行きの魔法巻物を使って送ってくれた。


 庭に着地した途端、クリスマスのイルミネーションのように眩い輝きを放つジェムを発見してしまう。


「なんだ、あれは?」

「ジェム……私の使い魔です」


 数時間、外に放置されたので、お怒りに違いない。

 駆け寄る前に、レナ殿下に引き留められてしまう。


「ミシャ、頼みがあるのだが」

「な、なんでしょうか?」

「これからはなるべく、敬語を使わないでほしい。私達は友達なのだから」

「あーー、えっとーーー、善処するわ」

「ありがとう」


 レナ殿下は急に私を抱きしめ、そのまま消えていなくなる。

 なんというか、大変な目に遭った。

 ぼんやりしている暇はない。ジェムのご機嫌取りをしなければならないだろう。

 慌てて駆け寄り、謝罪したものの、ジェムは私からぷいっと顔を逸らすばかりだった。

 

「ごめんなさい! 何時間もあなたをここに置き去りにするつもりはなかったの!」


 だんだん熱くなってきたので、いったん離れる。


「これからは、どこでもあなたを連れていくから」


 そんな誓いを口にすると、ジェムは私を見つめ、こくりと頷いてみせたのだった。

 なんとか怒りが収まったようで、ホッと胸をなで下ろす。

 

「じゃあ、帰りましょうか」


 チカチカと光って返事をするように見えたのに、ジェムはいっこうに動こうとしない。

 このまま置いていったらまた怒るだろう。

 仕方がないと思って、ジェムの体をコロコロ転がす。

 すると、嬉しそうにピカピカ光り始めた。


「あなた、もしかして、転がしてもらうのが好きなの?」


 返事をするように、左右に揺れる。

 まさか、このコロコロを楽しんでいたなんて。

 やはり、精霊の考えていることなんて理解できない。


 ◇◇◇


 ホテルから荷物と少しの食料が届けられていた。きっとホイップ先生が頼んでくれたのだろう。

 ありがたく受け取らせていただく。


 今日は温かいお湯に浸かって、ぐっすり眠ろう。

 そう思って浴室に行き、魔法仕掛けの水道の蛇口を捻る。

 浴槽の下部にある火口に、魔石をぽいぽい入れて湯を沸かすという仕組みだ。

 この魔石も、毎日のように使っていたら相当な出費となる。

 ホイップ先生がくれる生活費をやりくりし、購入しているのだ。

 毎日お風呂に入らなければ、食費を増やせる。

 けれども元日本人としては、お風呂に入らない日があるというのは許せなかったのだ。

 ため息を吐きながら魔石を準備していると、ジェムがまさかの行動に出る。

 何を思ったのか、浴槽に飛び込んだのだ。


「えっ、なんなの!?」


 次の瞬間には、ジェムの体が赤く染まっていく。

 浴槽に貯めた水から、湯気が漂ってきた。


「もしかして、お湯を作ってくれているの!?」

 

 そうだとばかりに、ジェムは頷く。

 ただ、温め過ぎたのか、ぼこぼこと沸騰してきた。


「ジェム、ありがとう。でもその熱さだと、茹だってしまうわ」


 氷魔法が使えるジェムは、すぐさま温度を調節してくれた。

 おかげさまで、ぬくぬくのお風呂に浸かれたのだった。


 お風呂にゆっくり浸かったあと、少し教科書を開いて予習をしようか、と考えていたのだが、くたくたでできなかった。

 体力的に疲れたというよりも、気疲れしたと言ったほうがいいだろう。

 入学式から使い魔の召喚、温室での仕事に、レナ殿下との密会など、イベントが立て続けに起こったのだ。

 今日のところは早めに休もう。

 寝室にいったところ、あることに気付く。


「ふ、布団がないわ!」


 寝台だけがぽつんと置かれてあった。

 さすがの私も、床に直接寝転がって眠ることはできない。

 今の時間にやっているお店などないので、クッションを枕に眠るしかないのか。

 がっくりと肩を落としていたら、突然ジェムが寝台の上に乗る。

 

「ジェム、どうかしたの?」


 次の瞬間、ジェムが布団みたいに厚さのあるサイズに広がっていったのだ。


「こ、これはもしや、ウォーターベッドみたいなやつ!?」


 触れてみると、ほどよい弾力があった。

 ジェムは触手を作り、早くこい、と手招きしてくれる。


「ここで眠ってもいいの?」


 そう問いかけると、親指をぐっと立てるような手を作ってくれた。


「だったら、お言葉に甘えて」


 恐る恐る足をかけると、温かいことに気付く。

 どうやら毛布がない代わりに、ジェム自体が温めてくれるようだ。

 枕みたいな膨らみもあり、寝転がるとしっかり体を支えてくれる。

 

「ジェム特製のウォーターベッド、かなりいいかも!」


 ありがとうね、と言いながら、私は眠りに就いたのだった。

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