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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
四部・第二章 人間関係のあれこれ

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クッキング!

 ヴィルと共に王宮の厨房に立つ。

 私はすでに〝レディ・バイオレット〟のドレスを脱ぎ、メイド服姿だった。ヴィルはジャケットを脱ぎ、エプロンをかけた格好でいる。

 何をするかというと、国王陛下のお食事を作るためである。

 明日は重湯の上澄みと、可能であればすり潰したお米をお召し上がりになっていただくという。

 これからそれ以降の食事を考え、調理するのだ。


「まだ固形料理を食べることはできないでしょう」

「重湯をアレンジするのか?」

「それもいいかもしれませんね」


 ひとまずは野菜たっぷりのポタージュだったり、野菜や果物をすり下ろしたフレッシュジュースだったり、プリンみたいなやわらかいスイーツだったり、そういう料理を食べていただく。


「それらは流動食といいまして、療養されている人々の食事として重宝されているんです」


 ちなみに流動食のカテゴリーは三種類ほどあり、食欲がなく数日食べていなかった患者さん用に胃に負担が少ないものを〝普通流動食〟。

 病気によって食べられない食材がある患者さんに向けて作る〝特殊流動食〟。

 最後は固形物を食べるのは難しいけれど栄養をしっかり取りたい患者さん向けに作る〝濃厚流動食〟がある。


「しばらくは普通流動食にして、様子を見て濃厚流動食に変えていったほうがいいかもしれませんね」

「なるほど。かなり詳しいな」

「あー、はい」


 この知識の出所は前世絡みである。私はきっと誰かを看病するために、流動食をせっせと作っていたのだ。相手が誰かはまったく覚えていない。私の記憶も完全ではないのだ。


「では、作りましょうか!」

「ああ、わかった」


 今回、流動食作りに使う食材は、私がジェムに預けていたものである。

 以前、ノアと一緒に雪山で遭難しかけたので、用心のために食材や調理器具などをジェムに持たせているのだ。

 ちなみに預けたものは状態維持の魔法がかかっているようで、腐ったり傷んだりしない。

 そのため乳製品や卵なども買って預けている。

 最初は信じられなかったが、本当に食材が買った日のままなので、今では冷蔵庫代わりに使っているのだ。

 一品目はブロッコリーのポタージュ。茹でたブロッコリーを乳鉢で潰し、牛乳と生クリーム、塩、コショウに自家製コンソメストックを入れてぐつぐつ煮立たせたら完成。

 二品目は鶏胸肉を煮込んで煮汁ごとすり潰し、茹でて潰したジャガイモを混ぜて作るチキン・ビシソワーズ風。

 三品目はプリン。新鮮なミルクと卵を使ってぷるぷるに仕上げた。

 完成した料理は急速冷凍させる魔技巧品を用いてカチコチにし、保冷庫に保管させる。


 保冷庫にはヴィルが魔法をかけていた。


「鍵の機能でも追加したのですか?」

「いいや、陛下への悪意を持ってこの保冷庫に触れたら、腕が吹き飛ぶ魔法をかけた」

「わあ、そう、だったのですね」


 一応、警告文は貼っておくという。それに引っかかるバカはいないだろう、とはっきり言っていた。


 ひとまず、国王陛下の食事作りは完了となった。

 エルノフィーレ殿下の歓迎パーティーに参加することが目的だったのに、とんでもない事件に巻き込まれてしまったものだ。

 そろそろ帰ろうか、という話の流れになったのだが、ハッと思い出す。


「そういえば私、東屋で提供される食事の支払いをしていなかったんです!」


 強制的にジェムに連れられて、と事情を説明する。


「東屋でだされる食事は無償で提供されるものだ。代金は払わなくてもいい」

「そ、そうだったのですね!」


 ホッと胸をなで下ろす。


「しかしなぜ、ジェムがミシャを連れ去るような事態になったんだ?」

「あ――!」


 そういえば東屋でジルヴィードに出会ったのだ。私の食い逃げよりも重要な出来事だったのに、すっかり忘れていた。


「庭園でヴィル先輩にそっくりな男性に会ったんです」

「なんだと? もしやミシャを追ってきたのか?」

「あー、まあ、そんな感じみたいで」


 その瞬間、ヴィルの眉がピンとつり上がり、拳を握ったので待ったをかける。


「いえ、その、目的は私ではなく、ヴィル先輩だったんです!」

「私、か?」

「はい」


 誰の耳目があるかわからないので、ここでしないほうがいいだろう。

 いったん魔法学校に戻ることにした。

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