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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
四部・第二章 人間関係のあれこれ

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別室にて

 国王陛下は重湯をおかわりしてから眠りについた。穏やかな寝顔だったようで、ヴィルもホッとしたと言う。


 ヴィルは側近の方々に報告をするようで、その間私は別室で待機させていただいた。

 もう大広間に戻ってもいいのにと思ったものの、先ほどのような騒動を起こしたら申し訳ない。しばし待たせていただく。

 部屋にはおいしそうな焼き菓子や、香り高い紅茶が用意されていた。ありがたくいただく。グラタンを食べたあとだったが、こういうのは別腹だ。


 またもやジェムが暇つぶしとして過去の映像を見せてくれた。ちなみに今回はヴィルがガーデン・プラントの前でひたすら私を待つというひとときを映しだしたものである。

 まさかこんなに待っていたなんて知らなかった。ジェムは透明化していたのか、ヴィルも存在に気づいておらず、ただただ麗しいヴィルがその場に佇む映像が長らく流れ続けていた。

 ヴィルが先にいたとき、だいたい「お待たせしました!」と言っていたのだが、決まって「今きたところだ」と返してくれたのだ。

 あれは私が申し訳ない、と思わないように言っていたのだろう。なんて紳士なのか! と感激してしまった。


 三十分ほどでヴィルは戻ってきた。


「ミシャ、すまない、待たせた」

「いえいえ!」


 待たせた、の返しは意外と難しい。ぜんぜん待っていなかった! と言えばそのままの意味だと誤解を招いてしまいそうだし……。


「思いのほか、早かったですね」

「ああ。いろいろあったが、陛下の穏やかな寝顔を見たからか、そこまで追及はされなかった」


 詳しい報告は書類で提出し、今日のところは早めに切り上げてきたようだ。


「ミシャ、本当にありがとう」

「ヴィル先輩の機転の早さのおかげもあると思います」


 料理に解毒作用が付与されることなんて、私ですら少し忘れていたくらいだ。

 国王陛下が暗殺されかけたと聞いて現場は混乱していただろうが、その中でもしっかり自分の主張を伝え、のど飴を食べてもらうことを成功させたのはヴィルの手腕でしかない。


「私なんて、大勢の騎士に囲まれてうろたえてしまったんです。そういう混乱状態にあるときって、なかなか物事の筋道を立てて話すのは難しいな、って感じたんですよ」


 私が事件現場にいたとしてものど飴の有効性を訴え、実際に口にしてもらうなど不可能に近いだろう。


「それはそうと、レナ殿下は事件についてご存じない様子でしたが」


 私のもとへやってきたとき、騎士達に「なんの騒ぎだ?」と問いかけたのだ。


「やはり、気づいたか」

「ええ」


 国王陛下のもとに連れてこなかったのも、少し引っかかっていたのだ。


「殿下には今日の事件について報告していない」

「どうしてですか?」

「陛下のご意向だ」


 なんでも国王陛下の命を狙っているのは、ごくごく近しい人物であると言われているらしい。家族に親族、傍系に臣下に至るまで、容疑者としているようだ。


「何も知らないのであれば、殿下も平然と過ごされるだろうから」


 たしかに今日のレナ殿下の様子を見るに、普段の様子となんら変わらなかった。

 暗殺について聞いて心を痛めるだろうから言わないでほしい、という親心もあったという。


「私からしたら、甘いとしか言いようがない」

「未来の国王ですからね」

「ふむ……」


 ヴィルは顎に手を当てて、しばし考え込むような仕草を取っている。


「どうかしたのですか?」

「いや、陛下は殿下を未来の国王としてお考えなのか、と思って」


 国王として期待をかけているのならば、魔法学校にやらずに側近として傍に置き、仕事を覚えさせるのではないか、とヴィルは口にする。


「そういえば、国王陛下はレナ殿下が女性であることは、ご存じではなかった、と聞いていたような?」

「ああ、そうだ。ただ、すでに気づいているのかもしれない」


 そして私は気づく。

 もしかしたら国王陛下は、ヴィルに後を継がせたいのではないか、と。

 いやいやいや、ないないない、と心の中で否定する。

 そんなことはさておいて、私達にはやらなければならないことがあった。


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