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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
四部・第二章 人間関係のあれこれ

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追い詰められたミシャ

 今すぐにでも払いにいきたいものの、まだ東屋にジルヴィードが残っているかもしれない。あとでヴィルと合流してから精算にいこう。

 バルコニーから城内を覗き込むと、何やらバタバタしていた。

 騎士だけでなく、正装姿のお偉方まで走っていた。

 何かあったのだろうか? もしかしたらヴィルが騎士から呼びだされた件に関連しているのかもしれない。

 城内へ続く扉の鍵は開いている。自由に行き来できる状態だが、しばらく中に入らないほうがよさそうだ。


 十五分ほどバルコニーで夜空を眺めていたら静かになった。

 騒動は収まったのだろうか? などと思いながら城内へ入る。ジェムは透明化し、私のあとをついてきた。夜会が開かれているというのに、廊下は静まりかえっている。

 もしかしなくても、この辺りの区画は誰でも入っていいエリアではないのかもしれない。

 どうにかしてここを脱出しなければ。

 いいや、バルコニーに戻って地上へ降りたほうが早そうだ。


「ねえジェム、さっきみたいに私を乗せて、庭園まで下ろしてくれる?」


 そうジェムに訴えたものの、ジェムは素知らぬ顔をするだけでなく、そっぽを向いた。


「ねえ、本当に困っているの!」

「何を困っているんだ?」


 急に背後から声が聞こえたのでびっくりしてしまう。振り返った先にいたのは、巡回をしているらしい騎士だった。


「あ――えーーっと、その、うっかりここに迷い込んでしまいまして」

「迷い込んだ? ここは関係者以外立ち入り禁止の区画だ。出入りできる場所には守衛がいたはずだが、どうやって潜り込んだのだ?」

「あ~~~、いや~~~、その~~~」


 しどろもどろとなってしまう。やはりここは通常、立ち入ってはいけない場所だったのだ。


「別室で話を聞かせていただこう」

「いえ、私、怪しい者ではありませんので!」

「怪しさしかないだろうが!」


 そう言って騎士は私へ腕を伸ばす。しかしながらその騎士の腕は見えない何かに阻まれた。


「なっ――!?」


 騎士には突然目の前に壁が現れたような不可解な状況に思えただろう。けれども私には、大理石のような分厚い壁に変化したジェムの姿が見えていた。


「なんだ!? お前、変な魔法でも使ったのか?」

「いえ、魔法ではなく――」

「不審者め! まさか先ほどの騒ぎの犯人はお前ではないのか!?」

「いやいや、まさか!!」


 城内で何か起こったのだと思っていたが、犯人がいるような騒動だったとは。


「誰か! 応援を! ここに事件の犯人がいる!」

「ええええ~~~~!?」


 騎士の呼びかけに反応し、ぞろぞろと集まってくる。

 それに合わせ、ジェムは壁の範囲をさらに広くしていた。

 私を見つめ、大丈夫だからと言わんばかりの力強い眼差しを向けている。

 いいや、そういうことではなくって。

 先ほどの騎士は剣を抜き、鋭い切っ先を私へ向けていた。他の騎士達もあとに続く。

 なんだかとんでもない事態になった。


「あの~~、よろしければその~~、ヴィルフリート・フォン・リンデンブルク様をこの場に呼んでいただきたいのですが」

「大公のご子息をどうして呼ばなければならない!?」

「私の潔白を証明できると思うんです」

「嘘を言うな! 嘘を!」


 もうこうなったら何を訴えても信じてもらえないのだろう。悲しいけれど、これが現実なのだ。

 こうなったら最後の手段である。


「ジェム、例の魔法巻物をよろしく!」


 これで伝わるかどうかわからなかったものの、ジェムは口から一枚の魔法巻物を吐き出した。どんぴしゃでヴィルを召喚できる魔法巻物だった。やはりこの子は賢い。

 ただそれだけなのに、周囲の人々には何もないところから魔法巻物が飛びだしてきたように見えたようだ。明らかに警戒し、怯えた様子を見せている。


「お前、何を――!?」

「今からヴィルフリート・フォン・リンデンブルク様を召喚します」


 ヴィルから賜った彼を召喚できる特別な魔法巻物。三枚貰っていたのだが、一枚は雪山課外授業のさい、救助してもらうために使ったのだ。

 二枚目を遠慮なく破る。すると床に魔法陣が浮かび上がり、ヴィルが登場した。


「ミシャ!?」

「ヴィル先輩!」


 思わず抱きついてしまう。

 ヴィルは集まった騎士達を見てギョッとしていた。

 

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