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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
四部・第二章 人間関係のあれこれ

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パーティー会場にて

 皆、私がヴィルと婚約すると聞いて驚くだろう。誰もが貴賤結婚だと囁くに違いない。

 ただこの婚約はエルノフィーレ殿下とヴィルの結婚を妨害するという、政略的なものだ。今回の作戦は国王陛下も後押ししてくれている。

 家柄の差とか、育ちとか、気にする必要はない。

 ヴィルの婚約者として、私にしかできないお務めとして、最後までやりきるしかない。


 ただ、こういう大舞台は慣れていないので、ソワソワしてしまう。堂々としなければならないのに、きちんと振る舞えるか心配なのだ。


 会場までの距離が妙に長いように感じる。

 普段は履かないヒールの高い靴だからだろうか。それとも不安な気持ちが足かせとなっているのか。

 ぐるぐると考えていたら、ヴィルが話しかけてくる。


「ミシャ」

「はい?」

「今日のドレス、よく似合っている」

「ありがとうございます」


 褒められると照れてしまう。ドレス自体がすばらしいものだからと返すと、それを私が着ているからいいのだ、と返してくれた。

 国王陛下とレディ・バイオレットのおかげでドレス問題は解決したのだ。ヴィルも褒めてくれたので、今の私には何も恥ずべき部分などない。


「いい色合いのドレスだ」

「ヴィル先輩の瞳の色をイメージして、選んでいただいたんです」

「そうだったのか」

「はい!」


 ヴィルは嬉しそうに目を細める。

 アリーセやノアの提案がきっかけでそういう流れになった、と状況を説明した。


「実を言えば、このポケットチーフはミシャの瞳の色を選んだんだ」


 胸ポケットに差すポケットチーフは白が基本だが、今日は私との婚約をお披露目する日なので、特別に青にしたという。


「ぜんぜん気づいていませんでした!」

「意外と合うだろう?」

「はい、すてきです」


 そんな会話をしているうちに、広間へ続く入り口へと行き着く。

 侍従からの視線にヴィルが頷くと、扉が開かれた。

 中にいた侍従が名前を読みあげてくれる。


「リンデンブルク大公家嫡男、ヴィルフリート様――及びリチュオル子爵令嬢、ミシャ様の入場です!」


 よく通るはきはきした声だったので、会場中の視線が集まる。仰々しい入場となってしまった。


 あっという間に人に囲まれてしまう。

 最初にやってきたのは私の保護者ガーディアンであるレヴィアタン侯爵夫妻とご子息であり、騎士でもある長男エグモント卿、次男エグムント卿だった。


「どうも、お二方、健勝なようで何よりだ」

「レヴィアタン侯爵やご家族も元気そうで」


 レヴィアタン侯爵と夫人はめったに社交界に姿を現さないようで、余計に注目を浴びていた。

 ヴィルはにっこりと笑みを浮かべつつ、レヴィアタン侯爵に報告する。


「実はお伝えしたいことがあって」

「なんぞ?」

「彼女――ミシャ嬢と婚約が決まったと」

「おお、なんともめでたい! お似合いのふたりだ!」


 レヴィアタン侯爵がそう言うと、夫人と兄弟も頷き、拍手してくれた。

 周囲にいた人々はヴィルの報告を聞いて驚いた様子でいる。

 すぐに気づいた。これは注目を徹底的に集め、私達の婚約を知らせるためのパフォーマンスだったのだと。

 さすがヴィルである。その辺も計算なのだろう。

 それから少しだけ言葉を交わすと、レヴィアタン侯爵家の面々はいなくなる。

 待っていましたとばかりに、大勢の人々がおしかけてきた。

 皆、ヴィルと私の婚約を祝福し、温かい言葉をかけてくれる。

 最初にレヴィアタン侯爵家の方々が祝ってくれた効果なのだろう。というか、祝福しなければ許さない、とばかりの圧力があったのかもしれない。


 人が途切れたタイミングで、エルノフィーレ殿下がやってくる。

 彼女はジルヴィードと腕を組み、登場した。

 真っ赤なドレスをまとった姿はなかったが、地味な茶色のドレスを着たリジーが続いているのを発見した。おそらくあのドレスを脱がないと参加させない、と言われてしぶしぶ着替えたのだろう。ふてくされたような表情が物語っている。


 ヴィルはやってきたジルヴィードを見て、ぼそりと呟いた。


「あれは――信じがたいくらい似ているな」


 近くにいた参列者達も、ちらちらとヴィルとジルヴィードを見比べている。


「少し似ている程度かと思っていたが、ここまでとは」


 そんな中、ジルヴィードと腕を組むエルノフィーレ殿下は、これまで見たことがないくらいの優しい笑みを浮かべていた。

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