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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
四部・第二章 人間関係のあれこれ

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歓迎パーティーへ

 とうとうエルノフィーレ殿下の歓迎パーティー当日を迎えた。

 〝レディ・バイオレット〟のドレスは前日に届く予定だったのだが、仕上げに時間がかかっているようで、ギリギリになってやってくる。

 身なりを整えてくれる人達を派遣してくれたので、非常に助かった。

 なんでも学校を通して校内に入る許可を取ってくれたらしい。

 リジーのやらかした件をきっかけに、〝レディ・バイオレット〟のお店と学校側のつながりができていたようだ。

 ちなみにリジーのでたらめな主張は嘘だということがわかったようだが、騒動を起こした本人は素知らぬ顔をしていた。

 ホイップ先生がリジーを呼びだして説教しようか、と聞いてきたが、今回は黙っていてほしい、と頼み込む。

 というのも、ジェムが公開した映像の影響で、クラスメイト達はリジーをあからさまに避けるようになっていたのだ。これまでエルノフィーレ殿下のご威光でチヤホヤされていたのに、誰も近寄らなくなったのである。

 リジー本人はその原因について気づいていないようで、「変な奴ら!」と言うばかりだった。

 信頼は一度失うと取り戻せないのである。制裁としては十分だろう。

 そんなことよりもドレスだ。

 渾身のドレスはエメラルドグリーンの布地が美しい一着だった。胸回りには精緻せいちなレースが施されており、真珠みたいな光沢のあるベルベットのリボンがあしらわれ、スカート部分には星のようなダイヤモンドがちりばめられている。

 どの角度から見ても夢みたいにきれいな一着だった。

 そんなドレスを着せられただけでなく、髪結いや化粧までしてくれた。

 全部自分でしようと思っていたので、本当にありがたい。

 〝レディ・バイオレット〟の店員さんが持ってきてくれた姿見を覗き込むと、そこには魔法にかかって変身したような私の姿が映っていた。まるでシンデレラである。


「いかがですか?」

「すごいです! その、ドレスとお化粧、それから髪結いが! すばらしいとしか言いようがありません」

「それはお嬢様の着こなしあってのことですよ」


 嬉しいことを言ってくれる。今日はその言葉を素直に受け止めよう。

 時間になると、迎えの馬車が敷地内にやってきた。これは王家が手配したものらしく、豪華絢爛な馬車だった。

 本当にシンデレラみたいだ。

 うっとりしていたら、馬がただの白馬ではないことに気づく。背中から翼が生えている幻獣ペガサスだ。

 もしかして空飛ぶ馬車なのだろうか。ドキドキしてきた。

 ジェムは透明な腕輪に変化し、私の手首に巻き付く。珍しく、今日は同行してくれるらしい。ペガサスが引く馬車は初めてで若干不安なので、とても嬉しい。

 学校の敷地内から郊外を走り、街に到着すると馬車が列を成している様子が窓から見えた。エルノフィーレ殿下を歓迎するためにたくさんの貴族が招待されているのだろう。

 これは到着までに時間がかかるぞ、と思ったのだが、ここでペガサスが空を飛ぶ。


「わあ!」


 馬車は大きく揺れることはなく、スムーズな走りを見せてくれる。

 窓の外に大きな魔法陣が浮かんでいるので、車体は魔法で制御されているのだろう。

 おそらく御者は魔法使いなのだ。


 空は他の馬車が通っていないので、すいすい進むことができた。

 おかげさまで三時間はかかりそうな渋滞だったが、五分で王城に行き着くことができたのである。


 馬車から降りて御者に感謝の気持ちを伝える。

 はてさてここから先、どこを目指せばいいのか、と思っていたら迎えのメイドがいて、通常の招待客とは異なる入り口まで案内してくれた。

 貴賓専用のエントランスと個室があるようで、どちらか選べるようだ。

 個室になんか通されたら緊張して気が気ではないので、エントランスで待たせていただく。

 受付で聞いたのだが、ヴィルはまだきていないようだった。

 エントランスにはまだ誰もおらず、暇つぶしに歴代の国王陛下の肖像画を見て回る。

 最後に飾られていたのは、子どもが描いたような拙い絵。それは双子の赤ちゃんらしきものが描かれていた。これはいったい……と思って覗き込むと、急に私の姿が描かれだす。


「なっ!?」


 驚くのと同時に、その絵はジェムとなった。


「ちょっ、ジェムだったの!?」


 変化を解いたジェムが、楽しかった? とばかりに私を見つめていた。

 絵画を眺めるのに集中するあまり、ジェムがいなくなったことに気づいていなかったのだ。


「暇つぶしに付き合わなくっていいから、大人しくしていてちょうだい」


 そう言うと、ジェムは透明な腕輪に戻って私の手首に巻き付いた。

 ヴィルはまだだろうか、なんて考えていたら、コツコツコツ、という足音が聞こえた。

 やってきたのは――。


「あら、ミシャじゃない」


 今、会いたくない女ナンバーワン、リジーだった。

 

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