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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
四部・第一章 衝撃の転校生

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届いた手紙

 ヴィルは国王陛下から呼び出されているようで、私はひとりで帰宅することとなる。

 何やら手紙が届いていたようで、チンチラが持ってきてくれた。


『手紙、届いた』

「ありがとう」


 チンチラに続いて他の子達もやってくる。

 私が授業を受けている間、温室で作業をしていたようで、髭や毛に土が付いていた。

 手紙をポケットに入れてハンカチを取りだすと、一匹一匹土を払ってあげる。

 ジェムもやってくれと近づいてきたが、土なんか付着していない。

 けれどもやらなかったら拗ねるだろうと思って、適当にパッパと払っておく。

 すると、飛び跳ねて喜んでいた。


「みんな、おやつの時間にしましょう」


 そう声をかけると、皆わーい! と喜んでくれた。

 昨日焼いておいたカステラを切り分け、みんなに分けてあげる。働きに対する報酬だった。

 彼らにはいろいろなお菓子を焼いてあげているが、一番のお気に入りはカステラらしい。何を食べたいか、と聞くと必ずと言っていいほどカステラと答えるのだ。

 おかげで、週に三回くらいカステラを焼いている。

 列の最後にはなぜかジェムが並んでいた。皆がおいしそうに食べているので、欲しくなってしまったのか。

 これまで私の作った物を欲したことなんてなかったのに。

 まあいいか、と思ってジェムにもカステラを分け与えた。

 ジェムは触手を伸ばして受け取り、口ではなく腹部にカステラを入れ込む。


「いや、食べ方が独特……。口があるんだから、そこから食べたらいいのに」


 胃に直接ぶちこんだ感じなのだろうか。

 よくわからないが、ジェムが嬉しそうな様子だったのでよしとしよう。

 チンチラ達と温室の確認をしたが、私がするよりも丁寧に手入れがなされていた。

 みんなに感謝の気持ちを伝え、いい子、いい子と撫でて回る。

 ここでも、最後にジェムの姿があった。

 仕方がないと思って、ジェムも撫でてあげる。


「はいはい、ジェムもいい子!」


 満足したのか、ジェムはどこかに転がっていった。

 夕食は鶏肉と野菜を煮込んだスープにしよう。野菜をきれいに洗って、切らずに皮のまま鍋に入れて鶏肉と一緒に煮込んでいく。材料がくたくたになるまで煮込む、やる気ゼロで作るスープだった。

 ことこと煮込ませている間、私は届いた手紙を開封した。

 妙に手触りがいい、上質な封筒だったので、嫌な予感がしていた。差出人も確認せずに、ポケットに詰め込んでいたのだ。

 美しい文字でミシャ・フォン・リチュオル様へ、と書かれてある。

 封筒をひっくり返すと、王家の紋章入りの封蝋が押されていた。


「こ、これは……!」


 見なかった振りをしたかったものの、相手が相手なのでそうもいかない。

 すぐに開封し、中を確認した。

 入っていたのは、ルームーンの第二王女エルノフィーレ殿下を歓迎する夜会への招待状である。

 開催は十日後、王宮にて開かれるようだ。

 招待するならば、もっと早くしてほしい。いきなり言われても、その場に相応しいドレスなんて持っていないのに。

 文句を言いたくなったが、私が招待されたのはヴィルの婚約者だからだろう。

 ヴィルから話を聞いていたときに、私も行動を起こすべきだったのだ。

 とは言っても、両親に相談すること以外できなかったのだが……。

 十日後にドレスが必要だと言われても、両親は困るだけだっただろうが。

 さて、何を着ていこうか。

 社交界デビューのドレスは借り物で、あったとしても、あれは特殊な形のドレスゆえ、他の夜会に着ていけないのだ。

 どうしようか、と頭を悩ませているところに、もう一枚、何か入っていることに気づく。


「こ、これは――!」


 封筒には招待状の他に、ドレスを販売する、〝レディ・バイオレット〟の商品の引換券が入っていた。

 オーダーメイドの予約は三年先、既製品も店頭に並んですぐに売り切れるという、超絶な人気店である。

 私がドレスで困るだろうことは、お見通しだったのだろう。

 ただ、こういうお店に行ったことなどないので、緊張してしまいそうだ。

 アリーセかノアが一緒に来てくれるだろうか。

 明日、ダメ元で誘ってみよう。


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