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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
四部・第一章 衝撃の転校生

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監督生のお仕事

 ノアの言葉が響いたのか、次の時間からリジーは眠らなくなった。

 けれども盛大な欠伸を繰り返し、片肘をついて退屈そうにしている。

 その態度もどうなのか、と思ったものの、眠るよりは百倍マシだろう。

 魔法に興味がないのであれば、エルノフィーレ殿下のお付きなんてやらなければいいのに。

 ツィルド伯爵もリジーを抜擢するなんて、人を見る目がなさ過ぎるだろう。

 お付き役として相応しいのは、アリーセのような育ちや家柄のよい淑女だろうに。

 エルノフィーレ殿下はリジーについて興味はまったくないのか、彼女が何をやっても知らん顔でいた。

 それもそうだろう。自国から連れてきた者でないのならば、王女である彼女が気にかける必要なんてない。

 これからどうなるのか、と心配しているうちに授業は終了となる。

 次はお昼休みだ。

 エルノフィーレ殿下を食堂へ案内しなければならないのか、などと考えていたら、レナ殿下とノアが王女殿下に接触していた。

 どうやら昼食を一緒にしないか、と誘っているらしい。

 エルノフィーレ殿下はこくりと頷き、応じたようだ。

 リジーは金魚の糞のごとく、あとをついていっていた。

 レナ殿下とノアに心の中で盛大に感謝したのは言うまでもない。


「なあなあ、ミシャ」

「何、エア」

「ミシャの従姉、なんかすごいな」

「すごいでしょう? 悪い意味で」


 あそこまで自由奔放に振る舞うなんて、一族の恥としか言いようがない。

 リチュオル姓でなくてよかった、と思ってしまったくらいだ。


「なんか、とんでもなく仲悪いみたいだけれど、何かあったのか?」

「それは――」


 わかりやすく一言で婚約者を寝取られた、というのはエアやクラスメイト達には聞かせたくない話だ。

 なるべく言葉をやわらかくして、周囲に聞こえないよう、ひそひそ声で説明する。


「元婚約者が、彼女と浮気をして子どもを作ったの」

「えーーーもが!」


 あまりにも大きな声をだすので、慌ててエアの口を塞ぐ。


「ってことは、ミシャの従姉、子持ちなのか?」

「いいえ、違うと思うわ。妊娠していたとしたら、まだ出産していないと思うの」

「だったら、流産したとか?」

「わからないわ」


 とにかく、現在のリジーは妊娠中には見えない。

 おそらく何かあったのだろうが、これに関してはセンシティブな問題で、彼女に直接聞ける話題ではないだろう。


「ミシャ、もともと婚約者がいたんだな」

「言ってなかったかしら?」

「たぶん、聞いてなかった気がする」


 いろいろあったんだな、とエアは気の毒そうに肩を叩いてくれた。


「でも、婚約破棄できたから、私は魔法学校に入学できたの。リジーのことはあまり好きではないけれど、恨んではいないわ」

「寛大だな、ミシャは」

「そうかしら?」

「そうなんだよ」


 ここでエアが「ミシャのお迎えがきたみたいだ」と言って廊下側の窓を指す。そこにはヴィルの姿があった。

 エアと別れ、ヴィルと落ち合う。今日もお弁当を作ってくれたようだが、向かった先は監督生長室だった。


「今日は監督生の仕事について説明する」

監督生長ハイ・プリーフェクト、よろしくお願いします!」


 その前に、お昼をいただく。

 お弁当の中身はカスタードパイに美しくカットされた果物。ヴィルがお皿に取り分け、オシャレに盛り付けてくれた。さらに紅茶も淹れてくれるという、至れり尽くせりであった。

 ナイフとフォークでいただく。

 パイ生地はサクサクで、果物との相性は抜群。紅茶ともよく合う。


「ミシャ、どうだ?」

「最高においしいです!」 


 パイ生地は昨晩から仕込んでいたものらしく、バターの風味がすばらしくて、職人顔負けの仕上がりであった。


「日に日に料理の腕が上がってきていますね」

「だろう?」


 もうすでに、私のレベルは追い越しただろう。

 ここ最近は、王都の喫茶店で提供されているようなクオリティの料理を作るのだ。


「どんな料理を作ったらミシャは喜ぶのか、と考える時間が一番楽しい」

「そ、それはとても光栄です」


 思い返すと、私にもそういう時間があったな、と振り返る。

 誰かのためを思って作る料理は、とても尊いものだと改めて思った。


 昼食後は、監督生の仕事についてヴィルから教えてもらう。


「まずこれを」


 それは生徒手帳に挟めるような、校章入りのカードだった。


「これは食堂を無償で利用できるものだ。監督生全員に支給される」

「そ、そんな特典があるのですか!?」

「ああ。その代わり、食堂にいる生徒を監督する義務が生じるがな」

「仕事込みの特典でしたか」


 なんでもヴィルは人混みが得意ではないので、一度も食堂にいっていないという。


「食堂の監督は強制ではないのですね?」

「ああ。食堂を利用する代わりに課せられる仕事だな」

「なるほど」


 食堂では監督生が目を光らせているイメージがあったのだが、大きな見返りがあったようだ。


「ミシャはどうする?」

「食堂の利用ですか?」

「ああ」

「そうですね。せっかくいただいたので、積極的に使えたらな、と思っているのですが」

「わかった。ならば私も付き合おう」


 人混みが苦手なのではないのか、と聞いたら、「ミシャと一緒ならば気にならない」と言っていた。

 気にならないんかーーい。

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