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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
四部・第一章 衝撃の転校生

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呆れたリジーの態度

 エルノフィーレ殿下を教室へお連れすると、クラスメイト達の注目が集まる。

 皆、王女殿下相手にどう接していいものか、わからないのだろう。

 そんな中で、行動を起こしたのはレナ殿下だった。


「エルノフィーレ殿下、初めまして。私はレナ・フォン・ヴィーゲルトと申します。お会いできて光栄です」


 レナ殿下は一応、王太子ということは隠して学校に通っているものの、一度お披露目をしたので、その設定も死んでいるも同然だろう。

 エルノフィーレ殿下は相手が王太子だと把握しているのか、丁寧な態度で挨拶を返していた。


「わたくしのことはどうぞ、エルノフィーレとお呼びくださいませ」

「では、私はレナと。お互い、敬語はなしにしましょう」

「ええ、そう、ね」


 王族同士の挨拶が終わると、続いてノアがやってきた。

 リジーのさらに上をいく堂々とした態度で、エルノフィーレ殿下に話しかける。


「初めまして。私はレナ様の〝婚約者〟である、ノア・フォン・リンデンブルクです。どうぞ、お見知りおきを」


 エルノフィーレ殿下がレナ殿下との結婚を望んでいる、という噂話を耳にしていたのか、婚約者という言葉を強調させ、強くけん制するような自己紹介だった。

 なんというか、強い。

 エルノフィーレ殿下は顔色ひとつ変えずにいたのが、さらにすごいなと思った。

 少々ぴりついた挨拶を終えると、ホイップ先生がやってくる。

 エルノフィーレ殿下は新しく用意された一番前の席に座り、リジーはその後ろの席に腰を下ろしていた。


「さてさて、新しいクラスメイトの紹介はしなくてもわかるだろうけれど、ルームーンの第二王女エルノフィーレ殿下と、そのお友達、リジーが転入してきたのお。みんな、空気をよ~~~く読んで、仲良くしてねえ」


 今後隣国の王女相手にいらんことはするな、というニュアンスが含まれたお言葉だった。

 クラスメイト達は戦々恐々とした顔を浮かべ、神妙に頷く。

 同じクラスに王太子と隣国ルームーンの第二王女が在籍するという、スペシャル高貴なクラスが爆誕してしまった。今後、どうなるのか。

 大きな事件だけは起きないでくれ、と願うばかりであった。


 ◇◇◇


 一限目の授業は魔法歴。魔法の歴史について順を追って学ぶ授業だ。

 リジーは一限目から爆睡するという暴挙にでていた。教科書はださず、机にハンカチを広げて眠るという、念の入れようである。

 彼女は本当に魔法を学ぶ気があるのか、と疑問だったものの、さらさらなかったようだ。

 先生も注意するものの、リジーはまったく起きなかった。それなのに、休み時間になると起きて、元気いっぱいな様子でエルノフィーレ殿下に話しかけていた。

 そして、次の授業が始まると眠り始めるのである。

 監督生として見過ごすわけにはいかないと思い、休み時間になった瞬間、リジーを起こしにいった。


「ねえ、リジー、起きて」

「うるさいわねえ!」

「いいから起きて」

「何よ!」

「何よ、じゃないわ。授業中、眠るなんて先生に失礼よ!」


 ここでリジーは顔を起こし、ムッと不快感溢れる表情を私に見せる。


「あんた、何様のつもりでこのあたくしに注意しているんだ!?」

「監督生様よ!!」

「は!? 何それ!?」


 監督生だけが持つことができる金細工とチェーンの輝きは、魔法学校になんのリスペクトもないリジーに効果は発揮しなかったようだ。


「このあたくしに意見しようだなんて、ミシャの癖に生意気なのよ!」

「まっとうな意見よ。みんなここで魔法を学びたくてやってきているのに、堂々と眠る人がいたら、授業の邪魔になるでしょう?」

「そんなの知らないんだから! あんまりやいやい文句を垂れるんだったら、養父に言いつけてやる!!」


 リジーは勝ち誇ったような顔で聞いてくる。


「ミシャ、あたくしの養父について、知っているのかしら?」

「もちろん。ツィルド伯爵でしょう?」

「そう! あんたの父親は子爵で、あたくしの養父は伯爵なの! どっちが偉いかなんて、あんたでもわかるでしょう?」

「ええ、まあ」

「見てなさい! あんたの父親なんて、あたくしの養父がひねり潰してやるんだから!」


 父親が偉いからなんだ。別になんともしない。

 リジーの養父が伯爵だからといって、他の貴族に制裁を加える権利なんてないのに、リジーはいったい何を言っているのか。理解不能である。


「リジーと話をしていると、頭が痛くなるわ」

「あたくしの言っていることが、理解できないからでしょうね」

「まあ、ある意味そうだろうけれど」


 リジーは勝った、とばかりの笑みを浮かべていた。


「見てなさい。あんたの実家は、あっという間に没落してしまうんだから!」

「――へえ、そんな権限をツィルド伯爵は持っているんだ」


 突然、私達の会話に介入してきたのは、ノアだった。


「あ、あんたは?」

「ノアだ。覚えていなかったのか、この鳥頭!」

「と、鳥!?」


 リジーの顔が怒りで真っ赤に染まる。

 ノアはリジーにぐっと接近し、他のクラスメイト達には聞こえないような低い声で囁いた。


「僕の父親はリンデンブルク大公で、この魔法学校の理事でもある。お前の養父よりもずっとず~~っと偉いんだ。だから、お前を潰すことなんて、呼吸することよりも容易いんだよ」


 意味がわかったのならば、真面目に授業を受けろ。ノアは脅すようにリジーに言ったのだった。

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