表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
四部・第一章 衝撃の転校生

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

196/432

クラスメイトとして

 ジェムは驚かれるかもしれないので、姿消しの魔法を使っていただく。

 ホイップ先生の先導で講堂にある貴賓室へ行き、エルノフィーレ殿下、リジーと会う。

 リジーは私がここにいると知っていたのだろう。目が合った瞬間、にやりと笑っていた。

 ルドルフから第二夫人の申し出があったときに見せたような、勝ち誇ったような笑みである。

 ホイップ先生はすでに挨拶していたようで、慣れた様子で私を紹介してくれた。


「この子はうちのクラスに所属する監督生で、ミシャ・フォン・リチュオルというの。わからないことがあったら、ミシャに聞いてねえ」


 エルノフィーレ殿下はスカートを軽く摘まんで上げ、優雅に挨拶してくれた。

 私も同じように、敬意を込めて頭を下げる。


「ミシャ、こちらはリジー。エルノフィーレ殿下のお付きよお」


 おまけのような紹介にリジーはムッとしていたが、ホイップ先生は気にせずに話を続ける。


「みんな、仲良く学校生活を送ってねえ」


 エルノフィーレ殿下はこくりと頷き、リジーはホイップ先生を睨む。なんとも対照的なふたりだった。

 なんというか、リジーのほうが王女みたいに堂々としているし、偉そうにしている。

 エルノフィーレ殿下は控えめで静かな印象しかなかった。

 ノアという婚約者がいるレナ殿下との結婚を目論む王女、なんて話を聞いていたが、それはルームーン側の大人の考えだったようだ。

 エルノフィーレ殿下自身は、レナ殿下との結婚を望んでいるようには思えない。


 話は終わったようなので、彼女達を教室まで案内しよう。

 それが終わったら、私のお役目も終わるはずだ。


「では、教室に移動しましょうか」

「ここ、転移用の関門ゲートがあるって聞いたけれど、それを使って校内を移動するの?」


 リジーの質問にはホイップ先生が答えてくれた。


関門ゲートは学校内の移動には使えないのよお。頑張って歩くしかないわあ」

「あたくし達、貴賓なのに!?」


 自分で貴賓を名乗るなんて新しい。

 そんなとんでも発言を聞いても、エルノフィーレ殿下はリジーに同意も非難もせず、静かにしていた。


「だったら、教室まで転移魔法で送って! あんた、エルフ族だろう? エルフ族は転移魔法が使えるって、誰かが言ってた」


 リジーの喋りは付け焼き刃なのか、話を続けるとボロがでてくる。

 それに本人も気づいていないのだから、問題だろう。

 ホイップ先生はリジーの生意気な物言いにも、笑顔で応じていた。


「ふふ、転移魔法が使えるエルフ族はいるかもしれないわねえ。でも、私は使えないのよお。ごめんなさいねえ」


 エルノフィーレ殿下は何も望んでいないのに、リジーが次から次へと我が儘を言ってくる。これではどちらが王女殿下かわからない。


「わたくしは歩けるので」


 鈴が鳴るような美しい声で、エルノフィーレ殿下は言葉を発する。

 これ以上、リジーが物申さないよう、発言してくれたのだろう。

 女神様のようだ、と拝みたい気持ちになってしまった。


「では、ご案内しますね! こちらです」


 廊下を歩きつつ、校内を案内しながら進んでいく。


「こちらは職員室で、向こう側にあるのが食堂、二階にある丸い窓があるのは図書室で――」


 私の説明を話半分に聞いたリジーは、退屈そうに言葉を返す。


「魔法学校って言っても、校内はあんがい普通なのね。動く廊下くらいあると思っていたのに」

「動く廊下?」

「知らないの? ツィルド伯爵家にはあるのよ」


 空港にあるみたいな、サイドウォークみたいなものなのか。

 ここの世界では見た覚えはないのだが、あるところにはあるらしい。


「お義父様がルームーンから取り寄せた品だと自慢していたわ」

「そ、そう」


 ルームーンは魔技巧品の文明が進んでいると聞いた覚えがある。

 きっと現代日本に負けない品々が存在するのだろう。


「えーっと、エルノフィーレ殿下が育った王宮にも、動く廊下はあったのですか?」


 そんな質問を投げかけると、想定外の答えが返ってくる。


「いいえ。わたくしが育ったところには、ないわ」


 なんと返していいかわからず、黙りこんでしまった。

 まさか、王宮に動く廊下がないなんて。

 リジーがなんてことを聞くのか、と非難めいた視線を向けてくる。

 事の発端はリジーの自慢話だったのだが、と思ったものの、これは完全に聞いた私が悪い。

 エルノフィーレ殿下に謝罪し、心の中でも反省したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ