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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
三部・第四章 いたずらしているのは誰か?

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朝食を

 寝間着に着替え、横たわる。

 ソファーベッドはふかふかで、寝心地は最高。毛布も触り心地がよく、上質な品を用意してくれたようだ。

 一晩中眠れなくって、酷くむくんだ顔で帰ったら家族を驚かせてしまうかもしれない。

 眠る前はそんな心配をしていたのだが、横になった途端に眠りに落ちてしまった。

 朝――細長く伸びたジェムに添い寝された状態で目を覚ます。

 いったいなぜ、そのような状態でいたのか。普段は私と一緒に眠ることなんかしないのに。もしかして、ボディーガードのつもりだったのか。

 なんて考えつつ、のろりと起き上がる。

 時刻は朝の六時半くらいか。

 先に着替えか、それとも洗顔か。

 迷っていたら、ごそごそという物音が聞こえるのに気づいた。

 それは私を起こさないよう、精一杯の配慮をしているような動きである。

 どうやらヴィルは早起きだったらしい。

 カーテンを少しだけ開いて、朝の挨拶をする。


「ヴィル、おはようございます」

「ミシャ――おはよう」


 ヴィルは驚いた表情で挨拶を返してくれた。

 彼はすでに着替えていて、フロックコートをまとった姿でいる。制服姿ばかり見ていたので、なんだか新鮮だ。

 そんな彼は参考書を鞄から取りだしたところだったらしい。


「起こしてしまったようだな」

「いいえ、今、起きたんです」


 ヴィルは一時間半前からこうして過ごしていたという。


「普段も早起きなのですか?」

「いや、そんなことはない。昨晩はその、ミシャがいると思ったら、緊張してあまり眠れなかっただけだ」


 よくよく見たら、ヴィルの目が血走っているような気がする。そんなバキバキの目で家族に会ったら、怖がられそうだ。

 それにしても、ヴィルが私を意識して眠れなかったなんて。

 なんだか申し訳なくて、私は爆睡していました! とは言えなかった。


「朝食にしますか? 昨日、朝、一緒に食べようと思って、いろいろ作っていたんです」

「そ、そうだったのか、感謝する。だがその前に着替えてくれ。目のやり場に困るから」


 ヴィルから指摘を受けて、胸元が大きく開いているうえに生地が薄い寝間着姿だったことに気づく。慌ててカーテンを閉め、着替えたのだった。

 着ていく服として選んだのは、魔法学校の制服である。家族に着た姿を見せていなかったので、ちょうどいいと思ったのだ。

 髪はハーフアップにして、跳ねていた毛先をブラシでちょいちょいと整える。

 カーテンの外にでると、ヴィルは参考書で顔を隠していた。身なりを整える私を見ないよう、配慮してくれているのだろう。感謝しつつ、洗面室に移動した。

 顔を洗い、歯を磨いて、化粧を薄く施す。

 魔法学校に入学する前よりも、少しだけ大人っぽくなっただろうか。

 家族は驚くかな、などと考えていたら楽しくなった。


「ヴィル、お待たせしました」

「ああ、早かっ――なぜ制服を?」

「家族に見せたくって」

「そうだったのか。よく似合っているから、ご家族も喜ぶだろう」

「ありがとうございます」


 朝食を入れたバスケットをジェムから取りだし、テーブルに並べていく。

 卵、ハム、キュウリの三種のサンドイッチに、保温鍋に作ったスープ、出汁巻き卵に蒸しサラダ。

 ソーセージを保温鍋に入れて、パリパリの状態でいただこう。

 卵焼きをヴィルにだすのは初めてだ。スープにも使ったキノコ出汁で作った一品である。

 早速ヴィルは気づいたようだ。


「ミシャ、この長方形の黄色い料理はなんだ?」

「出汁巻き卵です」


 前世で好きだった料理だと伝えると、すぐに食べてくれた。


「なんだこの、噛んだ瞬間にスープが溢れてくる不思議な料理は!」


 その後、ヴィルは「おいしい」と言ってくれたので、ホッと胸をなで下ろす。


「オムレツやスクランブルエッグよりも、この出汁巻き卵とやらのほうが好きかもしれない」

「お口に合ったようで何よりです」


 出汁巻き卵が好きならば、茶碗蒸しやおでんなどの、出汁系の料理を好んでくれるかもしれない。今度、いろいろ作ってみよう、と新たな目標を立てたのだった。


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