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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
三部・第四章 いたずらしているのは誰か?

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危機的状況

 まさかこのタイミングで先生がやってくるなんて。

 すぐさま調理室の様子を見守っていたホイップ先生が叫ぶ。


『アイン先生、だめよお! ここは彼女達に任せて~~!』


 そんなホイップ先生の叫びも、興奮状態のように見える先生には届かず。


「悪い妖精め! 覚悟!」


 あろうことか、先生は拳を振り上げて突進してくる。


『ひい!!』


 元使役妖精は私にぎゅっとしがみつき、目を閉じる。

 守ってあげなければ。

 とっさにそう判断し、元使役妖精を胸に抱く。


「なっ、リチュオル!?」


 先生は勢いを削ぐことができず、そのまま突っ込んでくる。

 奥歯を噛みしめ、元使役妖精を守るように背中を向ける。

 大きな衝撃を覚悟していたが、痛みは襲ってこない。


「――?」


 恐る恐る振り返ると、先生が天井から宙吊りになっていた。


「なっ、なんで!?」


 そう叫んだあと、よくよく確認したら先生の足に細長く伸びたジェムが巻き付き、天井からぶら下がっている状態だということに気づいた。


「ジェムが、助けてくれたのね」


 思わずノアのほうを見て言ったら、「そうみたい」と呆然としつつ言葉を返してくれた。

 次の瞬間、勢いよくホイップ先生が調理室に入ってきた。


「アイン先生、待って~~! 早まらないでえ!」


 ホイップ先生は大鷲の使い魔を連れてやってきたようだが、宙吊りになった先生を見てギョッとしていた。


「え、あの、アイン先生?」

「むが、むがが! もご!」


 ジェムが先生の口に丸めた紙を詰め込んでいたようで、悲鳴すらあげることができなかったらしい。

 一瞬の間にそこまでしていたなんて。ジェム、恐ろしい子……。


「その、ミシャにノア、大丈夫だったのかしらあ?」

「私達は平気です。それより、この子を保護したくって」

「ええ。話は聞いていたわ」


 元使役妖精をホイップ先生に渡そうとしたものの、私にしがみついて離れようとしない。どうやらこのまま運んだほうがよさそうだ。


 私達の代わりに、ホイップ先生が詳しい事情を説明してくれる。


「この元使役妖精は悪い子ではなかったみたいなの~。保護するから、乱暴はしないでねえ」


 先生はこくこく頷く。事情を理解してもらえて、ホッと胸をなで下ろした。


「えーっと、ミシャ、アイン先生の顔色が悪くなっているから、下ろしてくれる~?」

「わかりました。ジェム、お願い。優しく下ろしてあげて」


 そう頼むと、ジェムは先生を宙吊り状態から元に戻し、そっと床に着地させる。


「う、うう……!」

「あらあら、大丈夫~? 気持ち悪かったら、保健室に行ってねえ」


 ホイップ先生は先生の介抱するわけでなく、私達を転移魔法で職員室へと連れていってくれた。


 久しぶりな校長先生を前に、事情を説明し始める。


「というわけでえ、学校側の契約に問題があったようなの~」

「そうだったのか」


 使役妖精の管理は魔法生物学の先生が管理しているという。詳しい調査をするようで、任せておくようにと言われた。


「今後は使役妖精ではなく、人を雇う予定だ」


 すでに採用しているようで、明日からは使役妖精ではなく、人が清掃や備品の管理などを行うようだ。


「我々が使役妖精に長年甘えていたから、このような事態を招いてしまったようだ。迷惑をかけたな」

「いえ」

「謝罪は使役妖精にしたほうがいいのでは?」


 ノアの鋭い指摘に、校長先生は「そうだな」と申し訳なさそうに言っていた。

 その後、調査をしたところ、使役妖精を管理していたのは魔法生物学の先生の補助を務める個人指導教師テューターだったらしい。

 なんでも大量の業務を抱え込んでいた結果、使役妖精達の管理がおろそかになっていたという。

 寝不足状態で契約を交わした結果、使役妖精達を酷使させる内容となっていたようだ。

 魔法生物学の先生は減給、個人指導教師テューターは一ヶ月の謹慎処分となった。


 元使役妖精の煽動で逃げだした使役妖精の数は十体ほど。痩せ細って弱っている様子だったが、私のカステラを食べると元気いっぱいになった。

 そんな彼らは今、ガーデン・プラントの温室で働いている。

 カステラやお菓子などと引き換えに、授業で使う薬草の管理をしているのだ。

 魔法の契約を交わしているわけでなく、彼らが望んで働いてくれている。

 ホイップ先生が契約を持ちかけたものの、二度と縛られたくない、と言って断ったようだ。

 リーダー格の元使役妖精は、私がチンチラと呼んだことが気に入ったようだ。自らチンチラだと名乗っている。

 カステラが大好物となったようで、よくせがまれるのだ。

 彼らのおかげで、私は温室の仕事を毎日しなくてもよくなった。

 とは言っても、報酬であるお菓子作りをしなくてはならないのだが。


 何はともあれ、平和になったのだ。

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