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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
三部・第四章 いたずらしているのは誰か?

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使役妖精を捕まえよう!

 元使役妖精による被害は現在、仕事放棄のみらしい。

 食品や金品が盗まれた被害はないという。

 そのため、ホイップ先生は私達の罠にかかったことを驚いていたのだろう。


「中庭にはもういないわよね?」

「わからない」


 元魔法生物は賢い生き物のようだが、念のため、もう一度中庭に戻って同じ罠を仕掛けてみることにした。


「どういう罠にする? 寮の部屋に戻ったら、他のお菓子とかあるけれど」

「私のお菓子にしましょう。ノアさんのお菓子を使うのはもったいないわ」

「ミシャさんのお菓子でももったいないんだけれど!」


 カステラを盗まれたことを思い出したようで、ノアは眉をつり上げ、怒りの形相を浮かべた。


「絶対に許さない!!」

「どうどう、落ち着いて」


 冷静さを失ったら捕獲なんてとてもできないだろう。


「この事件が解決したら、みんなを招いてカステラパーティをしましょう」

「何それ!? 楽しそう!!」

「でしょう?」

「誰を誘うの?」

「エアとアリーセ――」

「レナ様と、お兄様も!」

「はいはい、みんなでやりましょうね」

「絶対だよ!」


 カステラパーティを開催するために、怪我だけは絶対にしないよう、ノアに言っておく。


「怒りで我を忘れないで」

「うん。さっきみたいな失敗はしないから」


 そんな話をしつつ、中庭へと戻っていると、猫耳ローブを着用した先生の姿を発見してしまう。

 長身で筋骨隆々な魔法体育教師だった。

 生地が破れてしまいそうなくらいパツンパツンになっていて、丈も短いのかミニスカートみたいになっている。

 ホイップ先生の言うとおり、まったく似合っていない。

 先生は虫かごをポシェットのように提げ、虫取り網を握ってキョロキョロ辺りを見回している。その様子は不審者のごとく……。

 なんだか見てはいけないものを目にしたようで、このまま顔を合わせたくなかった。ノアも同様にうんざりした表情でいる。


「ノアさん、窓から外にでましょう?」

「いいの?」

「問題ないわ」


 すぐ傍には二学年の上級生が清掃活動をしている。けれども彼らに私達の姿や声は聞こえない。

 先生達だって、元使役妖精探しをするのに必死で、私達の存在に気づいていなかった。


「窓から外にでるなんて初めてなんだけれど」

「そうなの? 私は故郷でよくしていたわ」


 玄関が遠くて面倒なときは、窓から外にでていたのだ。


「いくわよ」

「う、うん」


 私は窓枠に足をかけ、一気に登る。そして外へ飛び降りた。


「ノアさん、いけそう?」

「頑張る」


 ノアはこういうことをするのは初めてなのだろう。のろのろと慎重な様子で窓枠に登り、意を決したように飛び降りてきた。


「けっこう高いな――わっ!!」

「危ない!!」


 体勢を崩して落ちてきたが、ジェムがクッションになって受け止めてくれた。


「ノアさん、その、大丈夫?」


 大切な未来の王妃にとんでもないことをさせてしまった。

 ノアを覗き込むと、驚いた表情を浮かべている。

 けれども私と目が合うと、楽しそうに笑った。


「なんだこれ! 面白いじゃん」

「そ、そう? よかった」


 ノアを受け止めてくれたジェムに感謝する。

 命令せずとも、私が望むことを感じ取ってくれたようだ。


「いきましょう」

「そうだね」


 窓の外にあった研究棟を横切る。そこにはたくさんの生徒達がいたが、猫耳ローブの効果で誰も目視できない。


 近道をして中庭へと到着した。


「さて、どんな罠を仕掛けようかしら?」

「古典的な罠にしない?」

「穴を掘る系の?」

「そう!」

「いいわね。試してみましょう」


 ノアは使い魔であるモグラ妖精のマオルヴルフを召喚し、穴を掘らせる。

 私はジェムの中に収納していたカステラを取りだし、細かくちぎっていった。


「こんなものか」

「もう掘ったの?」

「うん。傑作だから見てみて」


 穴を覗き込むと、思っていた以上に深かった。


「これは、落ちたくない穴ね」

「でしょう?」


 一応、元使役妖精が怪我しないよう、枯れ葉をクッション代わりに入れておく。

 あとは細い枝を穴に蓋をするように重ね、そっと土を被せる。

 いい感じに枯れ葉を被せておけば、その辺の状態と変わらなくなった。


「これ、私達も穴の位置がわからなくなりそうね」

「だったらここにだけファイアー・リーフを置いておこう」

「いい考えね」


 仕上げにカステラを散らすばかりだ。


「こんな方法で、本当に姿を現すのかしら?」

「やってくると思うよ。ミシャさんが焼いたカステラは、一度食べたらやみつきになるから」

「そうだといいけれど」


 ヘンゼルとグレーテルみたいに、カステラの欠片を転々と落としていく。

 罠の上にはカステラを一切れ置いておいた。


「よし、完成ね」

「我ながら、素晴らしい仕上がりだ」


 あとは元使役妖精を待つばかりだ。

 私達は少し離れた場所から、罠にかかるのを見守る。


「……暇ね」

「……暇だ」


 自習でもしながら待とうか。

 なんて話をしていたら、ジェムが私の肩を触手でぽんぽん叩き、遠くを指差す。


「う、嘘でしょう?」


 元使役妖精が姿を現したのだ。

 両手にカステラの欠片を抱え、のこのこやってきたわけである。 

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