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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
三部・第四章 いたずらしているのは誰か?

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ホイップ先生のお願い!

「あなた達ふたりには、元使役妖精の捕獲作戦に参加してもらうわあ」

「ど、どうしてですか!?」

「そんなことよりも、掃除をしたいんだけれど!!」


 私とノアの意見は完全に一致していた。

 けれどもホイップ先生はそれを許さなかった。


「学校を救えるのは、あなた達しかいないのよ」

「そんなことないと思います!」

「国家魔法師にでも調査させたらいいじゃないか!」


 ホイップ先生は腕を組み、首を横に振った。


「残念ながら、それはできないのよお」

「どうしてですか?」

「国家魔法師は国の危機に関わる事件にしか派遣されないみたいで~」


 生徒の危機が迫っているというのに、助けにきてくれないなんて。


「元使役妖精がヴァイザー魔法学校を乗っ取って、王都に侵攻を始めるくらいしないと、国家魔法師達は駆けつけてくれないでしょうねえ」

「そんな!」

「酷い!」


 学校で起きた事件は、学校内で解決させるしかないようだ。


「ホイップ先生、ヴィル先輩を呼んでください!」

「そうだ! お兄様だったら華麗に解決してくれるはず!」

「それも無理なのよお」

「どうしてですか!?」

「お兄様に何かあったの!?」

「国王陛下が久しぶりに目を覚まされたようで、王太子であるレナハルト殿下とリンデンブルク大公子息であるヴィルフリートに伝えたいことがあるから、と呼び出されたのよお」


 なんでも国王陛下は一日のほとんどを寝て過ごし、起きたときも意識が曖昧だったようだ。そのため、はっきり覚醒している時間は大変貴重だという。

 レナ殿下が王宮へ向かったとのことで、一緒に組むことになっていたアリーセはエアのペアに合流し、清掃活動をしているようだ。


「そんなわけだから、協力してほしいのよお」


 苦い表情を浮かべる私達に、ホイップ先生は小さな声で心揺らぐようなことを言う。


「元使役妖精を捕まえたら、ベネフィットがたっぷり貰えるかもしれないわあ」


 ベネフィットというのは、生徒の特別な行動に対する学校側からのご褒美である。

 これまで私は、レストランの利用権や購買部のアイテムを貰える引換券など、働きに応じてさまざまな恩恵を得たのだ。


「あなた達だけが頼りなのよお」


 私はノアと顔を見合わせる。ノアは呆れたように肩をすくめていた。


「どうやら私達も協力するしかないようね」

「まあ、ベネフィットを貰えるかもしれないし、頑張ってみる?」

「そうね」

「ありがとう~~!!」


 ホイップ先生は棚から箱を取り、蓋を開く。中に入っていたのは猫耳のローブだった。


「これは隠密ローブといって、他の人達からは姿が見えないようになる魔法が付与された品なの。声も遮断してくれるのよお」


 現在、教師はこれを用いて元使役妖精探しをしているらしい。


「通常は生徒の見回りのときに使う物なんだけれど、今日はあなた達も着用してもらうわあ」


 皆、掃除をしているのに、私達が歩き回っていたら上級生などに咎められる可能性があるので、着用を命じられた。


「他にも、使役妖精に見つかりにくい、という特性もあるわあ」

「〝見つかりにくい〟ですか」

「〝見つからない〟わけじゃないんだね」

「よく気づいたわねえ。そうなのよ~」


 元使役妖精は魔法に精通しているようで、罠系の魔法も見抜いてしまうという。


「ある程度気配は遮断するけれど、元使役妖精に魔力を察知されたら意味がないものになってしまうわねえ」


 魔力を察知されない魔法なんて習っていない。やはりヴィルに協力してもらったほうがいいのでは、と思ってしまったが、国王陛下のもとにいるというのならば呼び出すことも憚られる。


「その、一応頑張ってみますが、期待しないでくださいね」

「僕らはひよっこ魔法使いだから」

「わかっているわあ」


 ホイップ先生は私とノアの手を握り、無理はしないように言う。


「もしものときは、私が駆けつけて助けてあげるから~」

「ホイップ先生……!」


 じーん、としていたらカチリ、という音が聞こえた。

 腕に金色の腕輪が装着されていた。


「ん?」

「何これ?」

「映像記録用の腕輪よお」


 ホイップ先生がそう口にした瞬間、研究室に巨大モニターみたいな映像が浮かび上がった。


「あなた達ふたりの視界を共有するアイテムなの~」

「助けに駆けつけるって、実際に行動を監視するからできることだったのね」

「腕輪、言ってからつけてほしかった。でも、この腕輪、なんだかかわいくて少し悔しい」


 ぶつくさ文句を言いつつ、猫耳ローブを着用した。


「やっぱり、あなた達くらいの子が着るとかわいいわねえ」


 ホイップ先生は教師全員分の猫耳ローブを作ったらしい。


「先生達の似合わないっぷりったら、本当に酷かったわあ」


 他の人に猫耳ローブを着た姿は認識できないようだが、制作者であるホイップ先生の目には見えるという。

 猫耳は不要なのでは、と思ったが、かわいくないと作るやる気がでなかったようだ。


「あと、これは魔法を跳ね返すお守りアミュレットよお」


 ホイップ先生が差しだしてくれたのは、ドロップ型の魔宝石があしらわれた首飾り。ありがたく受け取る。


「効果は一度だけだから、気をつけてねえ」

「わかりました」

「ありがとう」


 ジェムにも姿消しの魔法で付いてくるように言っておく。

 いつの間にかやる気が復活していたのか、球状に戻っていた。


「ジェム、頼りにしているからね」


 任せろ、と言わんばかりにジェムはチカチカ輝いていた。


「あと、捕獲道具はこれねえ」


 差しだされたのは、夏休みに小学生が持っていそうな虫かごと虫取り網だった。


「えーっと、これで捕まえるんですか?」

「なんだかしょぼいというか、なんというか」

「そんなことないわあ。これはその網で捕まえると、かごのほうへ転移されるとっておきのアイテムなのよお」


 ホイップ先生が徹夜して完成させた魔技巧品らしい。

 見た目のしょぼさに反してすごいアイテムだったようだ。


 他の教師陣や校長先生には私達の協力について報告してくれるという。

 一刻も早く解決してすっきりしたい。私とノアは元使役妖精探しをするため、ホイップ先生の研究室を飛びだしたのだった。

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