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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
三部・第四章 いたずらしているのは誰か?

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突然の学校行事!?

 ホームルームで突然、朝から学校行事を行う、とホイップ先生から宣言があった。


「今日は一日中、校内清掃を行いま~す!」


 クラスメイト達はガヤガヤと騒がしくいていたが、ホイップ先生が「お喋りしないの~」と注意すると静まり返る。

 クラスメイト達は戸惑ったり、小首を傾げたりしている。

 皆が不審がるのも無理はないだろう。

 学校行事というものは一年を通して計画されているため、追加で行われたという話は聞いたことがないから。

 おそらくだが、来月にルームーンの第二王女がやってくるので、きれいにしておきたいのだろう。

 ただそれを、生徒達にやらせることが意外だった。


「ペアになって、担当区域を清掃してもらうから、一人一枚引いてねえ」


 くじを待つ間、エアが話しかけてくる。


「なあ、ミシャ。この学校行事、どう思う?」


 年間行事には夏に行われるお祭りの翌日に、王都をきれいにする地域清掃の活動が予定されている。

 けれども今日みたいに突然学校行事が入ってくることなどなかったので、エアは不審に思っているようだ。

 私はこっそりと学校側の目論みについてエアに伝える。


「ここだけの話なんだけれど――」


 エアには隣国の貴賓が留学してくるので、きれいにしておきたいのでは? という話を聞かせた。


「そうだったのか。でも、どうして俺らがしなければいけないのか」

「それもそうよね」


 校内の清掃は普段、使役妖精が行っている。そのため、生徒達が掃除をせずとも、どこもかしこもピカピカなのだ。


「校内清掃を通して、学校をきれいに使おうと思う心を育てたいとか?」

「あー、ありうるかもな」


 何かしらの狙いがあるのだろう。


「清掃区域、ミシャとペアがいいなー」

「よく働きそうだから?」

「違う。掃除の方法を知ってそうだから。他の奴ら、どうせ掃除なんてしたことがない人ばかりだろう? そういう奴とペアを組んだら、掃除方法からおしえなければいけなくなると思って」

「た、たしかに」


 エアは「これだから貴族は~」などと言っていたものの、一応私も貴族の家に生まれた娘である。そのことを忘れないでほしい。


「まあでも、慈善活動で修道院の掃除をしている人もいるだろうから、全員が全員知らないわけではないと思うわ」

「あー、なるほど。普段から奉仕活動をしているなんて、貴族って大変なんだな」

「そうね」


 前世でも休日に海岸清掃やバザーとかの奉仕活動があったな、と思い出す。

 せっかくの休日なのに会社の人達と集まって無償で働かなければならない辛さは言葉にできない。

 バーベキュー大会や就業後の飲み会なども奉仕活動にカウントしたいくらいだ。

 それに比べたら、貴族の人々の奉仕活動は恵まれない人達への施しなので、辛い思いはしていないだろう。

 改めて思う。奉仕活動というのは、余裕がある人々が行うものであるべきだ、と。

 ……なんて考え事をしている間に、私がくじを引く番となった。

 一枚引いて紙を開くと犬の絵だった。

 ホイップ先生が黒板に清掃区域を示す構内図を貼りだしており、犬の絵は中庭に描かれてある。ここを掃除しろ、ということなのだろう。

 問題はペアである。

 エアは猫の絵が描かれていたようで、ペアの相手ではない。

 私は犬の絵を掲げ、声をかけてみる。


「犬の絵の人、誰~?」

「僕だ」


 ノアが私と同じ犬の絵を掲げていた。


「ミシャさんだったんだ」

「よろしくね」


 エアは比較的仲のよい男子生徒、レナ殿下はアリーセとペアらしい。

 ひとまずお昼まで清掃するように、という指示があった。


「清掃道具は構内図を赤く塗った場所にあるから、各々取りにいってねえ」


 ちなみに先生達と使い魔が校内を見回り、サボっていないか監視するという。


「もしもいけないことをしていたら、内申点に響くから、しっかり掃除するのよお」


 授業と授業の間にある休み時間は休憩してもいいと言われたので、ホッと胸をなで下ろす。


「ミシャさん、行こう」

「そうね」


 中庭は範囲が広いので、気合いを入れてやらなければ。

 壁に張り付いていたジェムに声をかけると、そのままの姿ではらり、と床に落ちてくる。まるで落葉する葉っぱみたいだ。

 それから球体にならずに、薄い状態でついてくる。海を泳ぐヒラメのごとく、体を波打たせて前進していた。

 どうやら今日はやる気がないようだ。

 生徒達の注目を集めてしまうので、ジェムを抱き上げ、くるくるに巻き、筒状にして運んであげることにした。

 そんなジェムの様子にノアはギョッとしていた。


「ミシャさんの使い魔って、前から思っていたけれど個性的だね」

「そうなの。慣れたら気にならなくなるから」

「ふうん」


 使い魔を連れて歩いているのは私くらいで、ほとんどの人達は自室に待機させているという。

 ノアと契約しているモグラの魔法生物、マオルヴルフはふかふかの土を被って眠るのが好きらしく、普段は寮の庭にいるようだ。


「ジェムは私と一緒にいたがるのよね」

「懐かれているんだ」

「たぶん」


 気まぐれな子なので、いつもいつでもべったりというわけではない。

 面倒くさいと思ったらついてこない日もあるし、今日みたいにしぶしぶやってくる日もある。


「なんか、特別な関係って感じでいいね」

「そう見える?」


 この、平べったくなったジェムを筒状にして運ぶ様子が?


「マオルヴルフは抱っこが苦手だから、羨ましいかも」

「そうなのね」


 これを抱っこと言っていいものなのか。なんだか違う気がするのだが……。


 マオルヴルフは鋭い爪を持っているので、ノアに怪我をさせたくないので嫌がっているのかもしれない。

 子の気持ち、親知らず……みたいな感じなのか?

 少し違うか。


「ねえミシャさん、中庭の清掃って何をするの?」

「枯れ葉を掃いたり、ゴミを拾ったりするんじゃない」


 なんて話をしつつ、中庭を目指した。


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