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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
三部・幕間 エアの誕生パーティーを開こう!

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誕生日のケーキについて

 今日はエアの誕生日のケーキがどんなものがいいか、話し合う。


「今のシーズンは果物が少ないから、彩りは期待できないわよね」

「果物? 一通りあるけれど」


 ノアの言葉にアリーセも頷く。


「魔石熱を使った温室栽培の果物がいろいろありますのよ」

「そうだったわね」


 お金をかければ、季節外れの果物などいつでも入手できるようだ。

 基本的に旬の果物しか食べないので、一年中食卓に果物が並ぶ裕福な貴族の事情は知らないわけである。


「でも、旬の果物に勝るものはありませんわ」

「それはたしかに」


 魔法で栽培する果物は品種改良され、甘みは強く、酸味は弱く作られているようだが、旬の盛りを迎えた果物には劣るようだ。


「果物にこだわるよりも、エアは個性的なケーキのほうが喜ぶのではなくって?」

「たしかに、それはあるかもしれないわ」

「で、具体的にはどうするの?」


 シーーンと静まり返る。


「花火があがるバースデー・キャンドルとか思いついたけれど、温室は火気厳禁だし」

「温室のガラスを突き破りそうだな」

「エアは喜びそうですが」


 いくらエアが好きそうなものでも、危険なケーキは却下である。


「当たり外れがあるケーキはどうだろう? 一カ所だけ、激辛パウダーを練り込んだ生地になっているんだ」

「もしもエアが当たったら気の毒ですわ」

「まるで罰ゲームね」


 当然ながら却下である。


「では、猫の形をしたケーキはいかがでしょう?」

「それはアリーセが好きなものでしょうが」

「自分の趣味を押しつけるな」


 猫のケーキの意見も却下したが、そのおかげでいい案が浮かんだ。


「そうだわ! エアの使い魔であるリザードを模したケーキはどう?」

「あいつの使い魔って?」

「火トカゲですわ」


 ノアの眉間に皺が寄り、険しい顔となる。

 黒い鱗に赤いラインが入ったトカゲのケーキを想像すると、私も同じ表情になってしまった。


「えーっと、もっとおいしそうなデザインにする?」

「全体をリザードにする必要はないのでは? たとえばですが、マルチパンを使って小さなリザードをケーキに飾るとか」

「ああ、それだったら、僕らが食べなくてもよくなる」


 さすがアリーセである。マルチパンを使ったリザードの飾りは即採用となった。


「そうだ! リザードがいるんだったら、火属性のケーキにするのはどう?」

「激辛ケーキに、真っ赤なピリ辛クリームでデコレーションしたケーキじゃないわよね?」

「違うよ。ベリーソースとか、ジャムを使ってそれらしく仕上げるだけ」

「それだったら、おいしそうですわ!」


 たしかに、ベリー系を使って火属性を表現するならば、おいしくいただけるだろう。


「問題は、リザードのビジュアルだな」

「ミシャが一番よく見せてもらっていますよね」

「ええ、そうよ。描いてみるから、ちょっと待っていて」


 スケッチブックにリザードを描いてみる。しかしながら、思いのほか難しくて上手く描けない。


「何、この黒ずんだ長芋みたいな生き物は」

「な、なかなか個性的ですわね」

「トカゲって、描くのが難しいの」


 ジェムだったら上手く描ける自信があるのだが、リザードは描きにくい。


「これじゃあ菓子職人に渡しても、再現できないって言われてしまう。僕が想像で描いたほうが遙かにマシだ!」

「だったらノアさんが描いてみてよ」

「いいよ。見たことがないから、あくまでも想像のリザードだけれど」


 ノアはさらさらとペンを走らせ、優美で美しいリザードの姿を描いた。


「お上手ですわ」

「本当、きれい!」


 ノアの言うとおり、彼が描いたほうがすばらしい仕上がりだった。


「でも、リザードとはかけ離れた姿だわ」

「見ていないからね!」

「だったら、エアに言ってリザードを見せてもらいましょうよ」


 そんなわけで翌日、エアのもとにノアといって、リザードを見せてほしいと頼み込んだ。


「え? リザードを見たいだって?」

「ええ、そう。ノアさんが興味があるようなの」

「いいけど」


 エアはすぐに召喚し、リザードを見せてくれた。

 ホリデー明けぶりに見たリザードは急成長し、大型犬くらいの大きさになっている。


「リザード、また一段と大きくなったのね」

「だろう?」


 ノアはリザードの姿を記憶に焼き付けているのか、熱心な様子で見つめていた。


「ノアって、魔法生物とか興味ないのかと思ってた」

「意外となんにでも興味を持つみたい」

「へえ、そうなんだ」


 私達の会話も耳に届かないくらい、ノアは集中しているようだ。

 リザードの姿を目に焼き付けるための時間が必要だと思って、少しだけエアと会話を続ける。


「雪山課外授業のあと、レナ殿下とお話しした?」

「ああ、少しだけだけど」


 なんでも以前よりは親しい関係になったらしい。


「つーか、ミシャとノア、すっごく仲良くなったんだな」

「ええ、まあ」

「なんか、ミシャに友達が増えて、遠くなった気がする」

「そんなことないわ。一番のお友達はエアだから」

「俺が一番でいいの?」

「もちろんよ」


 最近ノアとよく話しているので、エアはちょっぴり寂しかったらしい。

 ノアとたくさん喋っていた理由は、もちろん誕生パーティーの件である。

 あと少ししたら、ノアと仲良くなったように見えた理由に気づくだろう。


 ノアが小さな声で「よし」と言ったので、この辺で切り上げる。


「エア、ありがとう。もう満足したみたい」

「リザードが見たくなったら、いつでも言ってくれ」


 エアとは手を振って別れたのだった。


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