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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
三部・幕間 エアの誕生パーティーを開こう!

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誕生日会について

 エアのサプライズ誕生パーティーを開くため、アリーセと一緒に計画を立てていたのだが、そこにノアが加わることとなった。

 なんでも雪山課外授業で結界魔法を教えたことをきっかけに、アリーセと仲良くなったらしい。

 誕生パーティーは三人だけでやろう! と言っていたので、ノアも招いたことは意外だった。

 アリーセの交友関係が広がるのはいいことなので、私もノアの参加を歓迎する。


「僕が参加するからには、ゴージャスで煌びやかなパーティーにするつもりだよ」

「は、はあ」

「会場はどこを押さえたの?」

「まだ決めていないわ。寮の部屋を個人的に借りるのは難しいから、その辺の広場にシートを広げてやろうかな、と考えていたんだけれど」

「は!?」


 ノアは信じられないとばかりに目を見開き、私に詰め寄る。


「一月に外で誕生日会って、バカじゃないの!?」


 ぐうの音も出ないほどの正論である。

 何も言えないでいたら、アリーセがノアに物申した。


「ノアさん、バカは言い過ぎではなくって? もっと別の優しい言い回しにしてくださいませ」

「それはまあ、たしかに」


 ノアはゴホンゴホン! と咳払いし、言い直してくれた。


「一月に外でパーティーをするだなんて、愚鈍ぐどんにもほどがあるだろうが!」


 なんだろうか、バカとそう変わらない気がするのは。

 まあ、いい。

 ひとまず外でのパーティーはない、ということだけはわかった。


 ノアとアリーセはこれまで会釈をするだけの関係だったようだが、すぐに打ち解けてくれた。

 ふたりともストレートな物言いをするタイプだが、お互いに敬意を示している部分があるようで、言い合うことはあっても険悪にはならない。

 意外と相性はいいようだった。


 そんなことはさておいて。

 会場問題について、なかなかいい案が浮かばない。


「わたくし達だけでクラブを作ったら、クラブ舎のひとつを貸していただけたでしょうけれど」

「作るとしたら、お誕生日クラブ?」

「あら、すてきだと思います!」

「そんなの却下されるに決まっている」


 アリーセと私が脱線しようとしたら、ノアが軌道修正してくれる。

 頼りになる新メンバーである。


 どこか温かくて、他の生徒の邪魔にならないような場所はあるのだろうか。

 考えた結果、とある場所がいいのではないか、と閃いた。


「ガーデン・プラントにある、オレンジェリーはどう?」


 さすがは貴族と言うべきか、オレンジェリーと言っただけで、そこがどこか伝わった。

 オレンジェリーというのは、柑橘類専用の温室である。

 今のシーズンはオレンジの花が咲くので、きっときれいだろう。

 休憩用の机や椅子もあるので、パーティーをする場所としてうってつけというわけだ。


「オレンジェリーでパーティーなんて、新鮮ですわ」

「でもガーデン・プラントって、許可がないと入れないんじゃないのか?」

「あ、そうそう。ホイップ先生の許しがないと、ガーデン・プラントに入れないし、オレンジェリーでパーティーもできないわ」


 お願いしたら、叶えてくれるだろうか。

 ただ、私とノアは雪山課外授業で騒動を起こした前科者である。だめだ、と言われる可能性が高い。


「可能性に賭けて、聞きに行きましょう」


 放課後――帰宅した振りをしてノアやアリーセと合流し、ホイップ先生の研究室に向かったのだった。


 やってきた私達を見て、ホイップ先生は不思議そうな表情を浮かべる。


「あら、珍しい組み合わせねえ。何か用事かしらあ?」

「実はホイップ先生にお願いがありまして」


 小首を傾げるホイップ先生に、オランジェリーでエアの誕生パーティーをしたい、とお願いしてみる。


「お友達のために誕生パーティーを開くなんて、すてきねえ。いいわ、と言いたいところだけれど、ひとつ課題をだそうかしら~?」


 それは、ホイップ先生の授業で使った実験道具の洗浄であった。


「今の季節は手がかじかむのよねえ。お願いできる?」


 皆で顔を見合わせ、同時に頷いたのだった。

 そんなわけで、井戸の周りで洗浄作業を行う。


「ううう、寒い!」

「思っていた以上に冷えますのね」

「そう?」


 雪国で氷みたいに冷たい水に毎日触れていたので、王都の水はまだ温いほうだと思ってしまう。

 けれども普段、水仕事をしないアリーセやノアには、特別冷たく感じてしまうのかもしれない。


 なんとか洗浄を終わらせると、ホイップ先生はガーデン・プラントの入場とオランジェリーの使用許可が書かれた書類を作成してくれた。


「よくできました~。当日は、騒ぎすぎないのよお」

「はい! ありがとうございます!」


 ひとまず会場は確保できたので、ホッと胸をなで下ろした。

 続いての問題は、誕生日ケーキやごちそうである。


「エアは私の料理が好きって言ってくれたから、ごちそうを担当するわ」

「だったら僕はケーキを手配しておこう」


 なんでもリンデンブルク家の菓子職人に、とっておきのケーキを頼んでくれるようだ。


「わたくしはテーブルウェアを用意しますわ」


 テーブルウェアというのは、食卓を彩るカトラリー類のことである。

 どういったお皿を使うか、お花を活けるかというのはセンスが必要なので、アリーセがやってくれるのはありがたい。


「誕生日の贈り物は、今度の休日に買いにいきましょう」

「いいね」

「楽しみですわ」


 エアの誕生パーティーの計画は、着実に進んでいった。

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