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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
三部・第三章 雪山課外授業にて

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魔物との遭遇

 もしかして、この洞窟は魔物の巣だった? 

 よくよく確認してみると、動物の骨っぽい白い物体がいくつか転がっている。

 短い時間にいろいろあったせいで、見えていなかったのだろう。

 背後は行き止まりで、完全に追い詰められた状況となる。


「ミシャさん、僕の背後に隠れて!」

「できないわ!」


 未来の王太子妃を盾にすることなんてできない。そんな言葉を返したが、ノアは私の腕を強く引いて背後へ隠すように立つ。


「僕だけ助かるようなことがあったら、一生お兄様に顔向けできなくなる! それに、ミシャさんは僕の友達だから、絶対に守りたいんだ!」

「ノアさん……」


 だんだんと魔物の息づかいが近く聞こえる。こちらを窺うようにゆっくり接近する足音も、大きくなっていった。


「ここに土があれば、ゴーレムが呼べるんだけれど」


 それは土属性の上級魔法である。洞窟は氷で構成されているので、土は欠片もない。

 ついに、魔物とご対面となる。 

 それは氷の角を生やした、純白の鹿だ。

 一見して幻獣みたいに美しい姿をしているが、赤い瞳には狂気が滲んでいた。


『ウウウウ、アアアアアア!!!!』


 私達を見つけるなり、氷角ひょうかくの鹿はうなり声を上げ、地面をジタバタ蹴り上げる。それによって、私達の頭上に魔法陣が浮かび上がった。


「なっ!?」

「嘘!?」


 魔法陣から先端が鋭く尖った氷柱つららが突きでてくる。

 あれは、氷属性の上位魔法、氷柱撃アイシクルだ。


 氷柱が迫ってきた瞬間、ノアが私に体当たりし、ギリギリで回避する。


『アアアアアアア!!!!』


 氷角の鹿は巣を荒らされて怒っているのだろう。

 今度は前足を掻き、勢いを図っているように見えた。突進でもするつもりか。


「ノアさん、逃げま――」


 ここでノアが足首を押さえているのに気づく。どうやら先ほどの私を庇う動作で足を痛めてしまったらしい。

 今度は私が彼を助けなければならない。

 ブリザード号を手に取り、呪文を唱えた。


「――しんしん降る、雪よスノウ!」


 どさどさと音を立てて雪が氷角の鹿に覆い被さる。けれどもそれは気休めで、ダメージを与えているようには見えなかった。


『ウウウウウウウウウ!!!!』


 どうやら余計に怒らせてしまったらしい。


「ミシャさん、僕が、気を引くから、その間に、逃げて」

「だめ! そんなのできないわ!」


 一緒に逃げなければ。私だって、ヴィルに会わせる顔がなくなってしまう。


『アアアアアアア!!!!』


 氷角の鹿が突進してきたのと同時にジェムが私達の前に躍りでて、口からプッと吐きだしていた。

 それは、大量の土である。


「え、土?」

「なんで土なんか持って――あ!」


 そういえば以前、ジェムに大量の土を預けていたのをすっかり忘れていた。


「ミシャさん、あの土、なんなの?」


 ノアが問いかけた瞬間、土から這いでてきた氷角の鹿が吐血する。


「あれは、毒の土よ!」


 ギルドの依頼で毒草を処理するさいに、毒に汚染された土を回収したのだ。

 ホイップ先生に処理してもらおうと思っていたのに、すっかり忘れていたわけである。


「あの土を使わせてもらう!!」


 ノアはそう宣言したあと、呪文を唱えた。


「――いでよ、泥人形ゴーレム


 毒の土が人の形と化し、巨大なゴーレムとなる。

 全長二メートルくらいはあるのだろうか。

 ゴーレムは腕を振り上げ、猛烈な一撃を脳天にお見舞いする。


『ギャウ!!』


 角はポッキリ折れ、氷角の鹿は倒れる。大量に吐血もしたので、パンチに毒が付与されていたのかもしれない。


「し、死んだ?」

「たぶん」


 私達ふたりの力で、魔物を倒したのだ。

 ホッとしたのもつかの間のこと。

 どこからともなく、パンパカパーン! というファンファーレが聞こえた。


「え、何!?」

「なんの音!?」


 その疑問に答えるように、私の目の前に文字が浮かんだ。


「ギルドのクエスト、〝スノー・ディア〟の討伐完了?」

「ミシャさん、ギルドに登録しているの?」

「え、ええ」


 氷角の鹿はスノー・ディアという名前の魔物らしい。

 どうやらギルドは依頼を受けずとも、対象となる魔物を倒したときは報酬をくれるシステムらしい。

 金貨を五枚も貰えるようだ。


「それにしても、スノー・ディアってどこかで聞いた覚えがあるわね」


 しばし考えた結果、思い出す。


「雪属性の杖の作成に必要な素材!!」


 折れたスノー・ディアの角が近くに転がっていたので、ハンカチごしに手に取る。

 ダイヤモンドみたいに輝く、美しい角だ。


「まさかここで素材が入手できるなんて」


 ありがたくいただくことにした。

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