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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
三部・第三章 雪山課外授業にて

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クラフトの授業・中編

 大きさはモルモットと同じくらいか。モフモフしていて毛並みがよく、つぶらな瞳が愛らしい。

 とてもかわいい使い魔だが、ヴィルの聖竜やレナ殿下の一角馬に比べたら、その、レア度はそこまでないような。

 もしかしたら私が知らないだけで、高名な妖精や精霊、幻獣かもしれないのだ。

 こういうのは遠慮して聞かないほうが逆に失礼になる。

 そう思って質問してみた。


「ノアさん、その子は?」

「モグラの魔法生物」


 どうやら魔法生物だったらしい。

 王家の血筋だからと言って、珍しい使い魔が召喚できるわけではないようだ。


「名前はマオルヴルフ」

「かっこいい名前ね」

「でしょう?」


 モグラの魔法生物ことマオルヴルフが、魔鉱石の反応があった場所を掘ってくれるらしい。


「てっきり土魔法で掘り返すのかと思っていたわ」

「土魔法だと、雪は掘り返せないから」

「ああ、なるほど」


 ノアが命令すると、マオルヴルフはザクザクと雪を掘り返してくれる。

 途中、降り積もった雪が堅いのか、ガリゴリと粉砕するような音が聞こえた。

 けれども難なく掘り進める。


「あの子、すごいわ!」


 マオルヴルフの穴掘りを絶賛すると、ノアはまんざらでもない、といった感じの笑みを浮かべる。

 私がマオルヴルフを褒めたからか、ジェムが思いがけない行動にでた。

 なんと、ジェムはマオルヴルフが掘った穴に飛び込み、一緒に掘削作業を始めたではないか。


「え、ミシャさんの使い魔、穴掘りもできるの?」

「いえ、私も今日知ったというか、なんというか、あの子、負けず嫌いでなんでもやろうとするの」


 私が誰かを褒めると、ジェムは自分もこれくらいできる! とばかりに張り合おうとするのだ。


「マオルヴルフの作業を邪魔してごめんなさい」

「いや、でも、かなり雪が硬かったみたいだから、逆に助かるかも」

「そう?」


 穴を覗き込むと、マオルヴルフとジェムが協力して掘っていた。

 雪はすべて掘ったようで、土が見えてくる。


「よし、これくらいでいいだろう」


 ノアが声をかけると、鼻先に土を付けたマオルヴルフと、きれいなままなジェムが戻ってきた。


「マオルヴルフ、ありがとう」


 ノアがマオルヴルフを労うと、きゅう! という愛らしい鳴き声を上げていた。


「ジェムもありがとう」

『きゅーん!』


 ジェムが突然鳴いたので、びっくりしてしまう。

 これもマオルヴルフに対抗したからなのか。雪山ではびっくりするだけでもエネルギーを消費するので、驚かせないでほしい。


 ここから先はノアの魔法で魔鉱石を掘り返すようだ。


「――揺れ動け、振動クエイク!!」


 ガタガタと地面が揺れ、その場に尻餅をつきそうになる。しかしながら、ジェムがクッションとなって私を受け止めてくれた。


 あっという間に土が掘り返され、魔鉱石と思われる大きな石が見えた。


「やった! 白い石だ!」

「白い石?」


 穴を覗き込むと、たしかに白っぽい石に見える。

 すぐにノアは鑑定魔法を発動させた。


「――見定めよ、鑑定アナライズ!」


 穴を覆うように魔法陣が浮かび上がり、文字が浮きでてきた。


 アイテム名:魔鉱石

 属性:雪

 希少性:★★★★

 説明:とても珍しい、雪属性の魔鉱石。加工すると雪魔石となる。


「えっ、なんで私にも鑑定結果が見えるの!?」

「見えるようにしたの。ミシャさんも確認したいだろうと思って」

「あ、ありがとう。というか、そんなことができるのね……!」


 情報も私が鑑定するよりも情報量が多い。

 ノアはレベルが高い鑑定魔法を扱えるようだ。

 文字を読み進めていると、我が目を疑うような情報が書かれていた。


「雪魔石ですって!?」


 私が喉から手がでそうなくらい欲していたアイテムである。


「ミシャさん、雪魔石を探していたの?」

「ええ。雪属性の杖を作る材料にしたくって」

「ふーん、そうだったんだ」


 まさかここで発掘できるなんて驚きである。


「だったら、浴槽作りで余った魔鉱石はミシャさんにあげる」

「いいの!?」


 心の中でジェムと魔鉱石探しをする決意をしかけていたのだが、ノアが分けてくれるという。


「掘削作業はミシャさんの使い魔も手伝ってくれたし」

「ノアさん! ありがとう、嬉しい!」


 喜びのあまりノアに抱きついてしまったが、体つきが明らかに女性のものとは異なると気づき、すぐに離れた。


「ご、ごめんなさい。嬉しかったから、つい」

「いいけれど、こういうのをお兄様にもしているんじゃないよね?」

「ヴィル先輩にはしていないわ! ノアさんはその、お友達だから」

「友達だって!?」


 大きな声で聞き返され、しまった、と思う。

 これまで一緒に過ごす中で、いつの間にか勝手に友達認定をしていたのだ。


「あの、今の言葉は忘れ――」

「嬉しい」


 ポツリ、と呟かれた言葉は、意外なものだった。


「これまで、友達なんて一人もいなかったから」

「いつも学校で一緒にいる子達は?」

「あれは、リンデンブルク家の名に目が眩んだ奴らだ。友達でもなんでもない」


 かなり辛辣な物言いである。

 けれどもヴィルも、以前、似たような話をしていた。


「ミシャさんとペアになれて、本当によかった」


 ノアは頬を染め、少し照れたような様子で言う。

 嬉しくなって「私も」と言葉を返したのだった。

次話より隔日更新となります。毎日更新期間にお付き合いいただき、ありがとうございました!

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