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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
三部・第三章 雪山課外授業にて

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クラフトの授業・前編

 クラフトの授業にはひとつの課題がだされた。

 それはペアで協力し、この土地にある物と魔法を用いて何か作ること。

 別に魔道具のような実用的な品を作れと言っているわけではないらしい。工作の授業と言えばわかりやすいだろうか。何か作品を提出したら、課題はクリアというわけである。

 ただ、課題について聞いた生徒達は戸惑っていた。それも無理はない。

 この地は雪原で、右を見ても左を見ても、雪しかないから。

 さらに、行動範囲は先生の目が届く場所までと限定されていた。

 少し遠くに見える樹氷の森へは近づいてはいけない、と言われてしまう。

 さて、どうしたものか。

 ちらりとノアの顔を見てみたら、自信ありげな様子で微笑んでいた。


「ちょうどよかった。ここにきてから、ある物を作りたいって思っていたんだ」

「ある物って?」

「浴槽」


 今日は野営なので、お風呂は入れない。

 それについて、ノアは不服に思っていたらしい。


「でも、浴槽なんてどうやって作るの?」

「岩?」


 ノアがそう言った瞬間、ひゅーーーと冷たい北風が吹く。

 この銀世界のどこに浴槽が作れるほどの大きな岩があるというのか。


「普通の岩だったら見つけられないけれど、魔力を含んだ魔鉱石だったら探すことができるでしょう?」


 魔鉱石――それは魔石の素材となる石である。

 ただ、それを見つけたとして、掘ったり加工したりできるのか。その疑問をそのままノアにぶつけてみる。


「僕は土属性の持ち主で、その辺は得意分野だ。心配しなくてもいい」

「わかったわ」


 ひとまず今は魔鉱石を探すことに専念しよう。


「二手にわかれて魔鉱石を探すよ。はぐれないように、この紐を腰に結んで」


 それは十メートルあるかないか、くらいの縄らしい。

 言われたとおり縄を腰ベルトに結んで、魔鉱石探しを始めることとなった。

 以前、アリーセと魔石探しの授業で習った魔法を使う。

 杖を構え、呪文を口にした。


「――魔力を探れ、審検サーチ!」


 杖の先端から魚影探査器のようなレーダーが浮かび上がる。

 あとは歩き回って魔力の反応を待つばかりである。

 ここであまり時間はかけられない。手工芸クラフトの授業は二時間半である。

 可能であれば、三十分くらいで見つけたいところだが。

 はあ、と白い息を吐きながら、辺りを歩き回る。

 先へと進もうとした瞬間、くん! と縄が引かれる。

 早くも十メートルほどノアと離れてしまったようだ。 

 思わず背後を振り返ったら、ノアもこちらを見ているようだった。

 何やら文句を言っているようだが、風にかき消されて聞こえない。

 真逆の方向に進むのではなく、ノアから少し逸れた方向を探したほうがよさそうだ。

 方向転換し、ノアに近づきながら魔力の反応を探る。

 三十分ほど探し回ったが、都合よく見つかるものではなかった。

 私とノアは雪の上でも構わず腰を下ろし、深く長いため息を吐く。


「もう、心が折れそう」

「まだ三十分しか探していないわ」

「そうだけど」


 ダメ元でジェムに魔鉱石の反応を探れないか、と聞いてみる。

 するとジェムは大きく頷き、釣りをするように触手を遠くへ飛ばした。

 目を閉じていたジェムだったが、何か発見したのかカッと目を見開く。

 私の袖をくいくい引いて、付いてこい、とばかりに強い瞳を向けた。


「ねえ、ノアさん、ジェムが何か見つけたみたい」

「本当?」


 ひとまず現場へ向かってみる。

 ジェムはここ掘れわんわんに登場する犬みたいに、雪を掻き始めた。


「ここに魔鉱石があるか、魔法で調べてみましょう」

「それがいい」


 ジェムを疑っているわけではないか、掘削作業をしたのになかったらがっかりするので、念のため調査してみた。


「――魔力を探れ、審検サーチ!」


 するとすぐに、反応を示す。どうやら間違いなく、ここには魔鉱石があるようだ。


「よし、ミシャの使い魔、でかした」


 あとは任せてくれとノアは言うが、どうやって掘るのだろうか?

 私とジェムは見学させていただく。

 ノアは召喚魔法を発動させる。どうやら使い魔に掘削作業をさせるらしい。

 王家の血筋は莫大な魔力を持っており、希少な精霊や妖精、幻獣などが惹かれやすい。

 レナ殿下の使い魔は純白の一角馬ユニコーンだし、ヴィルは聖竜セイント・ドラゴンだ。

 ノアはいったいどんなすごい使い魔を従えているのか。

 これまで彼の使い魔を目にした覚えはなかったので、ドキドキしながら待つ。


 魔法陣から現れたのは、思いのほか小さなシルエットである。

 とがった鼻先に大きく鋭い爪先、まるっこい体――それは〝もぐら〟だった。 

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