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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
一部・第二章 待望の魔法学校への入学!

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入学式

 講堂で入学式が始まる。

 周囲の同級生達を見てみると、貴族が七割、中産層ミドル・クラス出身だと思われる人達が二割、下級層ロウワー・クラス出身が一割いるかいないか、という感じか。

 皆、同じ制服に身を包んでいるものの、ただ座っているだけでもそれとなくわかってしまう。

 クラスごとに固まって座っているのだが、アリーセを発見し、「うげ」と声が出てしまいそうになった。

 私の視線に気付いたアリーセは、眉間に皺を寄せ、ふい、と顔を逸らす。

 平和な魔法学校生活を送りたいのに、彼女がいるなんて。

 なるべく関わらないようにしよう、と心に誓った。

 まずはヴァイザー魔法学校の名物らしい、校長の長い話があるらしい。

 校長を務めるのは、古い魔法使いの一族である、ホルガー・フォン・ホフマイスター伯爵。

 クリスマスにたくさんチキンを売っていそうな、白髪頭に長い髭を持つ、優しそうなおじさんだ。

 そんなホフマイスター校長の話が始まると、隣に座ったエアは開始三分と経たずに眠ってしまう。

 ただ、他の教師達もうつらうつらと眠たそうにしていた。

 講堂の窓から差し込む太陽の光が暖かいので、いい感じに眠りを誘ってくれるのだろう。

 私は前世で、退屈な会議に何度も参加していたため、そのときに習得していた眠くならないツボをごりごり押して耐えた。


「えー、最後に、みなさんにご報告があります」


 入学生だけでなく、在校生もざわつき始める。

 このように校長の口から報告があるのは、異例なのかもしれない。


「実は、今年入学した生徒の中に、我が国の王太子殿下がいらっしゃいます」


 王太子殿下というのは、この前下町で誘拐されかけていたお方に間違いない。

 いったいなぜ、魔法学校に入学したのか。


「ちなみに偽名で入学しており、公表されません。つまり、誰が王太子殿下かわからない、というわけです。そんなわけで、今年入学した生徒の全員が王太子殿下である可能性があるわけで、油断はできません。みなさん、仲良く学校生活を送ってくださいね」


 呆気にとられる者が半分。興奮している者が半分、といったところか。

 皆が騒然とする中でも、エアはぐっすり眠っていた。

 そろそろ起こしたほうがいいだろう。


「エア、校長の話は終わったから、もう起きて」

「うーん、お腹いっぱい……はっ!?」


 どうやら幸せな夢をみていたらしい。このまま寝かせてあげたい気持ちもあったものの、入学式早々、教師に目を付けられたら大変だろう。


「入学式は終わったのか?」

「まだよ。これから新入生の挨拶ですって」


 新入生の挨拶は、受験の成績首位の者がやるように決まっている。

 いったい誰なのか。わくわくしながら待った。


「新入生代表、レナ・フォン・ヴィーゲルト」

「はい」


 私のすぐ背後で、聞き心地のよい返事が聞こえた。

 思わず振り返ると、そこには下町で助けた王太子殿下の姿があった。

 目が合うと、王太子殿下はパチンとウインクする。

 ぎょ、どころではない。ぎょぎょぎょ、と驚いてしまった。


「うわぁ、一緒のクラスの奴が首席かよ」

「一緒のクラスだったんだ」

「ああ、そうだぜ。あいつ、特別目立っていたんだ」


 なんでも大勢の女子生徒に囲まれ、きゃあきゃあと盛り上がっていたらしい。

 新入生だけでなく、上級生も姿を見に来ていたようだ。

 名前はレナ・フォン・ヴィーゲルト――だったか。

 王太子殿下のお名前はレナハルトである。

 偽名はそれで大丈夫なのか、心配になってしまった。


 それよりも、レナ殿下は男子生徒の制服をまとっていた。

 もしかしなくても、性別を偽っているということは公表されていないようだ。

 辺境にいたら、王族についての情報も疎くなる。

 王太子殿下が社交界デビューをしておらず、公の場で顔を出していないことなんて、知らなかった。

 もしかしたら私は、とんでもない秘密を握ってしまったのだろうか。

 今後、全力で知らない振りをしなくてはならない。


 それにしてもついていない。

 レナ殿下が一緒のクラスだったなんて。

 別のクラスであれば、身を隠してなるべく目を付けられないように努めたのに。

 レナ殿下は私を見て、ウインクした。きっとあのときの女だとばれているに違いない。


「すげえな。容姿端麗で成績優秀だなんて。優雅な身のこなしに、美しい言葉遣い、神は二物も三物も与えるんだなー。下町育ちの俺とは天と地ほども違うぜ」

「そんなことないわ。明るくて素直なエアも、かなりすてきよ」

「ありがとな。ちょっと元気でた」


 皆がレナ殿下に注目する中、私は明後日の方向を向く。

 さっきみたいに、目が合うなんて事態はあってはならないから。

 あのアリーセもレナ殿下にメロメロなのか――と思いきや、誰かを探しているようで、キョロキョロと辺りを見回している。

 見つからなかったのか、シュンと肩を落としていた。

 レナ殿下に興味がないなんて、少し意外だった。


 在校生代表の挨拶は、噂の監督生長なのか、と思いきや、三学年の監督生だった。

 

「こういうの、監督生長が担当するんじゃないんだなー」

「そうね」


 もしかしたら、公の場にあまり姿を現さない、裏ボスなのかもしれない。


 続いて理事の挨拶が始まる。登壇したのは、金髪に緑色の瞳を持つ、四十代後半くらいに見える長身のイケオジだった。

 それとなくレナ殿下と似ているな、と思っていたら、すぐ傍で「理事は国王陛下の弟らしい」なんてヒソヒソ話が聞こえた。

 金色の髪に緑色の瞳を持つのは、王族の特徴なのかもしれない。

 厳格そうな雰囲気で、一見して神経質で怖そうに見える。

 この人が校長じゃなくてよかった、と思ってしまった。


「私はこのヴァイザー魔法学校の理事を務める、リカルド・フォン・リンデンブルクである」


 理事はリンデンブルク大公だったようだ。

 さすが、王家が創立した魔法学校である。運営にも王族が関わるようになっているのだろう。


 理事の話は小難しいものだったが、短かったのでエアも居眠りせずに済んだようだ。

 

 その後、教師の紹介が行われる。

 私達のクラスを担当するのは、ホイップ先生だった。

 男子生徒からの熱視線を独り占めする。

 なんでもホイップ先生はハイエルフらしい。生徒の人気も高いようだ。


 入学式が終了し、ぶらぶらと教室に向かう。

 レナ殿下は大勢の取り巻きがいるようで、私への接近は心配しなくてもいいようだ。

 

「ミシャ、今日は授業はないんだっけー?」

「そうだけれど、使い魔の召喚はするそうよ」

「あー、なんか入学前に貰った書類に書いていたな」


 魔法学校での三年間、契約する使い魔は、学校側から召喚札サモン・カードが支給される。

 なんでも生徒と相性がいい幻獣、妖精、精霊、魔法生物などが、ランダムで召喚できるらしい。

 召喚札を購入しようと思ったら、金貨十枚ほどかかるようだ。

 無償で支給されるのは、魔法学校の特権と言えよう。


「あー、なんかでっかい竜とか召喚できないかなー」


 やはり、この年代の男子は竜が好きなのか。

 小学生の頃、裁縫セットのカタログに、雷鳴を背後にはばたく竜の絵柄とかあったなーと思い出してしまった。

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