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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
三部・第三章 雪山課外授業にて

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雪の家を造る

 それから私とノアは会話を続けることもなく、黙々と作業を続けた。

 だんだん風が強くなってきたので、一刻も早く雪の家を建てて中でぬくぬくしたい。

 そんな強い思いがあったからか、一時間ほどで魔法陣を完成させた。


「ふう」

「こんなもんか」


 けっこういい感じに作れたような気がする。

 ノアは魔法学校に入学したばかりだが、基礎をしっかり学んでいたのか、後れを取ることはなかった。


「あなた、魔法式の計算が正確で速いのね」

「別に、普通だと思うけれど」

「そう? 少なくとも、私よりは早いわ。おかげで、いい家が作れそうよ」


 ありがとう、と感謝の気持ちを伝えると、ノアはそっぽを向きながら言葉を返した。


「感謝は魔法がちゃんと発動されてから言って。まだ、きちんとできているかわからないから」

「それもそうね」


 ノアの頬が少しだけ赤い気がするものの、おそらく寒空の下に晒されているからそうなってしまったのだろう。

 早く雪の家を作って、風だけでも避けたい。


 すでに周囲にはいくつかの雪の家が建っていた。

 形は半円状で、前世で記憶にある雪かまくらとほぼ同じである。

 石みたいな雪の塊を積んで造られたものから、一度固めた半円状の雪を掘り返して造られたものなど、造りは微妙に異なっていた。

 その辺は魔法の構成によって仕上がりに違いができてくるのだろう。

 私達はどんな物ができるのか。楽しみである。


 魔法を発動させる前に、ホイップ先生に確認してもらう。


「あら、よくできているじゃない~」


 合格をもらったので、魔法を使ってみよう。

 魔力の制御を間違えたら大変なので、今日は杖でなく、私の魔力と相性がいいブリザード号を使って魔法を発動させよう。

 ジェムに頼んでブリザード号を取りだし、呪文を唱える。


「――そびえ立て、家屋よレジダンス!」


 魔法陣が眩い光を放ち、空から雪の塊がボタボタと落ちてくる。


「え!?」


 この魔法は周囲の雪を利用して造るものだが、なぜか空から降ってくる雪の塊が家と化していた。

 人がふたりくらい寝転がれるほどの規模かと思っていたのに、想定していた以上の範囲で家が作られていく。

 広さは畳二十畳分くらいだろうか。雪がレンガと化し、家の形となる。

 きちんと屋根もあって、出入り口の扉も作られていた。

 想定外の形状に絶句してしまう。

 一方、ノアは満足げな様子で仕上がる雪の家を眺めていた。

 他の人達と異なる形状になってしまったのは、ノアがそういう魔法式を作ったからなのだろう。

 あっという間に、家が形を成す。

 ちょっとしたコテージというか、簡易的に作った家とはいえない本格的な仕上がりである。

 ホイップ先生も驚いていた。


「まあ、あなた達の家、とっても立派ねえ。百点満点中、二百点くらいの仕上がりよお」


 ノアはホイップ先生に褒められて悪い気はしなかったようで、ふふん! と楽しげな様子で微笑んでいた。


「ミシャ・フォン・リチュオル、あの魔法がイメージ通り完成するとは思わなかった。お前の雪魔法のセンスは相当なものなのだろう。よくやった!」

「は、はあ、ありがたきお言葉を賜り、嬉しく存じます」

 

 ノアは私の必要以上に丁寧な物言いが気に食わなかったようで、眉をピンと跳ね上がらせる。


「なんなの、その喋り方は」

「いや、だって、そういうふうにフルネームで呼ばれると、自然と背筋が伸びてしまうというか、なんというか」


 できるならば〝ミシャ〟と呼んでほしい。そんなささいなお願いをしてみる。


「お前を名前で呼び捨てになんかしたら、お兄様はいい気がしないだろう」

「ヴィル先輩がどうして?」

「それは――なんでもない!!」


 これ以上聞くな、と言わんばかりの〝なんでもない〟だった。


「だったら、リチュオルでもいいわ」

「僕のことはリンデンブルクで」

「いやいや、歴史あるリンデンブルク家を敬称なしで呼ぶのは不敬なような」

「面倒くさいな」

「ご、ごめん」


 譲歩案として、お互いに〝さん付け〟で呼ぶのはどうか、と提案してみる。


「ノアさんと、ミシャさんか。まあ、これくらいならば許されるだろう」

「では、よろしくお願いします、ノアさん」

「仕方がない。今後はミシャさんと呼んでやろう」


 だんだん出会ったときのノアのペースに戻ってきた。

 けれども以前のような百パーセント不遜というわけではなく、私への敬意もほんのちょっとだけ滲んでいるように思えた。

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