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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
三部・第二章 雪山へ行く準備をしよう!

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ミシャとノアの関係

 ヴィルは大きな瞳を極限まで見開き、ワナワナと震えていた。


「ミシャ、ノアが男だということは、知っているだろう?」

「ええ、存じています。ただ、ノアさんが女子生徒として通っている以上、誰かがペアにならなければならなかったわけで」


 彼が男だとわかっている私であれば、バレる心配もない。ノアにとってはよかったのではないか、と思っていた。


「なぜ、そのように平然としている? 夜、ノアに襲われたら、とか思わなかったのか?」

「いいえ、思いませんでした。ノアさんは、私のことを嫌っていますから」

「は?」


 理解しがたい、という表情でヴィルは私を見つめる。


「どうしてミシャを嫌う? ありえないだろうが」

「いや、嫌っているというのは言い過ぎかもしれません。えー、そのー、関わり合いになりたくない、と言えばいいのか」


 ノア本人でないのではっきり言えないものの、私に対してよくない感情を抱いていることは確かである。


「この世に、ミシャを愛さない者がいた……だと?」

「いや、たくさんいますって。現に私は一度婚約破棄されていますし」


 そう訴えた瞬間、ヴィルの表情が怒りに染まっていく。


「ああ、そういえばいたな。ミシャに対して狼藉ろうぜきを働いた愚か者どもが!」


 ルドルフとリジーの話題をだしてしまったせいで、余計にヴィルを怒らせてしまった。

 鎮まり賜え、鎮まり賜え、と心の中で祈る。


「あの者達はさておき、ノアと何かあったのか?」

「いえ、何かというほどの物事があったわけではないのですが……」


 社交界デビューの夜会のさいに、偶然ノアと出会った話を打ち明ける。


「廊下でヴィルを待とうとしていたら、蹲っているノアさんを発見しまして」


 たしか、矯正下着コルセットの締め付けがきつくて、座り込んでいたのだ。


「すぐに助けたのですが、一人のようだったのでどうしたのかと聞いたら、付添人シャペロンを撒いてきたと言うものですから、叱ってしまったんですよ」


 ノアはプライドがどこまでも高いので、私なんかに助けられた挙げ句、男であることがバレてしまったのが悔しかったのだろう。


「それに、いつか本当は男なんだ、と正体を明かされるかもしれないと思って、警戒しているところもあるのかもしれません」

「なるほどな。ノアの気持ちは理解できないが、事情は把握できた」


 きっとヴィルが心配するようなことは起きない。

 なぜならば、ノアはレナ殿下の婚約者としてのプロ意識があるから。


「そんなわけですので、その、心配はしていないんですよ」


 腕を組んで話を聞いていたヴィルが、思いがけない提案をする。


「夜になって密室で二人きりになる前に、魔法の手鏡で通信を開始する。絶対に、二人っきりにはさせない」

「見張っておく、ということですか?」


 ヴィルは深々と頷いた。


「大変なのでは?」

「ミシャとノアが二人っきりでいてモヤモヤするより、監視していたほうがマシだ」

「はあ、わかりました。では、当日はよろしくお願いします」


 ようやく安心できたのか、ヴィルは転移の魔法札を使って寮に戻った。

 なんというか、嵐が去ったような出来事だった。


 ◇◇◇


 ヴィルが帰ったあとは、雪山課外授業で食べるお菓子を作る。

 予算である半銀貨で、材料を買っていたのだ。

 使うのは、昨晩から水に浸けていた赤豆。

 日本にある小豆に似た豆で、甘く煮込むとあんこみたいになるのだ。

 作るのは、羊羹ようかん

 これならば、雪山に持っていっても凍らない。

 下手なお菓子を持って行くと、寒さでカチコチになって食べられないのだ。

 羊羹くらい砂糖がたくさん入っている物は、固まらずにいつでも食べることができる。

 前世の記憶が戻ってから、あんこを食べたくてたまらなかったのだ。

 さっそく、調理に取りかかる。

 まず、鍋に水と赤豆を入れて茹でこぼす。これをしていると、赤豆の渋みなどを取り除くことができるのだ。

 湯を切ったあと赤豆をきれいになるまで洗い、その後、鍋に再度水と赤豆を入れて、あく取りをしつつじっくり煮込む。

 赤豆がやわらかくなったのを確認したら、砂糖を数回にわけて加え、水分がなくなるまで煮詰めたら完成だ。

 続いてアガーと呼ばれる寒天みたいなものを湯で溶かし、あんこと水飴を入れてよく練っていく。

 もったりしてきたら型に流し込んで一晩冷やすのだが、ここは氷魔法が使えるジェムに急速冷凍を使ってもらおう。


「ジェム、この羊羹を氷魔法で固めてくれる?」


 任せて! とばかりにジェムが触手でポンと胸(?)を打った。

 ジェムが大きく口を開いたので、その中に入れてみる。

 口を閉ざしたあと、氷魔法の魔法陣が浮かび上がった。

 ジェムが再び口を開くと、そこにはぷるぷるに固まった羊羹が完成しているではないか。


「おいしそうにできているわ! ジェム、ありがとう」


 ジェムは私に会釈を返してくれた。

 ドキドキしながら、羊羹をカットする。

 強力だったであろうジェムの氷魔法を受けても、羊羹は凍っていなかった。

 型から取りだし、ナイフでカットする。

 端っこを食べてみたが、なめらかであんこの味も濃く、しっかり甘い。

 雪山でのエネルギー補給にぴったりの一品ができたわけだ。 

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