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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
三部・第二章 雪山へ行く準備をしよう!

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魔菓子とヴィル

「魔導カードというのは入手困難な魔菓子でして」

「マガシ?」


 どうやら魔菓子から説明しなければならないようだ。


「魔菓子というのは魔法が付与されたお菓子でして。跳躍力が跳ね上がるカエル・キャンディに、水中で呼吸ができるようになる泡玉ジュース、食べたら炎を噴きだす激辛チップスなどなど」


 ヴィルは信じがたい、という表情を浮かべながら話を聞いていた。


「本当に、そのような菓子が存在するのか?」

「しますよ。あ、そういえば、降誕祭が中止になったときに、魔菓子の詰め合わせが配布されませんでした?」

「菓子が配布されたのは下級生だけだ。上級生は中止が言い渡されただけだった」

「そうだったんですね」


 ホイップ先生が校長先生からみんなに、と言っていたような気もしたが、それに上級生は含まれていなかったようだ。

 そういえば、貰った魔菓子の詰め合わせは手をつけずにジェムに預けたままだった。


「魔菓子がどんな物か、見てみます?」

「今、あるのか?」

「はい」


 近くにベンチがあったので、そこに座って魔菓子の開封式を行う。

 以前、妹のクレアに激辛チップスを送ってあげたのだが、大変喜んでいた。

 子ども達は皆、魔菓子が大好きなのだろう。

 それにヴィルが当てはまるのかはわからないが。

 ジェムがペッと吐き出した魔菓子の入った袋の中身を、ベンチに並べてみる。


「〝ちょこっとだけ全身が凍るフローズン・チョコレート〟に〝霧が作れるラムネ・シガレット〟、それから〝電撃を放つパチパチわたあめ〟――あ、この〝ランダムで動物の耳が生えるグミ〟はいかがですか?」


 パッケージには猫や犬のかわいらしい絵が描かれている。

 もしかしたら断られるのではないか、と思ったものの、手を差しだしてきた。


「どうぞ」

「ありがとう」


 ヴィルは丁寧な手つきで開封し、グミをぱくりと食べた。

 すると、頭上に魔法陣が浮かび上がり、動物の耳が生えてくる。


「あ!」

「なんだ、これは」


 ヴィルの頭上には、猫の耳が生えていた。


「うわあ、かわいい! 触ってもいいですか?」

「別に、構わないが」

「ありがとうございます」


 そっと慎重に触れてみる。

 ベルベットのようななめらかな心地で、いつまでも触っていたい。

 しかしながら、一分と経たずに耳は消えてしまった。


「ああ、残念……」


 と、ここで気づく。私がずっと触っていたので、ヴィルは自分自身に生えた耳を確認できなかったのではないのか、と。

 心なしか、耳の端っこが赤いような気がする。

 珍しく照れているようだ。


「ヴィル先輩、すみません。夢中になって触ってしまって」

「気にするな」

「びっくりしましたよね」

「いや、なんというか、ミシャがこのように私に触れてくるのは初めてだったから、その、嬉しかった」


 嬉しかったんかーーーーい。

 それよりも、あんなふうにヴィルに触れるなんて、不敬でしかなかっただろう。

 心の中で盛大に反省した。


「先ほどのグミがあれば、ミシャにかわいがってもらえるのだな」

「いやいやいや、同じ過ちは犯しません!」

「過ち? なぜ、そう思う?」

「だって、王家の血筋であるヴィル先輩の頭を撫でるなんて、不敬にもほどがあります」

「不敬なわけあるか! 二度と、私の血筋なんぞ気にするな。今後、もしもそのようなことを考えたときは、リチュオル子爵家に無理矢理婿入りするからな!」

「ひい! む、婿入りだけはご勘弁を!」


 会話が途切れたタイミングで、これまで大人しかったジェムの異常に気づく。

 あろうことか、水晶みたいになめらかな体に、猫の耳を生やしているではないか!


「な、なんで猫耳!?」


 もしかして、私が猫耳を生やしたヴィルをよしよししたから、自分だって猫耳くらい生やせるわ! と実力行使に出てきたのか。

 よくわからないものの、ひとまず猫耳ジェムを褒めておく。


「わ、わあ、ジェム、とってもかわいい!」


 そんな言葉をかけると、猫耳に触ってもいいんだぜ、とばかりに体を傾けてくる。

 恐る恐る触ってみると、フワフワでいい毛並みだった。

 ジェムは満足したのか、猫耳を消失させる。

 本当に、この子は何をするかわからない。はーーーー、と深く長いため息を吐いてしまった。


「あ、そうだ。ヴィル先輩、さっき話した魔導カードを二パック、エアから貰っていたんです。一緒に開封しませんか?」

「いいのか?」

「もちろんです!」


 幻獣や妖精、精霊などが召喚できるカードが入っているかもしれない、と説明すると、ヴィルはとても驚いていた。


「いったい、どのような手法で作っているのか?」

「さあ、どうなんでしょうね」

「子ども向けに売って採算が取れるのかも疑問だ」


 召喚できるカードはレアだというので、たくさん外れのカードを作って予算を確保する仕組みなのかもしれない。 


 ドキドキしながら開封すると、炎が描かれたカードが袋から飛びだしてきて驚いた。


「えっ、なっ――!?」


 カードは空中に浮かんでいて、描かれた炎の絵がぐるぐると渦巻いていたので驚く。

 手に取ったら、カードに描かれていた炎はただの絵になった。


「す、すごい……!」

「子ども向けのクオリティではないな」

「本当に」


 続けてヴィルも開封する。

 私のときと同じように袋からカードが飛びだしてきたものの、少し演出が異なっていた。

 カードがキラキラと輝き、幻術の炎が吹き出てくる。

 そして光が収まり、絵が見えるようになった。


「赤竜、か?」

「みたいですね」


 カードの中に描かれた赤竜が火を噴く。

 どうやらヴィルは、パッケージにも描かれているような、ウルトラレアである赤竜のカードを引き当てたようだ。

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