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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
三部・第一章 新学期のはじまり

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ヴィルのお弁当

 疑惑が晴れてすっきりしたところで、昼食の時間となる。

 ヴィルは椅子を引いて、どうぞと勧めてくれた。

 私はお姫様になったつもりで腰掛ける。

 テーブルの上には大きなバスケットが鎮座していた。

 なんでも朝ここにやってきて、テーブルと椅子を用意し、バスケットをここに置いてから授業にいったらしい。


「誰かに盗まれる心配はしなかったのですか?」

「魔法生物達に見張りをしておくよう、頼んでおいたんだ」

「なるほど。そうだったのですね」


 よくよく魔法生物達を見てみれば、使命感を胸にこの場にいるように見えた。

 ただ単に、ヴィルがやってくるから出待ちしていたわけではなかったようだ。


 ついに、ヴィルはバスケットに手をかける。

 いったい何を作ってきてくれたのか。

 開く前に、ヴィルはちらりとこちらを見て言った。


「ミシャ、あまり期待しないように」

「はい!」


 おそらく期待が表情にでていたのだろう。プレッシャーにならないよう、口元を手で覆っておく。


 バスケットの中には、サーモンサンドとニンジン、キュウリ、セロリのスティック、それから何かが入った瓶が入っていた。


「わっ、おいしそう!」


 私の反応を見て、ヴィルは「よかった」と安堵するような様子を見せていた。


「サーモンサンドには手作りのマヨネーズを塗ってみた」

 

 そして気になる瓶の中身は、アボカドとカッテージチーズのディップらしい。


「以前ミシャが弁当箱の中にピクルスの瓶を入れていただろう? あれがなかなか衝撃的で」


 もちろん、いい意味で、とヴィルは付け加えた。


「瓶に入っていたら、弁当箱に入れられる物のバリエーションも増えるのだな、と感心した」

「さ、さようでございましたか」


 ピクルスを入れた日は盛大に寝坊してしまい、五分くらいでお弁当を用意したのだ。

 まさかそこからヴィルがインスパイアを受けていたなんて、夢にも思っていなかった。


 ヴィルのバスケットには蓋の部分にお皿やナイフ、フォーク、カップ、紙ナプキンなどが収納されていて、目の前に広げてくれる。

 途中、魔法生物達がどこからか魔法瓶を運んできてくれた。


「白湯だ。朝から作った」


 魔法瓶には保温効果があり、お昼になってもほかほかだ。

 湯気を眺めていたら、ヴィルがお皿にサンドイッチや野菜スティック、ディップなどを盛り付けてくれた。


「どうぞ召し上がれ」

「いただきます」


 サンドイッチには上品に紙ナプキンが添えられていて、手が汚れないような配慮がなされている。

 ありがたいと思いつつ、紙ナプキンごとサンドイッチを手に取って頬張る。

 サーモンは焼かれており、マヨネーズとの相性は抜群だ。

 そしてパンに塗られたマヨネーズが一工夫されていることに気づいた。


「あの、ヴィル先輩、このマヨネーズ、もしかして薬草が入っていますか?」

「よく気づいたな」


 サーモンの臭み消しになるよう、薬草を入れたらしい。


「ミシャが作る料理にはよく、薬草が入ったソースがあっただろう? そこから着想を得て、作ってみた」


 教えてもいないのに、ここまでアレンジができるなんて。


「えーっと、入っているのは、チャイブとパセリ、チャービルですか?」

「正解だ。さすがだな」


 これらの薬草は魚料理によく使っている、と以前、ヴィルが庭仕事を手伝ってくれたときに教えていたのだ。彼はきっと、それを記憶していたのだろう。

 

「ヴィル先輩はもしかしたら、料理の才能があるかもしれません!」

「そうか?」

「はい。確信しています!」


 アレンジ力もさることながら、このサーモンサンドが絶品なのだ。


「とってもおいしいです」


 ヴィルはサンドイッチに手も付けずに、私が食べる様子ばかり眺めていた。


「あの、召し上がらないのですか?」

「いや、なんだか胸いっぱいで」


 私が食べている様子を見ていたら、食欲が失せてしまったのか。なんて考えてしまったのだが、そうではなかったらしい。


「誰かに食事を作って、食べてもらい、おいしいという感想をもらうのは、こんなにも嬉しいことなのだな」

「ええ……そうですね」

「ミシャも、嬉しかったのか?」

「もちろんですよ」


 大好きな人達のお腹を満たすために頑張る以外に、おいしいと言ってもらえたときの喜びは一入ひとしおなのだ。


「今日は夕食作りを手伝いたいのだが」

「了解です」


 やる気がみなぎってきたようで、彼のことは褒めて伸ばそうと決意したのだった。

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