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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
二部・第四章 真相を探れ!

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春のホリデーでやりたいこと

 ちなみに、ヴィルはレヴィアタン侯爵夫妻に私と二人きりで話したい、と許可を取っていたらしい。そのため、侍女はあのときいなくなったのだ。

 通常、婚約者同士でない男女が密室で過ごすことなど許されるわけがないのだが、ヴィルは何もしない、言葉を交わすだけだと真剣に訴えた結果、許されたのだそう。


「ミシャ、結婚についてはじっくり考えてもいいから、次の長期休暇に一緒にラウライフにいって、私をご家族に紹介してくれないだろうか?」


 次の休暇というのは、春の一週間休暇のことだろう。

 実家に帰るならば、一ヶ月間の休暇がある夏だと思っていたのだが。


「そ、それは……」

「友人のひとりとしてでいいから」


 リンデンブルク大公のご子息がやってくるなんて聞いたら、父はびっくりして寝込んでしまうかもしれない。母は笑顔が凍り付くだろう。

 妹クレアや婚約者のマリスなんかはあっさり受け入れそうだが……。


「もちろん、婚約者候補の一人だと主張するつもりもない」


 その言い方だと、私と結婚を望む男性が大勢いるようだ。

 ヴィルがその中の一人という扱いであるような物言いは、誤解を受けそうなので勘弁してほしい。


「あくまで、私の存在をご家族に認識してもらいたいだけだ」

「ヴィル、春のホリデーは難しいかもしれません」

「なぜ?」

「往復に十日ほどかかるんです。たしか春のホリデーは一週間しかないですよね?」

「ああ、それについては心配しないでくれ」


 なんでもラウライフまではセイクリッドで飛んでいくらしい。


「王都からラウライフまで、セイクリッドで移動した場合の飛行時間を試算してみたのだが」


 ラウライフから王都までは馬車で片道五日ほど。

 その一方で、セイクリッドが空を飛んで移動した場合は、休憩時間込みで十時間ほどだという。


「十時間ですか!」

「ああ。セイクリッドは寒さや飛行速度による抵抗から守る魔法を使えるからな。乗っている者に負担を与えることなく、素早い移動を可能としているのだ」


 そんなに早く行き来できるのであれば、ラウライフにヴィルを連れていってもいいのかもしれない。家族にも会いたいし。

 ただ、単独でヴィルを家族に会わせるのはちょっと気が引ける。

 どうしたものかと考えていたら、ピンと閃いた。


「あの、エアやアリーセを誘ってもいいですか?」

「ふむ……まあ、最初はそのほうがいいのかもしれないな」


 最初は、という言葉が引っかかったものの、エアやアリーセもいたら、ヴィルも友達の一人だと思ってくれるかもしれない。


「わかりました。次のホリデーが近くなりましたら、また詳しい予定を立ててみましょう」


 そんな言葉を返すと、ヴィルは安堵したような表情を浮かべたのだった。


 ◇◇◇


 レヴィアタン侯爵家での降誕祭正餐ノエル・サパーが始まる。

 席順はもっとも上座にホストであるレヴィアタン侯爵と夫人が座り、それに近い位置にヴィルが腰掛ける。

 私とエアは下座側だ。マナーを学びたいので、そうするようにお願いしておいたのだ。

 燕尾服に身を包んだエアは緊張していた。たくさん並んだカトラリーを見てしまったからだという。カトラリーの扱いは魔法学校でも習い、毎回の食事で実践しているものの、いつもよりフォークやスプーンが多いので、きちんと使いこなせるか心配らしい。

 あまりにもガチガチだったので、ジェムがレヴィアタン侯爵家の執事と静かに見つめ合ったのちに、互いに小刻みに震えて交流しているところを目撃した話をしてみた。すると、エアは爆笑し、緊張も少しだけ解れたように思える。


「食事はヴィル先輩を見ていれば間違いないわ。私もわからなくなったら、盗み見るつもりなの」

「ミシャ、賢いな!」

「賢いは賢いでも、ずる賢いのほうだけれど」

「はは! 俺もずる賢くやり過ごさないとな」


 そうなのだ。何事も真剣に考えすぎては疲れてしまう。

 時に肩の力を抜いて、周囲をよく見て、目立たないように振る舞えばいい。

 なんて話をエアとしていたら、レヴィアタン侯爵のご子息達が登場した。


「父上、ただいま戻りました」

「一年ぶりですね」


 レヴィアタン侯爵にそっくりな、同じ顔立ちの男性が二人揃って入ってきたので、驚いてしまう。

 なんでも彼らは双子らしい。

 ヴィルとは顔見知りのようで、軽い会釈を交わすだけだった。

 レヴィアタン侯爵がご子息を紹介してくれた。


「違いがわからないかもしれないが、こちらがエグモントで、こちらがエグムントだ」


 年頃は三十前後か。大きな体に、らんらんと輝く瞳、顔の輪郭を覆うように伸ばしたひげは、まるで熊のようだ、と思う。

 レヴィアタン侯爵も熊みたいなので、食堂に熊が三人大集合してしまったわけだ。

 言葉を交わしてみると、双子の兄弟は性格が真逆だった。

 兄のエグモントは物静かで、お酒をよく飲む。

 弟のエグムントは賑やかで、お酒を飲まない。


「いやはや、実家は辛気くさいと思ってあまり帰らなかったんだが、このように愛らしい子ども達がいるのならば、毎週のように帰りたいな」


 エグムント卿の言葉に対し、エグモント卿が冷静に指摘する。


「彼らは普段、寮で生活しているから、毎週帰宅しても、辛気くさい父上しかいないぞ」

「そうだった!!」


 賑やかで楽しい時間を過ごす。


 

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