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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
二部・第四章 真相を探れ!

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保存食を作ろう!

 叔父捜しは降誕祭のパーティより前のほうがいい、という話になった。

 せっかくレヴィアタン侯爵から誘われたパーティである。叔父のことを解決して、すがすがしい気持ちで参加したい。

 降誕祭のパーティは五日後なので、問題はいつにするか。

 

「ミシャはいつここをでる予定だ?」

「明後日くらいかな、と思っているのですが」

「ならば、ホリデー四日目に、ミシャの叔父の捜索をするのはどうだろう?」

「問題ありません。よろしくお願いします」


 ヴィルはそのまま帰ろうとしたので、お茶の一杯でも飲んでいかないか、と誘ったのだが「これからやることがあるのだろう?」と言って、遠慮されてしまった。


「ミシャ、ホリデー中に困ったことがあれば、いつでも呼んでくれ」


 そう言って、私に魔法巻物を三つも手渡してきた。

 見たことのない呪文の羅列だったので、なんの魔法が込められているのか読み取れない。


「あの、ヴィル先輩、これはなんの魔法が付与されているのですか?」

「私をいつでも召喚できるものだ」


 聞いた瞬間、魔法巻物を落としそうになったものの、寸前で耐える。

 なんてものを作り、渡してくれたのか。

 

「勉強していてわからないところがあったとか、道に迷ったとか、夜眠れないので話し相手になってほしいとか、用途はなんでもいいから」


 いやいやいやいや、恐れ多い!! と言いたくなったが、驚きのあまり声がでなかった。


「あ、あの、このような魔法巻物は普段、ご家族や大切なお方などに渡しているのですか?」

「そんなわけないだろう。ミシャだけだ。国王陛下に頼まれたとしても断る」


 ヒーーーーーーー!! と悲鳴をあげそうになる。

 どうしてこう、ヴィルは私を特別扱いしてくれるのか。

 自らの野望を叶えるため、私を利用したいから丁重な扱いをしているにしても、待遇が厚すぎる。思わず心の中で頭を抱えるほどだった。


「あ、ありがとうございます。機会があったら、その、使いますね」


 ヴィルは満足げな様子で頷き、その場から去っていった。

 私はこの恐れ多い魔法巻物を、ジェムの口に放り込み、預かってもらう。

 盛大なため息を吐いてしまったのは言うまでもない。


 ◇◇◇


 その日は疲れてしまったので、そのまま何もせずに眠ってしまった。

 ずっと疲れていたのだろう。私は十時間以上も爆睡したのだった。

 ホリデーの一日目、私は保存食作りに取りかかる。

 まずはブイヨンを作ったあとに残った牛すね肉の調理から始めよう。

 肉の表面に砂糖と塩をまぶし、肉に揉み込んでおく。

 次に、この肉を煮込んでいく。

 丁寧に灰汁を取り、水分がほとんどなくなったら、さらに砂糖と塩を入れて身を解す。

 火を止め、粗熱が取れたら、コンビーフの完成だ。

 瓶に詰め、保冷庫の中に入れたら、数週間は保つだろう。

 このように、ブイヨン作りに使った肉なども無駄にしていないのだ。


 他の肉も、ベーコンにしたり、塩漬けにしたり、リエットにしたりと、さまざまな方法で保存食を作った。


 続いて野菜類もどんどん保存が利くように加工していく。

 根菜は甘酢漬けに、葉野菜は塩漬けにして、トマトはじっくり煮詰めてペーストにして瓶に詰めた。

 保存食を入れた瓶が棚に並んでいる様子を見ると、酷く安心する。

 それは厳しいラウライフでの暮らしが身に染みついているからだろう。

 

 ニシンは三枚に下ろし、塩、砂糖をふりかけ、しばらく置いておく。

 数時間後、ニシンの身からでた水分を拭き取り、瓶に入れたあと、タマネギ、セロリ、ディル、ローリエを詰め、油をひたひたになるまで注いだら、ニシンのオイル漬けの完成となる。


 他に魚介類は燻製にしたり、塩漬けにしたり、干物にしたりと、さまざまな方法で保存食を作った。


 残りの食材は、ジャガイモやニンジンなど、長期保存が可能なものばかりだ。

 この辺はホリデー中も放置していても問題ないだろう。


 この日も一日中保存食作りをして疲れたので、早めに眠ってしまった。

 ホリデーの二日目にして、ヴァイザー魔法学校をあとにすることとなった。

 荷物はすべてジェムの中に詰め込んだので、身軽な状態で向かうことができる。


 ただ、手ぶらで帰るわけにはいかないので、レヴィアタン侯爵夫妻に何かお土産を買って帰ろう。


 魔法学校と街を行き来する馬車は、すでに運行が終了していた。

 早すぎないか、と思ったが、ほとんどの生徒は終業式の日に学校をでていたのだろう。

 残っていた生徒は私くらいなのかもしれない。


「歩くしかないのね」


 ぽつり、と零した瞬間、ジェムが私にブリザード号を差しだす。


「あ! そういえば、これがあったわ」


 飛行試験に合格した者のみ、短距離の飛行ならば許可されていたのだ。

 短距離というのは、王都周辺くらいを示すらしい。

 学校から街へ飛んでいく程度ならば問題ないだろう。


 箒に跨がり、飛行魔法の呪文を唱えようとしたが、ふと、ジェムはどうするのかと気になった。


「ねえ、ジェム、あなたはどうするの?」


 ジェムは小首を傾げたあと、触手を伸ばし、ブリザード号の柄に巻き付いた。

 どうやらブリザード号にぶら下がるつもりらしい。


「飛行中は暴れないでね」


 ジェムはこっくりと頷いた。

 授業以外で飛行魔法を試すのは初めてだ。ドキドキしながら、呪文を唱える。


「――飛び立て、空中飛行フライト!」


 私の体は箒ごとふわりと上昇した。

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