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令嬢達のこれから

「まずは僕が代理で話すことをお許し下さい。レナン様に届いた、ハインツ殿からの書簡についてです。申し訳ないとは思いましたが、リンドールからのものの為、中身を先に拝見させてもらいました…」


手紙の中身を見たことにややバツが悪そうにしながらも、その内容についてを皆の前で話す。


「破棄を申し出るものでしたが、確実でしょう。ディエス殿の状況から互いの同意は得ずに一方的に行なえますし、既に国にも必要な書類は提出しています。慰謝料については、本来ならば屋敷などを差し押さえたりして強制的に払われたりもありますが、リリュシーヌ様が全て焼き払われましたので、保留となったみたいです」


魔法の力は隠しているので、不審火となっているようだが。


「リンドールにはスフォリア家の方々がアドガルムにいることは知らせていませんでした。ですが、この手紙が来たということは、向こうも気づいた様子…直に正式に話し合わねばならぬ状況となりました。アドガルムが何故リンドールの令嬢を庇ったのか…追々伝えなければなりませんが、そのためにはまずしがらみとなっていたレナン様の婚約破棄が必要でした。僕が先んじて伝えることとなりました、申し訳ありません」


エリックが憮然とした表情となる。


「ニコラがその役を賜ったのは、父の差し金だろう。そんな重要な事なのに、なぜ俺の方に先に知らせなかったのだ」


「申し訳ございません、歓談の邪魔をしてはならないと思い…」

レナンとの会話をする機会を減らしてはならないと、国王と話した結果だ。


これからの関係性に大いに期待しているのだ。


「このような大事な話はお祖父様にも伝えたいです。お父様もお母様もいないのだから判断をあおがなくては」

ミューズは不安そうにしている。


「シグルド様には既に伝令を出しております。今は意見を聞くぐらいなので大丈夫ですが、今夜陛下も含めて今後の話をしなければなりません。その際はスフォリア家当主代理としてレナン様とミューズ様に話を聞くと思います」


「当主代理として?」

思いがけず大役を言われる。



「必ずシグルド殿も同席しての話し合いになりますので、あまり気負いすぎずに。

リリュシーヌ様にいらして頂ければと思いましたが、急遽の登城は難しいでしょうし…」

「そうですね…」

後でこっそりと通信石でリリュシーヌを呼び出そうとミューズは心に決める。


「本来僕が伝えるものではなかったのですが、それだけ今国が動いています。ティタン様もリオン様も王族としての振る舞いをお忘れなく、臨んでほしいと思っています。何かあれば各々の従者に確認してください。ミューズ様には侍女のチェルシーに伝言して頂ければ、何なりとお答えしますので」


目まぐるしく情報が舞い込んできて、頭が混乱しそうだ。



「まずはお姉様のところに行きますわ」

とりあえず一番に優先することを考える。


無理そうであれば自室に戻ると話すが、泣いているだろうレナンを一人にしておくのは心配だった。


「レナン嬢は落ち込んでいるだろうな、こんな時に何と言っていいものかわからないのだが、ミューズ嬢がいてくれて本当に良かった」

近くに姉妹がいることのなんと心強いことか。


「お気遣いありがとうございます。エリック様が心配していると伝えてきますね。姉はきっと大丈夫です、変なところで強い人なので」






それぞれが自室に戻ると、エリックがため息をついてソファに身体を預けた。




「破棄自体は予想がついていたが、レナンの様子には堪えるなぁ」




手紙を受け取った際に差出人を見て、レナンの表情が強張っていた。


ニコラが皆を別室に連れて行くと言った時には、諦めがついた表情になっていた。


ニコラの様子から中身を見る前から内容を言っているようなものだったから。


婚約破棄の手紙がいずれ届き、悲しむとは思っていたがその様子はやはり見たくなかった。


「チャンスじゃないですか、いっそ弱みにつけこんで下さい」

「はっ?!」


ニコラは後押しする。

とにかく時間が惜しい。


「本日の夜の話し合いでレナン様方は進退を聞かれます。

ミューズ様は既に気持ちが固まっているようですし、ティタン様も引き止めるおつもりです。ならばレナン様の今後を支えたいとエリック様が仰れば、こちらに残る決断をしやすいはずです」


ここまでニコラが押してくるのは珍しい。


「今は留まってもらうためのきっかけで良いですから、想いを伝えてください。もう後悔するのはお嫌でしょ?」


エリックは婚約を先取りされた怒りを思い出し、決意する。


レナンが国に帰られては二度と会えなくなるだろうし、帰るなどと言われたくない。


「今はミューズ嬢がいるかもしれない、その後でアポを取ってくれ」


「はい、承りました」

エリックの言葉にニコラは恭しく頭を下げた。








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