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『ふふんどうだ小童。今日のさゆりの料理はッ!』
『なんであんたがドヤッてんだよ』
『今夜は自信作のすき焼きです。悠真さんも遠慮せずに召し上がってくださいね』
『とても美味しそう。さすがはお母さんです!』
幸せの一時。心の底から笑っている泉。おっちゃんやさゆりさんも今この時を精一杯楽しんでいる。
『ご馳走様でした』
楽しい宴会は幕を閉じる。おっちゃんといえば早々に酔っぱらって横になっていた。
『お粗末様でした。片づけは私がしますから、早苗は俊央さんにブランケットを賭けておいてもらえる?』
『わかりました』
泉はブランケットを取ってくるとおっちゃんにそっと掛けた。
『成生君、本当にありがとうございました』
『唐突だな、いきなりどうした』
『あのとき、成生君が背中を押してくれなかったら、私は本当にダメになってしまっていたかもしれません。幸せを願うことなんてできなかったと思います』
『でも、ちゃんと願えたじゃないか。ならそれは俺のおかげなんかじゃなく、泉とおっちゃんやさゆりさんの家族の絆の結晶なんじゃないか?』
俺のその言葉に泉はクスッと笑みを溢す。
『そのセリフ、ちょっとクサいですね』
『痛い所を突いてくるな……どうせ俺にはこんなクサいセリフは似合いませんよッと』
幾秒の後。俺達は笑っていた――心の底から。ただ、ひたすらに。




